【「ありがとう」はこっちの台詞。】

夢子は城の外を散歩していた。
誰にも邪魔されない一人の時間も楽しい。
元々日本では一人で暮らしていたし
急に賑やかになったのは奇跡とも言えるだろう。
でもこちらに来てからは部屋にいる時以外は常に隣に誰かがいた。
ルフレ達やルキナ達など…皆夢子に気を使ってくれる。
今日はこっそり自分の部屋を抜け出してきた。
城の外は芝生が生い茂り広場になっている。
綺麗な花も咲き誇る素晴らしい景色が広がっていた。


夢子「んー!自然っていいなぁー♪」
ふと夢子は気づいた。
自分より少し背の高い所の木に花が咲いている。
夢子「このお花…お城のロビーに飾ればきっと綺麗になるかも!」


夢子は木を登り始めた。
木登りは小さい頃黒と沙羅としていた。
久々でもうまく登れると夢子は油断をしていた。
木に登り始めて5分。花に手の届く位置まで登った。
手を伸ばす夢子。
30センチ…20センチ…10センチ…
あと数センチ。そしてやっと届いた。
しかし花に手が届き、夢子は安心してしまったのか
枝にかけている足を動かしてしまった。
夢子「え?」
夢子の身体は宙に浮く。
この高さから落ちれば間違いなく怪我をする。
軽くて骨折か、最悪死ぬかも?なんて
夢子は空中に舞いながら考えていた。
夢子(なんだろう、スローモーションみたいに自分が落ちていくのがわかる。)
地面に落ちる寸前夢子は目を閉じた。


・・・。

痛みが無い。
それどころか温かい温もりを感じる。
夢子は再びゆっくり瞳を開けた。
そこに移るのはシュルクの姿だった。

シュルク「夢子さん、何してるんですか!?危ないですよ!?」
夢子「シュルク…!?なんで此処が…?」
シュルク「そこの廊下の窓から貴女が木に登ってる姿見えて…ビジョン見ちゃって。
     このまま放っておいたら貴女は脚を骨折していましたよ。」
夢子「この高さだもんね…やっぱり危なかったかなぁ。」
シュルク「もう二度と無茶な事しないでください。
     貴女の身に何かあったら僕も‥皆も不安になります。」
夢子「ごめんなさい…。あ、でもこの花見て?」
夢子は木から落ちながらも摘んだ花はしっかり握っていた。
シュルク「この木の花ですか?」
夢子「うん、綺麗だと思わない?これ、城の中に飾りたくて。」
シュルク「だからあんな無茶してたんですね?」
夢子「私、お花が大好きで…ほら、日本でもアパートのベランダに植木鉢あったでしょ?」
シュルク「覚えてますよ、いつも大事そうに水やりしてましたもんね。」
夢子「この世界に来てから見たことのない綺麗なお花が沢山あって…
      前のベランダなんか比べものにならないほどの広さの庭があって。
      そこには毎日色んなお花が咲いていて…蝶も沢山飛んでいて。
      本当にこの世界は美しい‥そう思わない?」
シュルク「夢子さんにとっては新鮮な景色ばかりでしょうね。
     この世界はどちらかというと僕の元居た世界に近いのであまり不思議には思いませんが…
     そうだ、城の裏手にまだ何も植えてない花壇がありましたよ。
     そこに植物植えてみてはどうでしょう?」
夢子「ほんと!?わー!良い事聞いちゃった!マスターに許可貰ってみる♪ありがとう!!」
シュルク「…いいえ、『ありがとう』って言葉、僕が言うべきです。」
夢子「え?なんで?私何もしてないよ?今だって助けられた身だし。」
シュルク「貴女の笑顔が僕の力になるんです。
     その笑顔が絶えないよう僕も頑張りますね。
     そして、辛くて泣きたい時は泣いてもいいですよ。
     …僕の肩貸しますから。」
夢子「貴方って優しいのね!」
シュルク「誰にでもって訳じゃないですよ。貴女だからです。」
夢子「シュルクって律儀だよね…!貴方になら内緒の相談もできそう!」
シュルク「信用してくれてるみたいで僕嬉しいです。
     ずっと貴女の信用保ちたいです。
     出来ればもっと近くに立ちたいですけどね。」
夢子「???」
シュルク「皆で一人の女性奪い合って、毎日がスマブラですね。ある意味。」
夢子「変なシュルクね?」
シュルク「1位の座、取れるといいな…ルフレには負けたくない。そしてリンク達にも。」
夢子「シュルクだって十分強いわよ!…お花、皆喜んでくれるかなぁ」
シュルク「貴女が飾るものなら皆綺麗に見えると思いますよ。」
夢子「なんか…口説くのうまくなってきた?ルフレ達の影響かしら?」
シュルク「まあそういうのもあるんでしょうね。
     僕自身以前の僕とは全然違う感情が芽生えてますよ。
     目標が見つけられた。貴女という目標。
     僕は彼らには負けませんから。(ニコッ)」
夢子「私も目標持たなきゃ、だね。」





シュルク「片思いがこんなに辛い事だと思わなかった…。
     近くて遠い。僕の思いはいつ報われるのだろう…?」


夢子「ん?どうしたの?」
シュルク「僕は自力でこの問題を解決しますよ。絶対に…」



夢子のシュルクの周りには蝶が舞っていた。




【いいね!!】


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