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【誰かが幸せになることは、別の誰かの不幸の上でしか成り立たない。】
夢子はルフレに御遣いを頼まれ街にいた。
きっかけはこれ。
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ルフレ「夢子、君の為にアップルパイ作ろうと思って準備してたんだけど
買って置いたはずの林檎が無くなってるんだ…
多分誰かが食べたんだろうね…
僕は今手が離せないから、君には悪いんだけど御遣い、頼めるかい?」
夢子「別に良いよ?作ってる間暇だし…。」
ルフレ「ごめん、頼んだよ!とっておきの作るから!」
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と、まあこんな感じの会話があって今に至る。
夢子は林檎を無事購入することが出来た。
夢子「赤くて鮮やかで新鮮な林檎…!
きっとルフレも喜ぶわね!」
夢子がそんな独り言を言ってる時だった。
足が小さな段差に躓く。
その振動で林檎が3個ほどカゴから飛び出し裏路地に転がってしまった。
夢子「ああ、大変!私の不注意だわ…拾いに行かなきゃ‥!」
夢子は人気のない路地に入る。
すると…
突然背後から口を塞がれた。
夢子「!!!」
すると声がする。聞き慣れた声。でも
私の好きな人の声ではない。
…アルフレだった。
彼は夢子の口をずっと押えていた。
アルフレ「やあ、夢子。また会えて嬉しいよ。」
夢子「もごもご‥‥」
アルフレ「騒がないでくれるならその口塞いでる手を離しても良いよ。」
夢子「・・・・。」
アルフレ「そうそう。静かにしてくれたらそれでいいんだ。」
夢子とアルフレは対面する。
夢子「…で、私に何の用?今とても忙しいのだけれども。」
アルフレ「そんな冷たい事言わないでよ。僕は話がしたいんだ。」
夢子「他当たってくれる?」
アルフレ「僕は君しか視界に入れてないから無理。」
夢子「貴方がどんなにルフレに似てるからって私の心は揺らがないわよ。」
アルフレ「そういう抵抗する相手を従わせるのが僕の趣味なんだ。」
アルフレは足元に転がった林檎を拾って齧る。
アルフレ「この林檎みたいに一口齧ればあとは腐っていくだけなんだ。
僕は君が可憐に傷んでいくのを見たい。
これも愛のカタチでしょ?」
夢子「…貴方の考え理解できない…。」
アルフレ「今日は偵察に来たんだけど、君に出会えるなんて運命だよね?」
夢子「私は運命なんて思ってない。これっぽっちも。」
アルフレ「なんで僕にそう冷たいんだい?君の好きな同じルフレだろ?」
夢子「全然違う…貴方には情がない。優しさがない。光がない。」
アルフレ「そう、君と僕は分かり合えないのかもね。
永遠に。
でも僕は君のこと、僕のものにしたい。
それじゃあすることはひとつしかないよね?」
夢子「何…!?」
アルフレ『君を永遠に僕のモノにしてあげる。この林檎のように鮮やかな赤に染まって?』
アルフレは笑う。
ザクッ・・・・・!
鈍い音が響く。
夢子の胸にはアルフレのサンダーソードが刺さる。
血がじわじわと滲み出る。
夢子は吐血した。
夢子「カハッ…!あ…アルフレ…何を…」
アルフレ「何時まで経っても僕のモノにならないのならこうするしかないでしょ?
ねえ、痛い?苦しい?…助けを呼んでも君の王子様は来てくれないよ。フフフ。」
夢子「嫌だ‥死にたくない…。」
あっという間に血だまりが地面に出来た。
止めどなく溢れる血液。死へのカウントダウン。
アルフレ「さあ、フィナーレだ。僕も今からこの瓶に入った毒を飲む。
ふたりで違う世界で繋がるんだ。楽しいでしょ?」
アルフレは毒を飲んだ。
夢子「いや…ルフレ…まだ貴方に言えなかった事…沢山…ある‥‥の‥‥に…」
アルフレ「一緒に新しい世界にいこう?…もう邪魔者はいない…永遠に僕らは結ばれる…」
夢子は呼吸が上手く出来ずにいた。
苦しい。痛い。キライ。嫌だ。
怖い。怖い。怖い。
夢子「いや…私まだ…死にたく…な…い‥‥ル‥フレ…たすけ…」
アルフレ「さあ…同じ世界に…一緒に行こう…フフ…」
朦朧とする意識の中夢子はルフレの顔だけを想像していた。
目の前は段々真っ暗になり、最後に大嫌いなアルフレの顔を瞳は映して
夢子の意識は途絶えた。
ルフレは城の厨房にいた。
夢子がたった今命を絶った事も知らず。
アップルパイの下ごしらえをしていた。
幸せなひと時。
ルフレ「よし、パイ生地は完成っと!今日はとっておきの美味しいの作らなきゃね!
…夢子、まだかな?きっと選ぶのに時間掛かってるんだろな♪」
そしてー・・・
夢子はルフレの作ったアップルパイを食べる日は二度と来ない。
そして数時間後、ルフレの細やかな幸せはどん底の不幸へと変わる事、
この時誰にも予想は付かなかっただろう。
先に旅立つ者、己を恨み後悔する者…
彼らに光はない。
待ってるのは絶望、ただそれだけ。
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