18

マルス「あるよ。だって僕は…」
マルスは大きく息を吸い込むと食堂全体に聞こえるほどの大声で言った。





マルス「僕は夢子の事が好きだから。」







第18章【偽りの決意】






マルスの発言に食堂にいる参戦者が皆凍りついた。
その言葉を聞いたリンクの表情も変わる。
リンク「…!?」
マルス「これは僕の本音…もう隠したりなんかしない。」
当然その場にいる夢子にもその会話は聞こえた。
夢子「…マルスさん!?」
夢子は驚きの表情を隠せずにいた。
そんな夢子を見てマルスは続ける。
マルス「ごめんね夢子。こんな形で告白するなんてどうかしてると自分でも思うけど…
    だけど、今のリンクに夢子を任せるわけにはいかないから。」
そう言うとマルスは早々と食堂から出て行ってしまった。
ピット「ま…待ってよマルス!」
アイク「あいつ何てことを…」
ピットとアイクはマルスの後を急いで追いかけていった。
端、その場にいる参戦者達が騒めく。


ガタンッ!

リンクが椅子から立ち上がる。
その途端ざわめきが止まる。
リンク「……俺にどうしろと…。」
小さく呟くとリンクも食堂を後にした。
再び騒めく参戦者達の中、夢子は一人俯いていた。





食事を終え、夢子はトレーニングを始めていた。
いつものように魔法を使い、ターゲットの箱に当てようとするがなかなか当たらない。
先ほどのマルスの大胆発言とリンクの態度が気になって集中できないからだ。
夢子「なんであんな事を…。」
ゼルダ「夢子ちゃん!」
呼ばれた方へ振り向くとゼルダがこちらへと走ってきた。
夢子「ゼルダ姫!どうしたんですか?」
ゼルダ「夢子ちゃんの事が気になって…大丈夫?」
夢子「はあ…なんだか混乱しちゃって…。」
ゼルダ「あの馬鹿王子ったらあんな事をあんな大勢の前で言うんだもの…混乱するのも仕方ないわ。」
夢子「私、人にあんな風に言われたの初めてでなんて答えていいのかわからないんです…。」
ゼルダ「あら?夢子ちゃんもしかして告白されるの初めてなのかしら?」
夢子「はい…。」
ゼルダ「なら頭が真っ白になるわね…解るわその気持ち。」
夢子「ってことは…ゼルダ姫は告白されたことあるんですか?こんなに美人だしありますよね…アハハ。」
ゼルダ「まあ…ないわけじゃないけど。」
夢子「誰に告白されたんですか!?」
ゼルダ「聞きたいの?」
夢子「参考になればなーと…。」
ゼルダ「たぶん…ショック受けるわよ?」
夢子「…え?」










ゼルダ「…貴女が今、一番『大切』だと思ってる人よ。」




夢子「…!?…それって…」

ゼルダ「あれは何年前だったかしら…
    丁度あの人と初めて会った年。
    いろんな経緯から彼と出会ったの。
    その時は神々の意思によって選ばれた者として旅をし、戦いを繰り返していたの。
    魔の手によって堕ち始めたハイラルを救ってくれたのも彼。」
夢子(もしかして前に話してたあの話…。)
ゼルダ「彼は神に祝福されし勇気のトライフォース…それをを受け継ぐ神によって選ばれた勇者なの。」
夢子「トライ…フォース…?」
ゼルダ「彼から告白を受けたのはハイラルが救われた後の話…
    …今話したことは全部忘れていいわ。
    貴女を励ますつもりが逆に傷つけてしまった…ごめんなさい。」
夢子「…いいえ…。」
ゼルダ「もう昔の話だから気にしないで。」
夢子「はい…。」
ゼルダ「私は貴女のこと、応援してるから!」
話を終えるとゼルダは城へと戻っていった。
ゼルダの過去の話を聞かされた夢子は戸惑っていた。
夢子「なんだろう…この気持ち……。」








トレーニングを一通り終えた後、城の中庭のベンチに夢子は座っていた。
吹き抜ける冷たい風が心地よい。
夢子は重大な決心をしていた。
そこにマルスがやってきた。
マルス「待った?」
夢子「大丈夫です。」
マルス「…朝はごめん。あんな事言って…。」
夢子「気にしないでいいですよ。…あの…」
マルス「なんだい?」
夢子「マルスさんは…どうして私のことを…?」
マルス「聞きたい?」
夢子が頷くとマルスは夢子の隣に座ると話し始めた。
マルス「最初に見たときから『この子は普通の子とは違うな〜』って思ったんだ。簡単に言えば一目惚れってやつかな。」
夢子「違うって?」
マルス「雰囲気というか…夢子のもつオーラかな?何か魅力があってとても不思議な感じがするんだ…なんでだろ。」
夢子「不思議…ですか…私が変わり者っていう事ですか?」
マルス「決して悪い意味じゃないよ?一緒にいるうちに段々虜にされていくような感覚で…今では本気で君のことが好きなんだ。」
夢子「……。」
マルス「気を悪くしたのなら謝るよ。でもずっと隠しているのがもどかしくて…伝えたかったんだ、僕の気持ち。」
夢子「…わかりました…。……私、マルスさん告白を受けます」
夢子の言葉を聞いたマルスは一瞬言葉を失った。
マルス「…え…っ!?…それって…OKってこと!?」
夢子「…はい。」
まさかの夢子の返事。
驚きを隠せないマルス。
マルス「ほんとにホント!?嘘じゃないよね?!」
夢子「本当ですよ。」
マルス「・・・やったああああああああああああああああ!!!!!」
喜ぶマルスを横に夢子はどこか影のある微笑みを浮かべていた。




【いいね!!】

[ 18/508 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]