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第16章【守るモノはただ一つ】



時計の針が夜の12時を刺した頃
リンクは城の自室で剣を磨いていた。
マスターソードの刃は鈍く光る。
その刃に映るリンクの表情は暗い。
昼にダークが放った言葉が脳裏から離れないからだ。
ダーク『沙羅は元々こちら側の人間なんだよ。お前ら光の者といる理由はゼロだ』
リンク「あいつが言ったあの言葉…夢子さんは一体…」
剣の鞘を強く握り締め、深く深呼吸をする。
リンク「俺は夢子さんを守りぬく。必ず…絶対に…」






暗闇が辺りを覆う森の中をリンクは一人歩き続け、森の祠についていた。
森は静まり返り、風が木々をゆする音が響く。
リンク「来たぞダーク。さっさと出て来い。」
リンクがそう言うと祠の横に時空の歪みが現れ、そこからダークが出てきた。
ダーク「案外早かったじゃないか。」
その隣には意識が朦朧とした状態のポポとナナが縄に括られ座っている。
ポポ・ナナ「「リ…ンクお兄ちゃ…ん…。」」
リンク「…ポポとナナは無事なようだな。」
安心するリンクを横目にダークは首を傾げる。
ダーク「…おいおい、夢子が居ないじゃないか。お前、約束を破る気か?」
黒い霧を纏った剣を出したダークはリンクへとそのつるぎを向けた。
リンク「約束?…フッ、最初からそんなものはしてない。なぜならば…」
そう呟くとリンクも剣を取り出しダークへと向けた。
リンク「お前をここで倒すからだ。」
リンクの言葉を聞いたダークはくすくすと笑い出した。
ダーク「倒す?笑わせるな。今は夜。闇の力が増幅するこの状況で光の生のお前が闇のこの俺を倒せるわけがー…」

ザシュッ!!

ダークが言いかけたその時、リンクがダークへと剣を突き出した。
ダークの頬を剣が掠め赤い血が流れる。
リンク「倒せるか倒せないかはやってみないと解らないだろ。」
ダーク「…後悔するぞ?」






朝日が昇る頃、スマブラ城は騒がしい朝を迎えていた。
夢子は眠たい目を擦り、皆が集まる医務室へと足を運んでいた。
夢子「皆さんおはようございます。あれ?どうしたんですか?なにかあったんですか?」
そんな夢子を見たピーチが夢子へと駆け寄る。
ピーチ「夢子ちゃん…!」
ピーチの青い表情を見た夢子は嫌な予感がした。
急いで人の群れを掻き分けた夢子の目に飛び込んできたのは…リンクの姿だった。
夢子「ーー!!!リンクさん!?」
ベットに横たわり身体の所々から血を流し、ボロボロになった姿を夢子は直視できなかった。
夢子「なんで…なんでこんな事に…」
震えが止まらない夢子の横にきたポポとナナは俯きながら言った。
ポポ「僕らがいけないんだ。」
夢子「どうして…」
ナナ「私たちがリンクお兄ちゃんだと思って追いかけたその人はリンクお兄ちゃんじゃなかったの。」
ポポ「リンクお兄ちゃんに似てるその人は僕たちを捕まえて人質にしたんだ。」
夢子(まさか…ダーク!?)
ナナ「そして私たちの代わりに夢子お姉ちゃんを渡せって…でもリンクお兄ちゃんは取引に応じなかったの。」
ポポ「僕たちと夢子お姉ちゃんを守るためにリンクお兄ちゃんは戦ったんだ。でも…」
ナナ「その人はすっごく強くてあのリンクお兄ちゃんですら歯が立たなかった…ううっ…ゴメンナサイ…ゴメンナサイ…」
夢子「謝らないで…あなたたちは何も悪くないもの…」
リンク「…夢子…さん…。」
ボロボロになった手を夢子へと向けるリンク。
その手を両手で掴む夢子。
リンクは少し微笑みながら小さい声で夢子へ呟く。
リンク「…良かった…無事で…。」
夢子「なんで…なんで私なんかの為に…」
リンク「夢子さんをずっと守るって言ったじゃないですか。」
夢子「でもこんなの…あんまりです…」
涙が夢子の頬を伝う。
震える夢子の手をリンクはしっかりと握り返す。
リンク「大丈夫、俺はここにいますから。」
夢子「…もうこんな事しないって約束してください。」
リンク「多分…かな…」
そう呟くとリンクは目を閉じて動かなくなった。
夢子「マリオさん、リンクさんは…」
マリオ「大丈夫、眠ってるだけだ。疲れてるんだろう…しばらく安静にしてあげなさい。」
夢子「…はい…。」
リンクと夢子の会話を見てたマルスとピットとアイクはそっと医務室から遠ざかりながら呟く。
マルス「リンクのやつ、夢子のことあんなに泣かしちゃって…許さない!」
ピット「あーあ、なんだか勝目無くなってきた気がするな〜…」
アイク「…諦めるのはまだ早い。」
ピット「そういうアイクはまだ諦めないの?」
アイク「ー…少しの間はそっと見守るほうがいいな、あの二人を。」
マルス「そうだね。さーて!今日は大乱闘でもしようか!2対1で1はピット君ね。」
ピット「なんでまた僕をいじめるんだよ〜!最近リンチばっかりじゃないか〜!」
マルス「いいじゃんいいじゃん!ハンデつけてあげるからさ!」



バタン


医務室から人が立ち去り夢子とリンクの二人だけになった。
夢子は眠るリンクの手をギュっと握り締める。
大きくて温かい手。
この手でいつも私を守ってくれた。
夢子「今度は…私が貴方を守るから…」



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