32

ルミレ「久しぶりにふたりになりましたわね。
    暇ですしお話でもしましょうよ?」
夢子「貴女なんかと話す理由がない…。」



夢子はルミレに茨の鎖で繋がれていた。


夢子(こんなの結束バンド外した意味ないじゃない…)


ルミレは自身の髪を束に採り夢子に見せてくる。








【32=鋭い茨の中】









ルミレ「冷たくしないでくださいよ。
    見てください、このワタクシの髪。
    この世界に合わせて染めてみましたの。
    長いから大変でしたわ。
    でも、都会のほうでは割とカラフルな色をした人間もいるのですね。
    損しちゃいましたわ。でも、日本人の黒髪も良いですわね。」

夢子「・・・。」
ルミレ「貴女は本当はその黒い髪が本物の色なのですね。
    私は燃えるようなあの真紅の髪好きでしたわよ?」
夢子「貴女に褒められても嬉しくない。」
ルミレ「ルフレ様は元気?」
夢子「ええ。貴女に会わないこの世界に来て超元気。」
ルミレ「妬いちゃいますわ。でもこの世界にワタクシがいると知ったら更に元気に…
    貴女がクレイジー様の虜になった後はルフレ様はワタクシが貰い受けるので安心してくださいませ。」
夢子「私もルフレも反社会勢力になんて屈しないわ。」
ルミレ「そういう強気の人間ほど折るのが楽しいのです。フフフ。」



夢子は楽しそうに笑うルミレに問う。

夢子「貴女は何故クレイジーの味方なの‥‥?あんな人の側に居るメリットが分からない。」
ルミレ「メリットはありますわ。こうしてルフレ様に出会えたこと。
    私はクレイジー様に生み出された人形…これほど光栄な事他にないでしょう?」
夢子「…貴女は可哀想な人だわ。」
ルミレ「何故そんな憐れむのです?」
夢子「一方的な訳の分からない欲で動く事しか出来ない…。」
ルミレ「…口の利き方には気を付けたほうが良いですわよ?
    今貴女は囚われの身なのですから。」
夢子「・・・。」


ルミレは冷酷な瞳で言い放つ。
それは、とても、悍ましい言葉。


ルミレ「…私はまだ中身を造るの諦めてませんのよ?」




夢子(ゾクッ・・・・!)


ルミレ「そんなに怖がらないでくださいませ。貴女から奪うのはもう無理そうですし。
    …そうね、反逆者の女…あのコから貰うのも有ですわね?」


夢子「!!!」



ルミレ「…貴女も彼女に散々酷い目に合わされたのでしょう?可哀想に。
    ワタクシも同じセリフを貴女に返しますわ。
    あんな人間の隣にいるメリットが…」




夢子「沙羅に何かしたら、絶対許さない・・・!!!」


大きな声で夢子はルミレを怒鳴る。

ルミレ「…そんなに大声出さなくてもいいのですよ?
    貴方達の友情とかいうもの、どの程度のものか見て見たいのです。
    人間の愛は素晴らしい物なのでしょう?
    ワタクシも知りたいのです。愛が…ルフレ様が欲しい。」

夢子「ルフレは物じゃない!」
ルミレ「‥そうです?クレイジー様は逆らう人間は全てモノだとおっしゃいましたわ。」
夢子「名前の通りあの人も…そして貴女も…狂ってる。」
ルミレ「お話するの楽しいですわ。もう1時間も経っている…もう夜中かしら。
    安心してくださいな。ルフレ様は…私がモノから昇格させますから。
    貴女は…クレイジー様の為に美貌でも磨けばいいのです。」
夢子「言っとくけど私はあの人の妃なんかにはならないわ…。」
ルミレ「貴女に拒否権はないですわ。フフフ、この先が楽しみ!
    …ちょっと喋り過ぎましたわね。
    体力…まだあると危険なので少しだけ削らせてもらいますわ。」




パチン!!



再び指を鳴らすルミレ。
手首の茨が腕に食い込む。
血管からまるで血が抜かれていくような感覚を夢子は感じた。
そしてクラクラと眩暈もしてくる。

夢子「貴女…何を‥」
ルミレ「もしもの場合ですわ。私も学習しましたの。
    邪魔な虫が入った場合、貴女がピンピンに動けると危ないですから。
    HP…此処では心臓の脈と言えば良いかしら。少し弱らせるのです。」
夢子「うっ…」
ルミレ「段々顔が青白くなってきましたわね?私とお揃い…フフフ!貴女も人形に…」
夢子「私は…負けない‥‥貴女にも…そしてクレイジーにも…!」
ルミレ「抗ってくださいませ。瞑し甲斐があると楽しいですから。」
夢子「・・・・。」



夢子の意識が途絶えそうになる。
必死に堪える夢子。








ルミレ「その威勢の良さ、いつまで続くかしら?」



ルミレは笑う。高らかに生気のない声で。




【いいね!!】


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