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7人はシュルクの見た景色を頼りに森の廃墟へと足を運ばせた。








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陽は完全に落ちて漆黒の闇が辺りを包む。
都心から離れ静けさの中に虫の鳴き声だけが響く。
懐中電灯の明かりがとても心強い。


シュルク「…そろそろです!景色がハッキリ見えてきました!ここだ…!」


夢子達はひとつの廃墟に辿り着いた。
屋根や壁は抜け落ち、錆びた鉄骨が露わになり
ガラスの破片があちらこちらに散らばっている。
ルフレ「夢子、怪我しないように気を付けて?」
夢子「あ、…あそこにいるのは…!」





廃墟の中の古びた椅子に黒が座っていた。
沙羅も隣に佇んでいる。

黒【ククク、ここが分かるとは流石スマブラのファイター様だな。】
沙羅【あら?夢子もいるじゃない。男に囲まれてそれはまあ楽しそうだわね。】
夢子「ダークにぃ…沙羅…なんでこんな…。」
黒【夢子、お前もこちら側へ来い。
  ・・・そしたらそいつ等の命は狙わないでおこう。】
夢子「!!!」
ルフレ「夢子、これは罠だ。決して惑わされてはいけない!」
沙羅【ふーん折角黒さんが折角誘ってあげてるのに来ないの?ほんとバカね?】
夢子「沙羅…貴女はそんな人じゃなかったはずよ?
     雰囲気も性格もまるで別人…!それにその紅い髪と紅い眼‥」
沙羅【私は私の本当の心を取り戻しただけよ。これが本当の私。
   そして今の私には力がある。後は私は真実の愛を手に入れる。】
夢子「私は嫌よ…親友と争いたくない。
     今ここに来たのは話し合いがしたくて―…」
沙羅【はぁ?話し合い?何舐めたこと言ってるのよ。
   これは殺し合いよ?わかる?どちらかが倒れるまで終わらないのよ‥!!!】
夢子「・・・!」
黒【沙羅、クレイジー様にも言われただろう。
  夢子は傷をつけてはいけない。無傷で捕獲がクレイジー様の指示だ。】
沙羅【チッ…でも他は殺しちゃっていいのよね?】
黒【無論だ。邪魔者は全て排除する。例え誰だろうと。】
沙羅【フフフ、ずっとこの力を試すサンドバック欲しかったのよ!
   思う存分甚振ってあげるわ…!】


ルフレ「皆、陣を整えるんだ!来るぞ!」
夢子「ルフレ、みんな、私に…私一人に沙羅の相手させて?」
ルフレ「ダメだ、危険すぎる!それに君に何かあれば士気が乱れる!」
夢子「私の親友、いえ、心友…私が止めないと。
     彼女にはいつも我慢ばかりさせてたの私にも責任あるから。」
ルフレ「…わかった。でも無理だけはしないで?
    危なくなったらすぐ僕の所に来るんだ。」
夢子「うん、ありがとう。」


夢子は沙羅の前に立ち
剣士男子達は黒を囲んだ。



沙羅【ふぅん…夢子、アンタ一人で私を相手しようと?
   何も力のない生身の身体で何ができるの?
   全く舐められたものね。今の私はアンタなんかより強いわよ?】
夢子「沙羅…まだ声は届くはずよ。貴女はそんな人じゃない!
      目を覚まして…私の声届いて…?」
沙羅【そんな声…届いてたら最初から私は苦しい思いなんて知らずに過ごせたわよ!】
夢子「え・・・?」
沙羅【アンタはいつも周りに慕われて、頭も容姿も良くて…
   黒さんの一番近くにいて…私が無いモノを全て持っていて…
   許せなかった…アンタのその優しさがどれだけ傷ついた心に染みたか…
   永遠にわからないでしょうね、その天然な脳内なら。】
夢子「ごめんなさい…」
沙羅【?!】
夢子「沙羅、貴女の気持ちに気付けなかったこと…謝るわ。
      私いつも貴女が明るいから悩みなんて無いと思ってた。
      でも人間だものね、誰にでも悩みはある‥。」
沙羅【今頃媚び打っても無駄よ?】
沙羅【・・・・?】
沙羅【・・・・!】
沙羅「…夢子…。」

夢子(本物の沙羅!?…やっぱり邪竜の瘴気はまだ完全に浸蝕してない‥‥
      ルフレの時みたいに頑張れば私の声届くはず…!)
沙羅【クッ・・・】
夢子「沙羅、私は貴女が大好きよ。心友だもの。
      小さい頃からずっと貴女を見てきたからわかる。
      貴女はそんな邪竜に負けない。帰ってきて?】

沙羅【ヤメロ…優しい言葉は聞きたくない…
   私はこれから真実の愛を手に入れる…アンタを倒して…黒さんとずっと…】
沙羅は邪竜の力を出した。
その眼は紅く光る。

沙羅【終わりよ夢子。私は貴女を許さない…!】
夢子「もう手遅れなの・・・?私は沙羅を助けられないの?」


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