57

夢子「はぁ…。」

女子トイレの鏡を見つめる夢子。
周りに誰も居ないことを確認してからマフラーを外す。
鏡に映る自分の項にはくっきりとルフレが残したキスマーク。

夢子「…はあ…。」

ため息が止まらない。








【57=悪意】








冷たい冷水を出して手を冷やしてから項に当てる夢子。

夢子「赤み引いてくれないかなぁ‥‥ルフレってば幾ら何でもこんな…」

すると、突然今までなかった気配がする。

再び鏡を見ると夢子の背後に人が居た。

ー・・・例の如くアルフレだ。

彼はニヤニヤ笑いながら夢子の後ろに立っていた。

夢子「ア…アルフレ!?」
アルフレ「おはよう、夢子。」
夢子「何で!?っていうか貴方また女子トイレに勝手に入ってきて…すぐに出て行って!?」
アルフレ「…前にも行ったけどトイレなんてどこも一緒だろ?男も女もする事一緒だし。
     ぶっちゃけ僕は学校のトイレは共用でもいいと思うんだけど。経費削減?ま、知らないけど。」
夢子「貴方の考え何てどうでもいいわ…」
アルフレ「それよりさぁ、首…どうかしたの?さっきからずっと水掛けて冷やしてたけど。」

夢子(…!!!!アルフレに知られたらヤバイ…!!!)

夢子は咄嗟にマフラーを首に掛ける。
するとアルフレが突然手を伸ばしてきた。
そして彼女のマフラーを掴む。

夢子「え!?」

アルフレ「ほら、マフラー巻くの手伝ってあげるよ。」

そうすると、マフラーを夢子の手から取りあげて夢子の首に巻き付ける動作をするアルフレ。
次の瞬間、


ギュッ!!ギリギリギリ…
グググググッ・・・・・・!!

夢子「!?」



アルフレはマフラーで夢子の首を絞めあげ始めた。
突然の暴行にパニックを起こす夢子。
しかし声も出ない。
息も出来ない。

夢子「カッ・・・アッ・・ハッ!?」

苦しくて手足をバタバタさせる夢子。


夢子「っ・う・・くる…し…・!!ッ…たす…け…ッ!!」

意識が朦朧としてくる夢子。
脳が酸欠を起こしていた。

夢子「…ァァ…。」

段々立っている脚にも力が入らなくなってきた。
遠のく意識。


意識を飛ばす寸前まで来たところでマフラーで締め付けるアルフレの力が弱まった。

夢子「…ハッ!!!!スーッスッ…!!ゲホゲホッ…ハアハア…!!!」

気道が開いた夢子は急いで酸素を取り込む。
まだ体に力が入らない。
倒れそうになった夢子をアルフレが受け止める。

アルフレ「あれ?大丈夫?顔真っ青だよ。」
夢子(こ…コイツ…!!)
アルフレ「不満そうだね?僕は君の苦しそうな顔見れて満足だけど。」
夢子「ハア…ック、なんでこんな…」
アルフレ「だーかーら、君の苦しんでる顔見たかっただけ。今日の僕の朝ごはん代わり?なーんてね。」

夢子のマフラーに再び手を掛けるアルフレ。
先ほどの暴行を思い出して反射的に身体が震える。

アルフレ「安心して?もう今日は酷い事するの我慢するから。それよりさ、これは何?」

アルフレは夢子の項のキスマークを指さす。

夢子「‥‥ぅ、こっ、これは!!」

慌てる夢子。
寄りによってこのサイコパス野郎に気づかれてしまった。

夢子「貴方に…関係ない…でしょ!!マフラー返してよ!」
アルフレ「ダメじゃないか、学校にそんなイヤらしいものつけてきちゃ。それとそんなに見せびらかしたい?ビッチだね君って。」
夢子「うるさいっ!!」
アルフレ「まーどうせもうひとりの僕がやったんでしょ?アイツも隅に置けない男だね。この世界に来てから段々大胆になってきてさ。」
夢子「ルフレは貴方とは全然違うから。」
アルフレ「ふーん?あ、そうだ、良い事考えた。僕が上書きしてあげるよ。」


夢子はまだ力の入り切らない身体を必死に動かそうとする。
何か、コイツはまた企んでいる。
そう察したから。


アルフレは夢子を抱きしめた。

夢子「は、離して!!」

動かない身体を必死に動かそうと藻掻く夢子。

アルフレ「…ああ、上書きするって言っても、あいつの上から重ねてキスマーク付けるとかそんな事しないから安心していいよ。
     あいつと間接キスなんて絶ー対避けたいし?っていうか想像しただけでゲロりそう。」
夢子「一体何を…!?」
アルフレは制服のポケットからマジックを取り出した。

アルフレ「僕の物って印付けてあげる。どんなマークが良いかな?…そうだ、久々にこのマーク描こうか。」

抵抗の出来ない夢子の項のキスマークの上にアルフレはマジックで上書きする。

アルフレ「よし、出来た。今日はこのくらいにしてあげるよ。じゃあ僕もう行くね。
     
     あ、因みに油性ペンだから簡単には落ちないよ。フフフ。」


アルフレは夢子の耳元で囁くと何処かへ行ってしまった。


しばらくやっと呼吸の落ち着いてきた夢子。
身体にも力が戻ってきた。
指の感覚もある。

再び鏡を見る夢子。
その鏡に映る自分の項には

アルフレが残した逆スマブラマークが描かれていた。
それはあのクレイジーが愛して止まないマーク。

夢子(そういえばアルフレって元々は敵側だったんだっけ…)

キスマークは隠れたかもしれないがこれはこれで流石に目立つ。


夢子(余計マフラー手放せない事になってしまった…ああ…最悪。朝からこんな最悪な気分だなんて。)





夢子の最悪な学校での一日が始まる。



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