28

高らかに笑うクレイジー。
目の前でその笑い声を聞きながら夢子はただ怯えた。
今、下手に動けば目の前の死体の様になるかもしれない。






【28=緊急事態】






一方ルフレ達は道なき道を車で移動していた。
車内はあり得ない程揺れる。
もう獣道とも言えない程の荒れた場所を車は走る。
樹の枝や小石がガラスにぶつかる音が響く。
ルフレは揺れる車内にしがみ付きながらベレトに言葉を投げる。



ルフレ「ちょっとベレト!もっと優しい運転できないのかい!?」
ベレト「煩い、緊急事態だ。夢子の命が掛かってるんだ。我慢しろ。」
マルス「うぷっ…」
ピット「先生〜おまるすゲロる寸前だよ?!」
ベレト「吐いたらしばくぞ。」
アルフレ「そそ、この車まだローンあるから。3ぶんの1くらい。」
アイク「なんか…リアルだな…。」

リンク「アルフレ、夢子さんの居場所はどうですか?」
アルフレ「うん、今は一か所に留まってるっぽいけど…ちょっと妙なんだ。」
シュルク「妙って?」



アルフレ「山だから電波悪いのか、それか他に原因があるのか、
     たまに通信が途絶えるんだ。」



ルフレ「電波障害か…。」


ピット「そういえば学校の皆も言ってたね。最近電波悪くてスマホ弄るのイライラするーって。」
アイク「もしや…それと今回の件関係あったりしてな。」
ピット「ええ!?どういう事!?」
アルフレ「そうだなー…電波の問題もあるけど、もうひとつ重大な問題あるよ。」
ルフレ「今度は何?」

アルフレはニヤニヤしながら言い放った。




アルフレ「今、彼女のスマホの充電が切れたら、僕らはどうする?」






一同「「「「!!!」」」」



アルフレ「それ考えたらちんたらやってられないよ。
     一分でも早く彼女の元に辿り着かないと
     スマホの充電が切れてGPSの位置が消える前に…ね。」

ルフレ「ベレト、急いで!」
ベレト「安全運転しろとか急げとかお前はほんとに我儘な奴だな。」
アルフレ「まあ、せんせーの運転の腕もかかってるわけだし?フフフ。」
ベレト「夢子を無事奪還した後はお前等全員毎日放課後自習させるからな。」
ピット「ええ!?なんで僕らも!?どっちかっていうと僕生活態度はなまるだよ?!」
マルス「うっ・・・。何かが喉まで来てる・・・。」
アイク「お前大丈夫か?顔が髪色より真っ青だぞ。」
マルス「ごめん、先生…リバース10秒前だから降ろしてくれないか…?うぷっ」
ベレト「はぁ…煩い奴だな。…まあ車内で嘔吐されたら俺が困るし…時間もない。
    誰かひとり、マルスと一緒に此処で降りてくれ。」
リンク「…誰が降ります?」
シュルク「僕付き添いしてもいいですよ。」
ピット「シュルク…大丈夫?」
シュルク「出すモノ全部出させた後僕らは後で追いつきます。」
アルフレ「じゃあ君のスマホに僕らのGPSのせとくよ。」
シュルク「助かります。マルスが落ち着いたらすぐ合流するので。」
マルス「ヲエエエ‥ウプ‥」







ー2分後ー

木陰で思い切りゲボる王子の姿があった。
実に情けない。


マルス「gerogerogerogero・・・・。」



車から降りたと同時にゲロりまくるマルスと心配そうなシュルクを置いて車は走り去る。
ベレトは運転席で少し安心してから後部座席の皆へという。


ベレト「じゃあ足手まといが居なくなったし急ぐぞ。」
アルフレ「あ‥‥。」
ルフレ「どうしたの?」
アルフレ「うーん…なんか表示がおかしい。画面がジラジラする。」
リンク「なんだかまるで古いテレビの様ですね。叩いたら直ります?」
アルフレ「冗談やめてよ。いくらしたと思ってるの?君弁償出来る?」
ピット「ねー、今時スマホでこんな事ってあるの?」
アイク「目の前で起きてるからな…きっと有なんだろう。もしくはー・・・・」



その時だった。



アルフレ「げっ」



アルフレが言葉を詰まらせる。

ルフレ「今度は何?」



焦りでイラついているルフレ。
アルフレの顔からいつもの笑顔が消えた。







アルフレ「残念だけど、最悪な事態…?起こっちゃったかもw」




アルフレの言葉を聞いたルフレは凍り付いた。








【いいね!!】

[ 251/508 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]