52

人参オジ「あれェ?お嬢ちゃんこんな所にいたんだネ?探したヨー??」



夢子「え…?」

夢子背後にいつの間にか人参オジがいた。

人参オジ「みィつけたァアアア!!」
夢子「!!!(青ざめ)」

再び恐怖が彼女を襲う。



【52=美味しい食べ方】(キモ男注意)




夢子は直ぐに叫ぼうとした。
しかし人参オジが口を手で塞いできた。
パニックを起こして暴れる夢子。
人参オジもヒョロい割には割と頑張る。
夢子は人参オジの指を思い切り噛んだ。

人参オジ「イタアアアアアアアアいっっ!!!///」

夢子はこのちょっとした隙に包囲網から逃げ出した。
再び慣れない山道を走る。
人参オジはゾンビの様に追いかけてくる。

人参オジ「ハアハア‥‥まっってヨォォオ!!何もしないから僕とお話しようヨー?!」

・・・。
何もしないわけがない。
絶対何かする気だろう。
それがこの状況だ。

夢子「誰が貴方何かと…!!私は皆とパンダとか見たいの…!!」
人参オジ「パンダよりもっと良いの見せてあげるからさア!!
     僕は君を一目見たときから運命を感じたんダ!!」

夢子「何が運命!?私にはもう運命の人が居るの!あっち行って!」

再び息が切れてきた。山の上まで上がってきたせいで標高も高くなり酸素も薄いので余計息が切れる。

夢子「はあ、はあ、っく…」

夢子はそれでも必死に逃げていた。
人参オジが段々背後に迫っていた。
この男は山を熟知している。
一方夢子はというと素人な上お洒落着で明らかに不利だった。

そして…


遂に夢子は人参オジに追いつかれてしまった。
後ろから腕を掴まれる。

夢子は恐怖で顔が歪む。
人参オジが気持ちの悪い笑みを浮かべている。
息切れしてハアハアしてるのか
興奮してハアハアしてるのか…
どちらにしてもキモい。

夢子「は、離して!!」
人参オジ「もう逃げられないよォ??」

人参オジはロープを取り出した。
抵抗も虚しく夢子は手を縊られてしまった。

夢子「何するの!?離して!!!」
人参オジ「この先にねぇ、昔戦争してた時に村人たちが逃げていた壕があるんだけど…
     僕、そこを改造して暮らしてるんだよねェ‥‥
     その方が人参を育てやすいダロ??」
夢子「離して!!」
人参オジ「いつか好きな子を呼びたいなってずっと思ってたけど‥‥それが今日みたいダ。」
夢子「嫌だ!」
人参オジ「そんなに嫌がらなくてもいいんじゃないカ??僕は何もしないヨ?
     さあ、僕のハウスに案内してあげるヨー!!」

人参オジはロープで夢子を括り無理やり引っ張って連れて行った。

夢子「ルフレっ!!助けて!!!」

夢子は大きな声で彼の名を呼ぶ。
しかし返事などあるはずもなく。
夢子は人参オジに連れていかれてしまった。



でも、ルフレ達は確実に夢子に近づいていた。
夢子が人参オジに捕まってから10分後の事だった。

ルフレ達は夢子の足跡を頼りに山道を進んでいた。
段々獣道が荒くなり足跡も消えそうだった。
と、その時。

アルフレ「あ。」

アルフレが突然道を外れて茂みに入って行った。
そして草陰でブツブツ言い始める。

ルフレ「…こんな緊急事態に何を…」
マルス「あーもしかしておしっこー?恥ずかしいねー?(アルフレへの復讐煽り)」
アイク「緊張感欠ける発言止めてくれ…緊急事態だぞ。」

アルフレ「よーしよし…」

当然おしっこではない。
アルフレが何かを撫でている。
それは‥‥鹿だった。
野生の鹿がアルフレに角を撫でられてる。
鹿は逃げよとしない。


ルフレ「…アルフレ、今は鹿を愛でてる場合じゃ…」
アルフレ「‥‥この鹿、夢子が何処にいるか知ってるって言ってる。」
ルフレ「はいはいそれはどうも‥‥って‥‥はぁ!?!?何だって!?!?」
アルフレ「…ねぇ、大声出さないでよ?折角情報貰ってるのに君のせいで逃げちゃうだろ。」
マルス「アルフレって動物と話せるの!?」
アルフレ「ちょっとだけ、ねー。」
アイク「凄いな…今まで何でこんな凄い特技あるの言わなかった?」
アルフレ「はぁ?話すだって?夢子にならまだしも君たちに話して何になる?僕の好感度でも上がる?あり得ないでしょ?」
アイク「まあ、それはそうだが…。」
アルフレ「ふむ…この先にキモイ人間の男が住んでる大きな穴があるって言ってるよ。
     そこに可愛い女の子が連れていかれたって…」
マルス「可愛いって、絶対夢子の事だよ…!!!だとしたら急がないと…!!」


アルフレはポケットから人参を取り出すと鹿にあげてお礼を言った。

アルフレ「フフフ、ありがとね、これはお礼だよ。」
マルス「…ちゃっかり畑から人参持ってきてるし。」
アルフレ「もしも僕らが遭難した場合、お腹空くといけないだろ?」
ルフレ「…それで人参勝手に採ったの?」
アルフレ「フフフ、そんなことどうでもいいから早くいかないと…
     夢子が汚い人参(意味深)食べさせられちゃうかもよー?」
アイク「おぇッ‥‥さっき食った人参吐きそうだ。」
ルフレ「兎に角、夢子の居場所が分かったならあとは突入するだけだね!」
マルス「今度こそ…僕が夢子をかっこよく助けてヒーローになる!!」
アイク「少し暗くなってきたな…時間も時間だし急ごう。」




そして鹿のテレパシー(?)のお陰でルフレ達は夢子の足取りを確実に掴めた。



助けの手が迫ってることも知らない夢子は
壕の中に連れ込まれていた。
壕は改造されておりランプが壁に埋め込まれてオレンジ色に灯ってる。
夢子は椅子に縛られていた。
手は後ろに、足は椅子の脚に固定されて。

夢子は騒いでいた。
こんなことをされて当たり前だ。

すると箱を運んでいる人参オジが夢子に言った。

人参オジ「僕は君とお話シたいから今は塞いでないけど…
     良いのかなア?口も塞いじゃってもいいんだヨ?
     そうすると君自身の恐怖が増しちゃうんじゃない???」

夢子は一瞬黙り、静かに言った。

夢子「…こんな事して許されるとでも!?犯罪ですよ!?」

人参オジ「犯罪…ああ、そうか、そうなるんダネ…
     でも運命なんだから、仕方がないヨネ?法より僕たちの愛を優先にしなキャ!!」

人参オジは相変わらず箱の中身を選別していた。
夢子の位置からでは箱の中身は見えないが…
嫌な予感がする。

夢子はロープを引きちぎろうと懸命に動く。

人参オジはブツブツと言い始めた。

人参オジ「世の中、人参が嫌いだという人間が多いダロ?
     人参の素晴らしさを理解できないだなんて…許せない!!
     僕は皆に人参を好きになってほしいンダ。
     好きになるにはまず、調理方法ダ。
     …君はどんな調理方法が好きカナ??」


きっとルフレ達が自分を探してる。
夢子は時間稼ぎをするために会話することにした。
なるべく、時間を掛けなけなければ…


夢子「…炒め物とか…」
人参オジ「違うんダナー。」
夢子「煮物とか…」
人参オジ「それも違うんダナー。」
夢子「じゃあ…ミキサーでスムージーに…」
人参オジ「ちょっと近いかな。難しくて分からないみたいだから教えてあげよッカ。実践デ!!!」

夢子「‥‥?」


人参オジ「人参は…生が一番なンダ!!!」


人参オジは箱から巨大な人参を取り出した。
その辺の人参よりよっぽど大きくて長い。
流石に大根ほどとはいかないが。

人参オジは巨大人参を片手に持ち眼鏡を光らせ息を荒げる。

夢子は一瞬意味が分からなかったが、意味を知って絶望した。

《人参は生が一番》

それは人参オジの隠語だった。





【いいね!!】


[ 275/508 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]