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第20章【心の温度】



夢子は階段を駆け上がっていた。
リンクに自分の本当の気持ちを伝えるために。
皆が寝静まった廊下に夢子の足音だけが響く。
階段を駆け上がりリンクの部屋の前へとたどり着いた。
大きく深呼吸をすると夢子はリンクの部屋の扉を叩く。
コンコン
夢子「…リンクさん。」
しかし返事はない。
夢子は一人静かに語りかけ始めた。


夢子「私、マルスさんに酷いことしてしまいました…。
     相手の気持ちを利用して自分の気持ちを偽るなんて…どうかしてますよね。
     リンクさんと…皆さんと暮らしたこの数ヶ月、毎日とても楽しかったです。
     私決めました。これ以上リンクさんに迷惑はかけられません。
     リンクさんはゼルダ姫みたいな気品の良くて優しくて強い人が似合ってる…そう思います。
     私は…ここから去る事にしました。
     リンクさんのこと、今までも、そしてこれからも一番大事な人です。
     今までありがとうございました。…さようなら。」


そして夢子はリンクの部屋からそっと離れた。

     


・・・




夢子は一人スマブラ城の外を歩いていた。
足は裸足で手は冷たく冷え切っていた。
向かう先はダークと出会ったあの森。
夢子は決心していた。
自ら亜空軍の元へ行くとー…。
夢子「最初から…最初からこうしとけば良かったんだ…
     私がアイツ等に捕まっていれば皆に…リンクさんに迷惑かけずに済んだんだ…。」
バタンッ

夢子「痛っ…」
夢子は石につまずき転んでしまった。
膝からは赤い血が流れ出す。
夢子は立ち上がると足を引きずりながら森へと向かう。
夢子「私が…今度は私が守らなきゃ…私が…私が居なくなれば…」
夢子の目からは涙が溢れ出していた。
夢子「…居なく…なれば…」

ガシッ

夢子は誰かに腕を掴まれた。
夢子「!?」
振り向くとそこにはリンクが立っていた。
リンク「…何してるんですか!」
予想外の展開に夢子は驚きの表情を隠せずにいた。
夢子「り…リンクさ…ん…っ?!」
リンクの顔を見ているうちに自然と溢れ出てくる涙を夢子は止めることができなかった。

ガバッ

そんな夢子をリンクは強く抱きしめた。
リンク「…俺の前から消えないでほしいって言ったじゃないですか…!」
リンクの顔を見て余計涙が止まらなくなる夢子。
夢子は泣きながら言った。
夢子「…私は…ここに…居ていいんですか…?」
リンク「当たり前ですよ!」
夢子「私…リンクさんに嫌われたんじゃないかって…。」
リンク「嫌ってなんかいませんよ…俺の方こそ役たたずですいません…」
夢子「そんなことないです…リンクさんは皆を…私を守ってくれてるじゃないですか…」
リンク「夢子さん、俺はもっと強くなります。…亜空軍なんかに渡せさせません。」
夢子「リンク…さん…」
リンク「俺にとっても夢子さんは一番大切な存在です。…だからこれからも一緒に居させてください。」
夢子「…ありがとう…。」


いつの間にか朝日が昇っていた。
さっきまで涙で濡れていた夢子の顔は笑顔に満ちていた。
リンクも共に微笑み手を差し出すと言った。
リンク「さあ、みなさんが待っています。城に戻りましょう。」
夢子「…はいっ!」
二人は手を繋ぎ、森に背を向けゆっくりと歩き始めた。



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