36

涙を流す夢子。
ルフレは震える彼女を抱きしめる事しかできなかった。


ルフレ「君は…僕ら参戦者と関わったばかりにこんな酷い目に…」
夢子「ルフレのせいじゃないよ…?」
アルフレ「あー痛い痛いの飛んでけ、したのは僕だからね?
     僕の事感謝して好きになってくれて構わないよ?」
夢子「アルフレ…貴方もいたのね。」
アルフレ「んー?命の恩人だよ?酷いなその塩対応。」


【36=真の狙い】


ルフレが夢子を見て居る間、アルフレは自身のスマホを取り出してベレトに連絡を入れた。
電波が安定したらしく、すぐに回線が通じた。

ルフレは自分のコートを脱ぐと夢子に着させた。
自分の力でベッドから起き上がれるほど落ち着いた夢子はルフレの手を握る。

ルフレ「ほら、これならフードがあるから顔隠れるだろ?…こんな事しか出来なくてごめんね‥‥。」
夢子「謝らないで?だって私の事こうやって助けてくれた。
        いつもルフレに助けてもらってる私の方がお礼言わなきゃ。」
ルフレ「…ああ、こんな時でさえ君を愛おしく感じてしまう…」
アルフレ「そうそう、僕も興奮収まらなかったよ。やっぱ君の悲鳴は何時聞いても堪らない…!!」
ルフレ「この変態馬鹿の事は無視していいからね。」
アルフレ「んー?だからさー僕は命の恩人だよ?少しくらい褒美貰ってもいいんじゃない?」
ルフレ「褒美ならさっき十分受けたじゃないか。」
アルフレ「あれれー?もしかして妬いてる?そうだよねぇ、僕の行動は実に素晴らしい!マスターだって褒美くれるんじゃない?!」
ルフレ「…ベレト先生は何て?」
アルフレ「ん?ああ先生ね、こっち向かってるよ。


     何かあっちはあっちで大変だったらしいよ?」


夢子「そうなの?」


アルフレは残念そうに呟き始めた。

アルフレ「ベレト先生たち、偽のGPS情報のある地域に行ったんだけどそこに何があったと思う?」
ルフレ「勿体ぶらずにさっさと言ってよ。」
アルフレ「山の中央にある林の中、1体の魔獣が居たらしいよ。」
ルフレ「魔獣だって…?!ここ日本だよ?!ゲームの世界では…」
アルフレ「きっとクレイジーが召喚させた類のモンスターだね。
     こんな深夜の山中だから人の目には止まらなかったみたいだし。
     ああ、安心して。皆で討伐したっぽいから。
     あーあ、僕も分身を一目見たかったな、ねぇルフレ。」
ルフレ「君が僕の分身だろ。認めたくないけど…。」
アルフレ「それもあるけど、ほら、僕らにもギムレー様という邪竜の血が流れてるわけで…」
夢子「私には、邪神の血が流れてるよ。魔女の血も、だけど。」
アルフレ「クレイジーは何が何でも君という逸材を逃したくないんだろねえ。
     今日は下見みたいなもんかな。日本がどんな感じかってね。
     でも…アイツ、また仕掛けてくるよ?フフフ。」

笑うアルフレを横にルフレは拳を握りしめる。

ルフレ「…来たらまた全力で潰せばいい。只それだけだよ。」
アルフレ「君も物騒な事言う様になったね?」
ルフレ「夢子を傷つける奴は全員殺す。」
アルフレ「あー怖い怖い。こんな怖い男の側に居たら君だって性格淀んじゃうよ?夢子。」
夢子「私はルフレが居てくれたらそれでいい…。
        今回で分ったんだ。
        自分の身を削がれても大切な人が居れば惜しくはないって。」
ルフレ「夢子…。」
アルフレ「おぇーなんか気分悪いなぁ?純愛の相思相愛感じてまじ吐きそう。
     あ、何ならその愛情を僕に向けてくれない?僕なら倍にして返してあげるけど?」
夢子「…どうせ酷い事するんでしょ?」
アルフレ「今の僕はどっちかっていうと気持ちいい事したいけど?」

ルフレ「ッ!!!(怒)」

アルフレ「おー怖っ。折角の僕そっくりなイケメンフェイスが台無しだよ?激おこコワーイ。」









15分ほど経った頃、魔獣(?)を倒してきた参戦者たちが夢子の居る家に辿り着いた。
先にクレイジーによって殺された柄の悪いオジサンの死体が部屋を入ってすぐの場所にあったが
全員そんなものには目もくれずに夢子の元に集まる。
そして、今回の代償を知って全員声を失う。


ピット「夢子…大丈夫?絶対痛いよね?」
夢子「…痛みは今はもう無いよ、何かアルフレが飲ませてくれたから。」
アイク「そうなのか?アルフレ。」

アルフレ「うん、とっても甘くて美味しい物を僕が美しく華麗に夢子の口に…」

ルフレ「その話はもうしないでよ?(怒)」
アルフレ「別にいいだろ?此処にいるの全員腑抜けだし?」
リンク「兎に角…夢子さんの命があって良かった…」
アルフレ「アイツ(クレイジー)は殺しはしないよ。夢子自身を欲してるんだもん。
     優秀な血で自分の世界を作るのが目的だから。」
ルフレ「あれ・・マルスとシュルクが見えないけどあの二人はどうしたの?」
ピット「あーおまるすならゲロってたから途中で降ろしたよ。シュルクは付添人。」
アイク「そういえば少し車内に吐いてたな。」

ベレト「・・・。」

ピット「うわ、先生物凄く怖い顔してる…」
アルフレ「そりゃ5桁に近い愛車だからね?」
アイク「そんな高い車ってこの世にあるのか?」
アルフレ「んー外車だからね。よくわかんないけど意外とあるらしいよ。
     まあ僕は夢子虐める事の方が興味あるんだけど。フフフ。」

ベレト「はあ…仕方ない。」

ベレトはスマホを取り出すと何処かへ電話をかけ始めた。

ピット「まさか廃車にする手続きを…!?」
リンク「先生ちょっと早まり過ぎでは?幾らマルスがゲボったとは言え…」
アイク「いや、もしかしたら廃車の電話ではなく闇の暗殺者に仕事を依頼したとか…?」
ピット「ヒイイイ!?」

ベレト「…すまない…今からそちらに向かう。…ああ。わかった。…気を付ける。では…。」

ベレトは通話を終えた。
直ぐにスマホをズボンのポケットに閉まった。

ピット「ああ、おまるす…どうかあの世でも元気で…ちょっとだけ良い奴だったよ…僕は君を忘れないから!」
アイク「アイツが居たら《僕を勝手に殺すなー!》ってツッコミ言うぞ。」
リンク「何か不思議とその声が聞こえます。何故でしょう。」

ベレトは夢子の元へ向かうと彼女をお姫様抱っこした。

ルフレ「ちょ、ちょっとベレト!!な、なんて事してるんだい!?」
ベレト「先生と呼べ。」
ルフレ「そーゆーのは僕が担うのに!!」
アルフレ「まあ、夢子軽いし此処にいる男全員が担える役だけどねー。」
ベレト「今から俺とアルフレの住む家に彼女を連れていく。」
ルフレ「はぁ!?こんな時に何ちゃっかりお持ち帰りしようとしてるんだよ!?」
アルフレ「フフフ。」
ベレト「煩いな…心配ならばお前らも着いてきて構わない。さあ、車に戻るぞ。」
ピット「おまるすリバースフレーバーの車内…。」
アイク「…考えるな。」

アルフレ「ああ、それなら大丈夫じゃない?カバーの予備もあるし。
リンク「そういえば車用ファブリーズありましたね。引き出し開けたら沢山入ってました。」
アイク「どさくさに紛れてちゃっかり確認してたのかよ…。」
ベレト「ああ、あれか。こういう時の為に5個ほどストックはある。車内用香水もあるしな。」
アルフレ「そーゆーことだから、あの貧弱王子の多少のゲロなんて問題なしだよ。」
リンク「結局あの二人(マルスとシュルク)はどうするんです?」

ベレトはその場にいる剣士男子たちに聞いた。

ベレト「顔を負傷したお姫様を助けるのと車酔いする自称白馬の王子様、どちらが優先だ??」


その場にいる全員が即答する。


剣士男子たち「「「お姫様一択です先生!!!」」」


ベレト「…そういう事だ。行くぞ。」


そして夢子は山から下りてベレトとアルフレの家に向かう事になった。







マルス「はっくしゅっしょおおおおい!!!」


その頃マルスとシュルクは山を降りている途中だった。
大きなくしゃみをするマルス。

マルス「絶対今誰か僕の噂したよ!?ねぇ、君もそう思うだろ!?」
シュルク「…車酔いはもう大丈夫です?」
マルス「ちょ、ちょっと吐いたくらいだし平気平気!!
    僕白馬の王子様だから無敵だよ!!」
シュルク「…さっきまで馬に乗れないって言ってたじゃないですか。
     ん?あ、先生から連絡きましたよ。」

シュルクがスマホを開いて画面を見る。

シュルク「急用が出来た…お前らふたりは自力で下山してくれ。じゃあな。

    ‥‥だって。」

マルス「ええええ!?い、今から自力でこの山降りるの!?」
シュルク「何か、大変な事があったみたいです。
     …頑張りましょう!!」

マルス「NOOOOO!!ぼく帰ったら絶対夢子に耳掃除してもらうから!!ムキイイイイ!!」


マルスの悲痛な叫びで森で寝る鳥たちが驚いて飛んで行った。







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