【桔梗(キキョウ)の花弁が語る思いに】


とある秋の空気が冷たい日。
夢子は約束をしていた。
ルフレと町へ遊びに行くと。
つまりデート。ルフレはそう認識している。
夢子もまんざらではないが。
そこで夢子はルフレと待ち合わせていた。
家を出たタイミングが違ったから
ルフレとはそれまで別々の行動をしていた。
そして今は待ち合わせ場所の駅のフォーム。
夢子「ルフレ、喜んでくれるかな?」
夢子の手にはあるものが。
ルフレへのプレゼントだ。
時間が経った。そろそろ約束の時間だ。
その時。
夢子へ近寄る不振な影が。
男「ねえねえオネーサン。」
夢子「なんですか?」
男「オネーサン俺と遊ぼうよ。良いホテル知ってんだ〜。」
この男、アルコールのニオイが凄い。
夢子「…他当たってください。」
夢子は男を遠ざけようとする。
しかし酔っぱらっている男は引き下がらない所か夢子にちょっかいをだす。
男「なあなあ、いいだろ?うへへ・・・」
夢子「やめて…!」
すると駅の警備員がきた。
夢子「助かった…」
夢子が安心したその時だった。
酔っ払いの男が突然夢子の首にキスをしてきたのだ。
夢子「っ!?なにすんのよ!!」
男「グヘヘ… 可愛いコにチューしちゃったぁ〜グヘヘ。」
警備員「何してるんだお前!お前には話をさせてもらう!来い!」
気持ちの悪い酔っ払いの男は警備員に連行された。
夢子「あんな男に…こんなことされるなんて…」
首を持っていたハンカチで拭く。
まだあの生暖かい感触が記憶に残り、これは気持ちが悪いというレベルではない。
泣きそうになったその時だった。
見慣れた姿。ルフレが走ってこちらへ駆け寄る。
その姿を見た瞬間なんだかとても安心した夢子。

ルフレ「ごめん、待たせたかな?」
夢子「ううん、待ってないよ。私も今来たところ。」
ルフレ「そっか。よかった。じゃあ行こうか!」

夢子とルフレは久々の休日を満喫した。
映画を見たりカフェでお茶したり、それはもう楽しい1日。
夢子も先ほどの気持ちの悪い出来事をすっかり忘れていた。
楽しい時間はあっという間に過ぎ…
夕方になってしまった。
ルフレ「もうこんな時間か…」
夢子「あ、ルフレ!私あの崖の上に行きたい!
      夕陽綺麗でインスタ映えするって有名なの!
      一緒にいきましょ!」
ルフレ「うん!いこう!」
ルフレと夢子はインスタ映えスポットへと足を運ばせた。
確かに人気がある通りとても綺麗な景色が広がっていた。
夢子「綺麗ね!」
ルフレ「君のほうが綺麗だよ?」
夢子「フフ、またそんな事言って。」
ルフレ「本当さ!僕は本気で君の事を…」




ルフレは夢子を見て気づいてしまった。
そして急に黙る。

夢子「どうしたの?」
ルフレ「それ…何…?」
真っ青な表情でルフレが指さしたのは・・・
夢子が数時間前に酔っ払いに襲われた際についた「キスマーク」だった。
時間が経ったせいで痕が出てきたのだ。
夢子「あっ…これは変な人が‥」
ルフレ「僕以外に…好きな人いるの?」
夢子「ちがうのよ!これは事故で…!」
ルフレ「僕は…遊び相手なのかい?」
夢子「お願いルフレ、話を…」
ルフレ「酷いよ夢子。僕は君がそういう事しないって信じてたのに!」
夢子「ルフレ!私は・・・!」
ルフレ「僕に構わないでくれ!!!」

手を伸ばそうとした夢子を薙ぎ払うルフレ。
その力は思いのほか強く…
夢子は・・・
勢いで手すりの奥へと…
そう、崖の向こう側へと落ちて行ってしまった。
ルフレ「・・・え・・・?」
その瞬間はまるでスローモーションのようにゆっくり、ふわりと。
ルフレは目の前から夢子が消えた事を認識し、絶望する。
急いで手すりの下を見るとそこには変な方向に身体が曲がり
血を出している夢子の姿だった。
ルフレ「夢子…?嘘だよね?嘘…じゃ…ない…のか?」
ルフレは自分の犯した罪を再認識する。




ルフレは夢子を殺してしまった。





ルフレ「うわあああああああああああああああああ!!!」



叫び狂うルフレ。
夢子「僕は…この手で大切な人を…!?」
その場に崩れるルフレ。涙が止まらない。
すると目の前に落ちている夢子の荷物が視界に入った。
そこには小さな花束と添えらえているメッセージカードがあった。
ルフレはそれを拾って読む。

『この花を貴方に捧げます。花言葉は【永遠の愛】。私は貴方を思ってます。
 これからもずっと一緒に楽しい毎日が過ごせますように。』


ルフレはその花を…桔梗を花を抱きしめた。



ルフレ「僕がうぬぼれていたから…
    僕が自分の事を過信してたから、きっとこんな事に…
    こんなつもりじゃなかったのに…今日は特別で…大切な‥‥」
ルフレは再び夢子のいる地上を見つめた。
そして手すりに足をかける。
ルフレ「君のいない世界なんていらない。
    僕もすぐ逝くから、君もそこで待っててね。」


ルフレは崖から飛び降りた。
硬い岩に身体を打ち付ける。
落ちた直後は意外と意識があった。
朦朧としてる中ルフレは既に息を引き取った夢子の手を握る。
その手には桔梗の花弁が握られていた。

ルフレ「ごめんね、夢子。今…僕も逝くから…」



桔梗の花言葉は【永遠の愛】。
それは叶うことのない愛へと変わってしまった。
いや、言葉の通り永遠の愛かもしれない。
今この地から旅立った二人を神は祝福してくれるのだろうか。
二人の手の平にはもう温度は残ってない。












★あとがき★
ルフレの初の死ネタ的夢でした。
勘違いで急にすれ違って誤解を解けぬまま空へ。
悲しいですね。
こういう誤解をしたまま旅立ってしまう、辛いですね。



でも実はこの話・・・実は生存ルートがあります。
このまま救われない結果は嫌だ!っていう夢子さんは
どうぞ続きを
⇒次章【ごめんという気持ちを好きという言葉に込めて。】


一方この死ネタで既に満足というのなら続きの章は見ないという手もあります。
どちらの結末を選ぶのかは夢子さん次第。




【いいね!!】


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