59
夢子「しまっ…!?球がこっちに向かって…!?」
普段の夢子なら華麗に交せるだろうが
今の状態では無理だった。
体調も悪く、片目は見えていない最悪なコンディション。
夢子は覚悟して瞳ををギュッと閉じた。
痛いだろうが体育で使うボール。そのくらいは我慢は出来るだろう。
球が当たった痣は出来るかもしれないが。
でも、不思議と全く痛くなかったのだ。
【59=白いカーテン】※ちょいベレト夢
マルスが放った変化球。
軌道が狂い、具合の悪い夢子へと飛んで行った。
夢子は当たるのを覚悟して瞳を閉じたが、痛みはない。
すると、球のリバウンドする音が聞こえた。
バンバンバン・・・
転がる球。
夢子の目の前に立っていたのは
身を挺して生徒を守るベレトの姿だった。
夢子をボールから庇ったのだった。
クラスメイト達は全員声を殺した悲鳴をあげていた。
マルス「目論見通りベレトに当ったは当たったけど‥‥何だか…素直に喜べないよね…」
ルフレ「うん…。っていうかそれよりも夢子、大丈夫?!怪我はない!?」
Aチームのふたりは焦る。
ベレトは真顔で忠告する。
ベレト「お前たち二人、あとで覚悟しておけ。(マジギレ)」
マルス「ヒイ!!」
ルフレ「はー最悪…全部英雄王のせいだ。」
マルス「ええ!?僕だけに責任押し付ける気かい!?君だってノリノリだったじゃないかー!」
ピット「あーあ。おまるすまたやっちゃったねー。」
アイク「カッコつけて慣れない変化球なんか投げようとするからだ。運動部でもないのに。」
マルス「ああ…惨めだ…公衆の面前で恥をかいた挙句夢子に怪我させそうになって…
僕もう死にたい。ブラックホールに潜りたい気分。」
シュルク「自決用にボム兵要ります?あ、キラーのほうが良いですかね。ここは潔く…」
マルス「要らないし!!!そもそもここ(この世界)では使えないだろ!!」
アイク「ならお前はハリセンで充分だろ。紙さえあれば手作りできるしな。」
マルス「僕はゴキブリじゃない!!!」
アイク「…そうなのか?」
マルス「そうなのか?…じゃない!!この肉食ゴリラ!!(発狂)」
リンク「何なら自爆するの手伝ってあげましょうか?安心してください、俺が心置きなく起動させてあげますよ。(ニッコリ)」
マルス「皆揃って何なんだい!!何か全部僕が悪いみたいじゃないかー!!ムキーッ!!」
夢子は虚ろな目をしている。
やはり朝に受けたアルフレの暴行が思いの他身体にダメージが来ているらしい。
力が無く意識が乏しい。
ベレトはそんな夢子を見て直ぐに判断をした。
ベレト「今日の体育の授業は自習に切り替える。各自で勉強しておくといい。」
ルフレ「ベレト…夢子は…」
ベレト「俺が責任もって保健室に連れていくからお前らは黙って自習していろ。」
ルフレ「…それはそれで大丈夫?」
ベレト「…どういう意味だ?」
ルフレ「夢子に何かちょっかい出したら…僕先生相手でも…怒るよ?」
ベレト「何を考えて言ってるか知らないが、ここは学校だぞ。黙って教師の指示に従え。」
ルフレ《この人より僕の方が先にFE界で出世してるんだけどなぁ…?(ビキビキ)》
ベレト「では行く。」
そういうとベレトは夢子を持ち上げる。
夢子はあまり意識がない。
夢子「う…」
ベレト(…急がないと。)
ベレトは揺らさない様に速足でグラウンドから去った。
ピット「お、お大事にー?後でお見舞い行くね!!」
取り残された剣士男子たちは只去って行くベレトの後姿を見ていた。
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午前11時。
ここは保健室。
白いベッドに白いカーテン。
独特な消毒液のニオイ。
夢子はそんなベッドで目を覚ました。
夢子「…ここは…」
周りを見渡す。
一瞬濁る視界。瞬きを何度かしてみる。
すると横に誰かいることに気が付いた。
椅子に足を組んで座って本を読むベレトだった。
ゆっくりとページを捲っている。
夢子「せ…先生…」
夢子が小さな声を出すと、ベレトは直ぐに気が付いた。
そして読んでいた本をバタンと閉じる。
ベレト「…目が覚めたか。」
夢子「私…一体…何が…。」
ベレト「倒れたんだ。球に当たりそうになってな。
…だが球には当たっていない。」
夢子「そんな感じがしました…痛くは無かったし。」
ベレト「…お前、何かあったか?」
夢子「え?」
ベレト「今日は朝から具合が悪そうだった。誰が見ても調子が良くないのがわかるくらいに。
…顔面蒼白だったからな。」
夢子「…実は…」
夢子はベレトに話した。
朝、女子トイレでアルフレに首を絞められ失神寸前まで来たことを。
ベレト「…またアイツか。はあ、本当に手を妬く男だよ。
俺も困っているんだ。…マスターの命令じゃなきゃ世話係だなんてとっくにこの任務は降りてる。」
夢子「アルフレは何であんなに性格が歪んでいるのかな…。」
ベレト「たまにギムレーがどうとか良く解らない事を呟くが、実際生まれが生まれだからあんな感じなのだろう。」
夢子「ルフレは…あんなにも優しいのに…。」
ベレト「そういう態度でしか自分をアピールできないある意味可哀想な男なんだ。
…そういえばさっきマフラーの話で気になったが…お前、首に何か隠してるな?」
夢子「っ!!」
ベレト「貼るカイロ…お前が気絶してここに運ぶ間に少し剥がれてたからな。黒い何かが…」
夢子「言わなきゃダメですか?」
ベレト「まさかとは思うが、タトゥーとかじゃないだろな?」
ベレトの掛けてる眼鏡が光る。
慌てて否定する夢子。
夢子「まさか!!違います!!」
ベレト「じゃあなんだ?隠すと言う事はやましいのだろう?」
夢子「なんだって…言われても…。」
ベレト「一応お前の担任だから、知る権利はあると思うんだが。」
夢子「…笑わないでくださいよ?」
ベレト「…今まで俺の笑った顔見た事あるか?」
夢子「いや…1度も無いです。」
夢子はゆっくりと項の貼るカイロを剥がした。
そしてベレトに見せる。
夢子「これ…隠したくて。」
夢子の項には黒いマーク。
貼るカイロで擦れたのか少しインクが滲んでいる。
ベレト「逆スマブラマークか…。アルフレらしいな。」
夢子「あいつ油性ペンでこれを…。」
ベレト「‥‥ちょっと、待っていろ。簡単に落とす方法がある。」
ベレトは少し黙ると一言言って保健室から出て行った。
10分ほどしてベレトが保健室に帰ってきた。
夢子はなんとベッドから立ち上がろうとしていた。
直ぐに脚が縺れる夢子。
すさかずベレトが受け止める。
夢子「キャッ!!」
ベレト「コラ!まだ安静にしてろ…!!」
夢子「もういけるかなっておもったんですけど…すいません…。」
ベレト「お前に何かあったら…」
夢子「?」
ベレト「…いや、何でもない。」
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