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突然、太陽が雲に隠れて辺りは暗くなった。
風も止み、不自然な静けさが2人を襲う。
エポナの歩みが止まり、鳴き出した。
エポナ「ヒヒーンッ!」
夢子「!?」
リンク「…この気配…、何か、来る!!」
暗闇から出てくる無数の気配にリンクは武器を構えた。




第10章【影の惑わし】



空から次々と影虫が降ってきた。
影虫の塊は形を変え、またもやプリムへと変形した。
リンク「またプリムですか…!エポナ、夢子さんを頼みます!」
剣を抜くリンクの指示に大人しく後ろへと引きさがるエポナ。
プリム「命令…命令…。」
リンク「誰の命令で動いているのか、教えてもらえませんか?」
プリム「命令…命令…。」
リンク「やはり人と同等の知能は持っていませんか…。仕方ありませんね。今すぐそこから消えてもらいますよ!」
???「例え時の勇者だろうとこの数のプリムに果たして耐えきれるかな…?クククッ。」
リンク「その声は…!っく…邪魔だ、退けっ!!」
次々とリンクへ襲いかかるプリム達。
斬っても斬ってもその数は減らない。
リンク「夢子さん大丈…夢子さん!?」
リンクが咄嗟に振りかえると後ろにいたはずのエポナと夢子の姿が無くなっていた。
プリム「削除…削除…。」
リンク「ッチ…!」








エポナは森の中を疾走していた。
夢子は必死に手綱を握り、エポナに振り落とされないようにしていた。
パカパカパカパカッ!
エポナ「ヒヒーンッ!」
夢子「エポナ!?どうしたの!?」
パカパカパカパカッ!
夢子「止まって!」
パカパカパカパカッ!
夢子「お願いっ!」
パカパカッ・・・パカッ。
夢子「…と…止まった…。」
大人しくなったエポナを見て一息つく夢子。
夢子「助かったのね…。」
???「それはどうかな。」
夢子「!?」
夢子が声の主を辿り振り向く。そしてそこに居たのは…
夢子「リンクさん…じゃ…ない…誰…!?」
リンクの姿をした黒い人物が立っていた。
闇のオーラを毒々しく放っているその人物は姿だけはリンクと全く変わらない。
ただ、黒い衣装に包まれ、その瞳は紅い。
ダーク「俺の名はダーク。あの時の勇者の影だ。」
夢子「ダーク…!?なぜ私を追ってくるの…!?」
ダーク「記憶喪失と聞いてたが、まさか本当に忘れてるとはな…クククッ。」
夢子「なんで私が記憶喪失ということを知ってるの…!?」
ダーク「さぁな。知りたきゃ自分で思い出すんだな。欠片の破片さんよ!」
夢子「欠片の…破…片…うっ…!!」
ダークの言葉を聞いた夢子に突然頭痛が襲ってきた。
ダーク「少しは思い出したか?…おっと、客人が来たようだ。」
タタタタタッ!
ピット「夢子を返せー!!」
夢子「ピットさん…!それにマルスさんとアイクさんまで!」
アイク「貴様は何者だ!!!」
マルス「リンクにそっくりだけど…」
ダーク「俺はリンクじゃない。あいつの影って言ってるだろ?
    まあ、その内解るさ…。光が眩しいほど影も濃くなるってことをな!」
ピット「あっ、待て!!」
ダークは笑いながら森の暗闇に溶けて消えてしまった。
ピット「ああ…逃げられちゃった…。夢子、大丈夫?」
夢子「頭が少し痛いです…でもなんでマルスさん達は此処が解ったんですか?」
マルス「それは秘密!夢子がピンチな時はいつだって駆けつけ…」」
アイク「後ろからついてきた、ただそれだけだ。」
マルス「シーッ!」
アイク「なぜ秘密にする必要がある?」
ピット「なんかカッコ悪いじゃないか〜!!」
夢子「リンクさんは…!?」
ピット「あ…しまった!夢子が突然攫われたから置いてきちゃったよ…。」
マルス「リンクの事だし一人でも大丈夫じゃないかと思ったんだよ。」
アイク「念のため戻るか?」
夢子「そうしてもらえますか?…それと、さっきの事はリンクさんには秘密にしておいてください…。」
マルス「どうして?」
夢子「…なんだかそうしなくちゃいけない気がして…。」
ピット「よくわかんないけど夢子との約束なら絶対守るよ!」
夢子「ありがとうございます!」
夢子達がリンクのいた城外へ戻るとそこにはプリムの大群を倒し続けているリンクの姿があった。
夢子「リンクさん!」
夢子がリンクに駆け寄ると疲れ切っていたリンクの表情が一変した。
リンク「…夢子さん!無事だったんですね!今まで何処に行ってたんですか!?」
夢子「そ…その…。」
マルス「エポナが暴走してたのをたまたま通り掛った僕らが止めたんだよ!」
アイク「…ああ、そうだ。」
ピット「えっと…止めるの物凄く大変だったよな!」
リンク「…おかしいですね…エポナが暴走するなんて…。」
マルス「話は後だよリンク!僕らも加勢するからこいつ等をまとめて倒そう!」
ピット「さあ、夢子は城の中に隠れてて!」
夢子「ええ…わかったわ…。」
城内へと戻った夢子は額を抑え、激しい頭痛と闘っていた。
夢子「くっ…っ!」
痛みは増すばかりで一方に引きそうにもない。
夢子「一体何を思い出せって言うの…。」
等々痛みのあまり夢子はその場にしゃがみ込んでしまった。
夢子「欠片の破片…。ダーク…。だめ…何も思い出せない…。でも…何処かで聞いたことがある…。」
瞳を閉じ、痛みを忘れ神経に集中する夢子。
夢子「…ハッ…!そうだ…私は…。」
そのとき、前方からピーチがやってきた。
ピーチ「夢子さん!?どうしたの!?」
夢子「ちょっと頭痛がして…。もう大丈夫です。」
ピーチ「そう…なら良いんだけど…。あ、そうそう!夢子さんにもう一つプレゼントがあるのよ!」
夢子「プレゼント…?」
ピーチ「怪我の具合も良くなったことだし、もう医務室での生活は窮屈じゃないかと思って、夢子さんのお部屋準備したのよ!」
夢子「部屋…!?そんな…医務室で十分ですよ!」
ピーチ「遠慮しないで!マスターハンドが直々に作ってくれたのよ!それを私とゼルダとサムスで模様替えして…。」
夢子「そういえば…私、まだ『マスターハンド』さんに会ったことがなくて…お礼言えてないんです…。」
ピーチ「そういえばそうだったわね!なら連れて行ってあげるわ!マスターハンドの所へ!」
夢子「本当ですか…!?」
ピーチ「勿論!」
夢子は『マスターハンド』と名乗る人物の元へ、ピーチに連れて行かれる事になった。
そしてそこで明かされる新たな真実とは一体…。




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