38

夢子負傷事件から少し時間が立って朝が来た。
アパートの一角で剣士男子たちは誰もが呆然としている。
夢子ひとりが居ないだけでこんなにも空気が重たくなるとは
・・・まあ、誰もが想像してただろうが
実際に何時も居るはずの人物が居なくなるとなるとー・・・



【38=静寂の中】

事件から2日後。


ピット「あーもうつまんない!」

ピットがスイッチのコントローラーを投げる。
そして天井を見る。


夢子はまだこの家に帰ってきていない。

リンク「暇なら家事の手伝いしてくださいよ、ピット。」
ピット「夢子が居ないなんてやっぱり僕嫌だ!」
アイク「皆同じ気持ちだろう。」
ピット「っていうかおまるとシュルク…まだ帰ってこないだなんて。」
リンク「まあ、この町から大分離れた町の山中ですからね。徒歩ですし流石に足の速いあのふたりでも…」
アイク「あとでしばらく待って帰ってこないようなら先生に頼んでみるか?アイツ等の送迎。」
リンク「そうですね、そうしましょう。あの二人も居ないとなると余計家の中が静かで…
    まあ居ないなら居ないでライバルも減って良いこともありますが。(ボソッ)」
ピット「そういえば隣のあのおじさん、ニュースにも出ないね?」
リンク「遺体、山にそのままですからね。通報すらしてないし。」
アイク「それはそれで色々ダメな気もするが…夢子を酷い目に合わせたしな。アイツは擁護出来ん。」

ルフレ「・・・。」

ブツブツと文句を言い合うピット・リンク・アイク。
そんな3人を背にルフレは何かを考えていた。
そして覚悟を決めて立ち上がる。

ルフレ「僕、ちょっと夢子の様子見てくる。やっぱりジッとしていられない!!!」
ピット「ええ!?…まあ今日は丁度連休だけど…。」
リンク「貴方が行くなら俺も行きますよ。」
アイク「抜け駆けは許さない、ってな。」
ルフレ「別に道連れにするつもりはないよ?」
リンク「絶対ひとりで行かせません。」
ルフレ「何か良いようにされてる気がするけど…まあいっか。」
ピット「じゃあベレト先生ん家にレッツゴー☆」


4人は夢子に会いに行くことにした。
この人たちは家でジッと待っていられるタイプの人種ではない。
歩いて歩いて、タワマンへと向かって行く。
そしてー・・・
1時間以上歩いて漸くタワマンへ辿り着いた。
先日見たときは深夜でそれでも迫力があった、のだが…


ルフレ「改めてこうして見ると…ヤバイね、この建築物。マジで可笑しいって。恐るべし日本…」
リンク「…ほんと、一貫ですよ。」
ピット「ねえ、今からまたここ上るの…?!僕今羽無いんだけど!?!?ううー。」
アイク「ああ、この間は夜で真っ暗だったがエレベーターも透けてるからな。覚悟しとけ。」
ピット「ヒイイイ!!(青ざめ)」

そして、この4人は第一関門へとぶち当たる。

ルフレ「そういえば、オートロックだったね…番号わかる人いる?」
ピット「あ、僕覚えてるよ!!えっとね、×▼◇×■!!!」
アイク「お前‥軽く犯罪では?」
リンク「流石としか言えませんね。」
ピット「よーし!じゃあ夢子に会いにしゅっぱー・・・」


アルフレ「夢子が、何だって?」



4人がゲートを潜ろうとしたその時だった。
何とエレベーターからアルフレが降りてきた。
またサングラスとマスクをしてフード付きのパーカーを着こなしている。


ルフレ「…またそんな変装して。君何処に行くつもりなんだ?」
アルフレ「ああ、僕?…ベレスから御使い頼まれただけだよ。」
ルフレ「まさか…夢子に何かあったんじゃ!?!?」

焦りの色を見せるルフレを見てシラケたようにアルフレは言い放つ。

アルフレ「違うよ。一番くじ引いて来い、って言われただけ。」


ルフレ「…は?」


アルフレはめんどくさそうに財布のチェーンを振り回す。


アルフレ「何か、可愛いキャラクター物のグッズがあるみたい。
     あの女、そーゆーのに目が無いからさ。
     あ、夢子は今は目が無いね?フフフ。」
ルフレ「(怒)」
ピット「…じゃあ夢子はもう元気になったの!?」
アルフレ「…さあ…どうだろね…。」
アイク「はっきりしない奴だな…。」
アルフレ「君たちお見舞い…しにここまで来たんでしょ?早く行けば?」
リンク「珍しく俺等の邪魔しないんですね。」

アルフレ「ああ…
     僕はもう十分。

     夢子のカワイイ寝顔沢〜山見たから。
フフフ。」


ルフレ「ッ!!!(激怒)」

アルフレ「それにどうせコンビニすぐそこだから。嫌でもすぐ帰ってくるよ?残念でしたー☆」
ルフレ「…もう永遠に戻ってこなくてもいいよ?」
アルフレ「そんな怖い事言わないでよ?僕ら兄弟みたいなもんだろ??」
ルフレ「君みたいなゲスの血は流れてないから。」
アルフレ「ふーん…まあいいや。ほら、さっさと会ってあげれば?」
ルフレ「言われなくてもそうする。」
アルフレ「フフフ・・・。」


不気味な笑みを残してアルフレはコンビニに行ってしまった。
ルフレとリンクとピットとアイクはエレベーターに乗り込む。

ピット「…僕、アイツきらーい!!」
リンク「ほんと、隙が無いですよね。未だに正体がよくわからないし。」
アイク「何と言うか…人の調子をかき乱すのが上手いよな。アルフレって。」
ルフレ「…兄弟…」
ピット「どうしたの?ルフレ。顔色悪いよ?」
ルフレ「やっぱりもう一人の僕だから流れてる血は一緒なのかもね。非常に認めたくない事実だけど。」


アルフレと別れた後4人はエレベーターに駆け込んだ。
物凄いスピードで上がるエレベーター
ガラス窓の外の光景は圧巻だ。


《ポーンー・・・・・》

《80階ですー・・・》


最上階に辿り着いた4人。
皆緊張してあまり言葉が出ない。
もうすぐ夢子と会える。
またあの眩しい笑顔が見れる。
そう、大好きなあの笑顔に。
2日ぶりなだけだが誰もが胸を躍らせる。
でも、大丈夫だろうか。
あんなに酷い目に遭って…
嬉しい反面不安も隠せない剣士男子たち。
でも、やっぱり皆夢子の事が好き。
だから1秒も早く顔を見たい。


玄関のドアの前に立つ4人。
チャイムを押しても反応が無い。

ピット「あれ?おかしいなー。あ、顔認証ってやつ!?」
アイク「…いや、よく見たらドア少し開いてるぞ。」
リンク「あ、ほんとだ。」
ルフレ「アルフレのやつ、用心が足りないね…出ていく時開けっぱなしで…まあいいや、そのまま入ろう!」

4人は玄関から中に入った。

すると、部屋の奥から声が聞こえる。
しかも明らかに言い争ってる声。



「姉さん…いい加減やめろ、夢子が嫌がってるだろう!!」
「そんなこと無いわよねー?夢子ちゃん!!もう一度ギュウウウーってさせて?!」
「そ、それは…」
「ほら、ベレトの方が過保護なのよね?貴方そんなにこの子の事好きなの?ふふふ、残念ね、このコは私が貰うわ!」
「…顔を見ろ、嫌がってるだろ。それに夢子は俺の生徒だ。」
「ふふーん、そんなこと言っちゃって。貴方のこのコを見る目は女を見る目をしてるわよ?」
「姉さんだって彼女を趣味のぬいぐるみか何かと勘違いしているだろう!?」
「だってしょうがないでしょ!夢子ちゃんはお人形さんみたいに可愛いもの!ねー?夢子ちゃん!
 日本の可愛い物は全部私のモノなのよ!!」
「いい加減にしろって。…そろそろ本気で怒るぞ…?」
「ちょ、ちょっと!何よ、私から夢子ちゃんをとりあげる気!?
 弟の分際で生意気ね!?誰がいつもご飯作ってあげてると思ってるのよ?!私だって忙しいのよ!?
 少しくらい癒しを求めてもいいじゃない!?」
「それとこれとは話が違う。それに夢子はこれから俺と二人きりで秘密の授業を…」
「ふたりとも・・・引っ張らないでー!?ギャアアアー…」





ルフレ「夢子!?!?」


声を聞き急いで駆けこむルフレ。
慌てて奥の部屋へと続くリンク・ピット・アイクの3人。
そしてそこに広がる光景はー・・・・



夢子の腕を引っ張り合うベレトとベレスがいた。
中央の夢子は疲れ果てた顔をしていた。
でも、入ってきたルフレ達に気が付いた夢子。
直ぐに目を輝かせる。


夢子「皆…!!!」


4人は直ぐに夢子を取り囲む。
夢子を引っ張り合ってた両サイドの姉弟は固まっている。




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