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第23章〜番外編【降りしきる夜雨と君の涙。2】










子犬の名前はリンクの提案で『わたあめ』になった。
こうして夢子が子犬を飼い始めて2ヶ月。
人懐っこく愛らしいわたあめはすくすくと成長した。
初めて会ったときとは比べ物にならないほど大きくなったわたあめ。
夢子もそんなわたあめの姿をみて幸せいっぱいだった。
そんなある日。





夢子「それじゃあわたあめの散歩に行ってきますね!」
わたあめを連れて夢子は城の外へと出かけた。
夢子「風が気持ちいいね!わたあめ!」
わたあめ「ワン!」
しばらく歩いていると森が見えてきた。
夢子「そういえば森の中は…」
夢子の脳裏にマスターハンドからの忠告が過ぎった。
マスターハンド『例の祠のある森には一人では近づかないように』
しかし、わたあめの愛らしい顔を見ていると少し油断してしまった夢子。
夢子「ちょっとくらいならいいよね?」
そう思い、夢子は森のなかへと足を踏み入れてしまった。
草木が生い茂る森のなかは昼なのに暗く、
別の空間があるかのように見える。
10分ほど歩いた夢子だったが暗い森に少々恐怖感を覚え
わたあめを見つめて問いかけた。
夢子「ちょっと中に入りすぎたかな…もう帰ろっか?」
歩いた方向へと戻ろうとしたその時だった。
わたあめ「グルルルルルル…!」
突然わたあめが唸りだした。
夢子「どうしたの?…何か、いるの?」
わたあめ「ワン!ワンワン!グルルルル…!」
わたあめが吠えたその先を見た夢子。
そこには見慣れた姿があった。
夢子「…リンクさん!?」
しかしすぐにその姿の正体が解り、夢子は青ざめた。
夢子「違う…貴方は…」
そこにいたのはあの男だった。
ダーク「よう、夢子。久しいな。」
夢子「ダーク…なんでココに…。」
ダーク「お前こそなぜ此処にいる?仲良しなトモダチから止められなかったのか?」
夢子「マスターさんが近づくなって言ってたのは…このことだったんだ…。」
ダーク「まあ俺にとっては好都合ってやつだがな…ククク…。」
一歩ずつ夢子に近づいてくるダークに警戒してわたあめは吠え続けた。
わたあめ「グルルルル!ワンワン!グルルルル!」
ダーク「…なんだこのうるさい犬は。」

ドカッ!

ダークは吠え続けるわたあめを強く蹴り上げた。
わたあめ「キャンッ!」
夢子「わたあめ…!!酷い…なんてことするんですか…!」
ダーク「俺は犬が大嫌いなんだ。特にうるさい犬はな。」
蹴られたわたあめは立ち上がりダークへ吠える。
わたあめ「グルル…!」
ダーク「…まだ蹴り足りないのか?だったら…」
夢子「やめて!わたあめを虐めないで!…わかったわ。貴方の言うとおりにするから…だからお願い…。」
ダークはまるで夢子が言う言葉を予想していたかのように笑を浮かべた。
ダーク「そうそう、素直が一番だ。」
夢子「…初めて会ったとき…リンクさんも同じ言葉を言ってた…。」
ダーク「王子様が恋しいのか?だがお前を助けられる人間はここには居ない。」
夢子「っ…!」
ダーク「さあ、亜空軍の元へ来い!」
夢子「待って…せめてわたあめを…」
ダーク「殺されたいのならば一緒に連れてもいいが?」
夢子はわたあめのリードの紐を首輪がら外すと泣きながら頭を撫でた。
夢子「わたあめ…ゴメンね…私は大丈夫だから…みんなの元へ帰って…。」
ダーク「犬を逃がすか。正しい判断だな。さあ、行くぞ。」
ダークに腕を掴まれ連れて行かれる夢子の姿を無力なわたあめはずっと見つめている事しか出来なかった。











わたあめが城へ着く頃には日も暮れ始めていた。
リードを無くし、夢子が帰ってこない事態に何かあったということを参戦者たちはすぐに気づいた。
その話はすぐにマスターハンドの耳にも入っていた。
マスターハンド「夢子はわたあめの散歩をしにいったんだな?」
ピット「うん…お昼にはもう出てたよね?」
マスターハンド「変わりはあったか?」
マルス「特に何もなかったよね?」
アイク「ああ。いつも通りだったな。」
マスターハンド「ふむ…コレは誘拐事件かもしれないな…」
ピット「ゆ…誘拐!?」
マルス「だとしたら一体誰が…。」
リンク「…ダーク…もしかしたらアイツが…!」
マスターハンド「リンク、何か心当たりがあるようだな?」
リンク「…例のヤツです。きっと奴が関わってる…そんな気がして。」
マスターハンド「…そうか…。だとしたら夢子が危ないな。」
リンク「彼女を一刻も早く救い出さないと…!」
マスターハンド「今回の件はリンクに任せよう。もし何かあったら参戦者達にも伝えてくれ。」
リンク「はい!」
ピット「あの…僕たちは?」
マスターハンド「ああ…お前たちは城で待機していろ。リンクから連絡があったら動け。いいな?」
ピット「はあ〜い…。」













ピット「…とは言っても心配だよね。」
マスターの元から離れ城に戻ったピット・マルス・アイクの3名は悩んでいた。
夢子の事を考えると心配で、気が気ではない。
マルス「待機してろって言われても…ねえ?」
アイク「…ああ。」
ピット「どうする?」
マルス「どうするって…決まってるでしょ!」
アイク「…マスターとリンクに半殺しにされるぞ…。」
マルス「そんな事言ったって…じゃあアイクは夢子がダークに何されたっていいってわけ?」
アイク「…それは…」
マルス「あいつ、正気じゃないから夢子に何するか…兎に角!」
ピット「夢子を助けよう!」
アイク「ああ。」
3人がその場から立ち去ろうとしたときだった。
城の廊下をドタドタと走り回る足音が近づいてきた。
スネーク「コラアア!待て!馬鹿犬!」
わたあめ「ワンワン!」
振り向くとスネークが真っ青な顔になってわたあめを追いかけてた。
ピット「…何してるのスネーク…。」
スネークは荒い息をあげながらこたえる。
スネーク「あ?…ああ、ピット達か。すまないが今はお前達の相手をしてる場合じゃ…まて!待つんだ!早くそれを返せ!」
そう答えるとスネークは走るわたあめを追いかけて去ってしまった。
ピット「…?変なスネーク」
マルス「こんな事してる場合じゃないよ!」
ピット「そうだった!行こう!」

















・あとがき・

ダークの行動ですが、、
少々虐待的な表現が含む内容となってしまいました…気分を害された方はごめんなさい><;




【いいね!!】

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