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第15章【笑顔でいるために。】





リンクは森の祠ヘとたどり着いていた。
周りを見渡し、低い声で呟く。
リンク「居るんだろ?出てこい。」
リンクが呟くと目の前に時空が広がった。
そこから現れたのはダークだった。
ダーク「よぉ、時の勇者さん。」
ダークの姿をみてリンクは眉間にしわを立てながら口走る。
リンク「ポポとナナはどうした?」
ダーク「まあまあそんなに焦るなよ。久しぶりじゃないか。」
リンク「お前と話す義理はない。」
ダーク「そんな口のきき方でいいのか?大事なお友達が気づ付くぜ?」
リンクは剣を取り出しダークへ向けた。
剣を握る手に力が入る。
ダーク「おー…怖い怖い。」
リンク「用件はなんだ?」
ダーク「話が早いな。じゃあ言わせてもらう。夢子をこちら側へ渡せ。」
リンク「なん…だと…?」
ダーク「あの女を渡してもらおう。そしたら代わりにポポとナナを返してやる。」
リンク「なぜお前に夢子を渡さなきゃいけない?」
ダーク「知りたいか?なら一つだけ教えてやる。夢子は元々こちら側の人間なんだよ。お前ら光の者といる理由はゼロだ。」
リンク「・・・何!?どういう意味だ?」
ダーク「おっと、これ以上は口が裂けても言えないな。解ったか?解ったなら今日の夜夢子をつれてここに来い。」
リンク「待てっ・・・!」
ダーク「約束を守らなかった場合、ポポとナナの命はないと思え。」
ダークはそう言うと時空の歪へと消えていった。




一方城には夢子達が帰ってきていた。
一同は参ったようにぶつぶつと文句を重ねていた。
夢子「幸い、空を飛べるピット君がいてよかったですね!」
ピット「全員持ち上げるのすごく大変だったよ…。夢子は軽いからいいんだけど残りの2人ときたら重くて重くて。」
アイク「すまなかったな。おかげで助かった。」
マルス「こういう時だけピット君って役立つよね。」
ピット「マルスっていつも一言多いよな。助けなきゃよかった。」
マルス「はいはいごめんごめん。」
そこへリンクが帰ってきた。
表情は険しく握りしめたこぶしを壁に打ち付ける。
リンク「…クッ!」
ピット「どうしたんだリンク!?」
マルス「今までどこに行ってたのさー…ってあれ?怒ってる?」
リンク「あっ…すいません。気にしないでください。」
アイク「訳ありみたいだな。」
夢子「リンクさん・・・。」
リンクは一同に頭を下げると早足で去ってしまった。
ピット「変なリンク。」
アイク「今はあまり刺激しないほうがよさそうだな。」
マルス「何かあったのかな?」





その日の夜ー・・・


ゼルダ、ピーチ、サムスと話しをしていた夢子。
他の話をしていてもやっぱり昼間のリンクの様子が気になる。
その様子を見てゼルダ達は夢子を心配する。
ピーチ「夢子ちゃん、どうかしたの??」
夢子「あ…いや…リンクさん、今日何かあったんですか?」
ゼルダ「さぁ…何も聞いてないわね。」
サムス「そういえば食事の時食堂に居なかったわね。」
ピーチ「あら…そうなの?」
夢子「やっぱり何かあったんでしょうか・・・。」
ゼルダ「心配しないで。きっと明日には機嫌が直ってますわ。」
サムス「そうよ。あ…そういえば夢子ちゃんに渡したいものがあるの。」
サムスがポケットに入れてたネックレスを出した。
サムス「これは私たちで作ったネックレスよ。」
ピーチ「因みに3人ともおそろいですの。夢子ちゃんも入れたら4人ですわ。」
夢子「わぁ…!可愛い!いいんですか?」
ゼルダ「もちろんよ!さ、つけてみて!」
夢子は髪をかき上げ、サムスが夢子の首にネックレスをつけた。
ネックレスはハートの形をし、赤い宝石が光っている。
サムス「よし、出来たわ。」
ゼルダ「予想通り、似合うわね!」
ピーチ「これは心友の証ですわ!」
ニコニコと嬉しそうに話すゼルダ達に夢子は涙ぐんだ。
夢子「私…今まで心友とかいなかったから…凄くうれしいです!」
ピーチ「そう言ってもらえるとこっちまで嬉しくなっちゃうわ!」
ゼルダ「あら…やだ、もうこんな時間。夢子ちゃん寝なくて大丈夫なの?」
サムス「夜更かしは美貌の天敵よ。今日は寝ましょ!」


ゼルダ達はそう言うと夢子に手を振り自分たちの部屋へと帰って行った。
夢子はネックレスを見つめ微笑んだ。
夢子「心友…かぁ…ウフフ!」
夢子が笑いながら前を向いたその時だった。
前からリンクがやってきた。
リンク「夢子さん…!」
夢子「あっ…リンクさん!」
リンク「ちょっと城庭で話しませんか?」
夢子「いいですよ!」
リンクの後をついていく夢子。
夢子(もしかして私のせいで怒っていたのかな…)





城庭へたどり着くとリンクと夢子はベンチに腰掛けた。
夜空にはキラキラと星が輝いている。
夜の城庭は静かで風で揺られた木々の葉の擦れる音しか響かない。
最初に口を割ったのは夢子だった。
夢子「あの…すいません。」
リンク「どうして謝るんですか?」
夢子「お昼急にいなくなったの、私のせいなのかなって思って…。」
リンク「なんで夢子さんのせいになるんですか?誰のせいでもないですよ。」
夢子「そう…なんですか?」
リンク「俺が勝手に一人行動しただけです。」
リンクは夢子を見て話した。
リンク「夢子さん、記憶は戻りましたか?」
夢子「あっ・・・まだ戻らないです。」
リンク「そうですか…。」
夢子「でもなんだか思い出しそうなんですけど途中で頭が痛くなって…なんでなんだろ。」
リンク「記憶が戻りかけてるんですかね。」
夢子「あと…最近夢を見るんです。誰かが私に話しかけてくる夢。その誰かは全然解らないんですけどなんだか懐かしい感じがして…。」
リンク「早く戻るといいですね。」
夢子「はい…!」
冷たい風が2人を吹きつけた。
リンク「夢子さん寒くないですか?」
夢子「ちょっとだけ肌寒いです…。」
そうつぶやく夢子の手をとり自分の手を重ねるリンク。
リンク「こうすると温かいです。」
夢子「リンクさんってホント優しいですね…。…私、リンクさんに出会えて本当に良かったです。」
リンク「どうしたんですか急に。そんな風に言われたら照れます。」
夢子「私、やっと自分の居場所が見つかってほっとしてるんです。」
リンク「夢子さん、もしもー…もしも自分の記憶が戻ったら…どうしますか?」
夢子「まだわからないです…でも記憶が戻ったら…私が本来いるべき場所に戻ります。」
リンク「…そうですか…。」
夢子「でも皆と別れる訳じゃないです。…出来れば皆とずっと一緒に居たいです。なんか矛盾してますね…すいません。」
リンクを安心させようと笑顔を見せようとしたその時だった。

ギュッ・・・

リンクは夢子を強く抱きしめた。
夢子「り…リンクさん!?」
リンク「皆のためにも…俺のためにも…此処にずっと居てください。」
2人の心拍数はどんどん上がってゆく。
リンク「ずっと…傍にいてください。」
夢子「リンクさん…。」
夢子もリンクもギュっと抱きしめた。
温かい太陽のような匂いがした。
リンク「俺は夢子さんをずっと守ります。今1番大切な存在なのだから…。」
夢子「ありがとうリンクさん。」
リンク「だから突然俺の目の前から消えたりしないでください。」
夢子「私はいつでも此処に居ますよー…。」




月が雲に隠れ、辺りは真っ暗になった。
リンクはベンチから立ち上がると夢子にこう告げた。
リンク「さぁ、もう夜遅いですから部屋に戻ってゆっくり休んでください。」
夢子「リンクさんは…?」
リンク「俺はトレーニングがあるんで…。」
夢子「そうですか…それじゃあオヤスミナサイ。」
リンクは夢子が帰る後ろ姿を見送りながら森の方角へと目を向けた。
リンク「絶対に守って見せるから・・・。」



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