この広い世界には何千何万という命がある。
生まれては消え、生まれては消え
それを繰り返し人々はこの地で暮らしてきた。
そして人々はいつしか『神』という存在を讃えるようになった。
生物、自然、宇宙…そしてこの世界を創り出した存在として。

ねぇ神様。

もしも本当にいるのならば

貴方に聞きたいことがあるのー・・・





「モウ逃ゲ場ハ無イ。大人シクコッチヘ来イ。」
いつも…
いつもこれだ。
なんで…?私何もしてないのに…
何処へ行っても何所へ逃げても
かならずコイツ等が追いかけてくる。

逃げないと…
捕まっちゃだめ…
絶対に逃げ切らないと…。

でも…今回は…もう…無理かも知れない。
私の後ろには崖。
あと何歩か後ずさりしようとすればこの谷の底へ落ちてしまう。
この高さからみれば当然、水の入った風船が割れたような体に私はなるのだろう。
前方のアイツ等がジリジリと私のほうへ近づいてくる。
私は何もできない。
力も知識も何も無い。
ただ逃げて、逃げて、逃げることしか。

「私は…」
私の声にアイツ等が一瞬動きを止めた。
「私は…絶対に捕まらない!捕まるくらいなら…」
私はアイツ等に背を向け駆け出した。
身体は宙に浮く。
そしてすぐに重力に負け下へ下へと風をきって落ちていく。
私の意識はそこでプツンと途切れた。



第1章【紅い瞳の少女】







『・・・か?』

『・・――ですか?』

『―――大丈夫ですか?』



・・・ハッ!

私は誰かの声に呼び起され目を覚ました。
冷たい水が体中の傷に沁みる。
私(痛っ・・・!)
朦朧とした意識の中私は思考回路をめぐらす。
私(そういえば私、崖から落ちたんだっけ・・・谷底が川だったの・・・かな・・。)
運が良かったのか悪かったのかわからない。
私(私が生きてるってことは・・・きっとまたアイツ等が・・)
???「・・あの・・・大丈夫ですか?」
誰かの声で私は我に返る。
そういえば私の隣にいるこの人は・・・
私は咄嗟に身を翻し、その相手と距離をとる。
私「誰っ!?」
行き成りの私の行動に相手は唖然とした。
???「すいません、驚かせるつもりは・・」
私「・・アイツ等の仲間なの!?」
???「・・え?」
私「私を捕まえにきたの!?そうなんでしょ!?」
???「違いますよ!!落ち着いてください!」
私「違う…の…?」
その時、突然眩暈が私を襲った。
視界と共に足元もフラつく。
???「危なっ・・!」

ドサッ・・!

倒れそうな私をその人が受け止めた。
私「は…離し…てっ…!」
抵抗してもがこうとするが、身体に力が入らない。
そんな私の額にその人は手を当てる。
???「大変だ…熱が出てる…!!」
私「大丈夫…だから…離し…て…」
嫌がる私を無視してその人は私を抱き上げた。
私「な…何を…!?」
???「少しの間、我慢しててください。」
そう言うとその人は私を抱き上げたまま、
川岸で水を飲んでいた1頭の馬に近寄った。
???「エポナ!急いで戻りますよ!」



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