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夢子「ゲホゲホ…この階段を降りるの?」
マルス「このビル非常の出口がないみたい。」
夢子「何か…段々頭がクラクラしてきた…。」
マルス「夢子、大丈夫だよ。もうすぐ外に出られるから!」
弱音を吐く夢子をマルスが励ます。
そんなマルスも大分追い詰められていた。
マルス「…兎に角ここを乗り越えなきゃ。」
【運命に絶望すると知りたくも無ければ肯定もしたくないのだから。2】
立ち込める煙をかいくぐり、階段を降りていくふたり。
1階に降りる地点で火事の被害が予想よりも遥かに酷い事に気が付く。
マルス「…入り口が燃えて…看板が落ちて道が塞がれてる…!?」
夢子「そ、そんな…じゃあ私達どうすれば‥‥?」
マルスは考えた。
こういう時、どうすればいいのか。
でも考えが浮かばない。
炎の中に突っ込めば大やけどをする。
とかいってこのままこの場所に居たら煙で肺がやられる。
考えている内に酸素が薄くなってきた。
視界も悪い。立ち往生するマルスと夢子。
二人は等々その場にへ垂れ込んでしまった。
マルスは隣で苦しそうに息をする夢子を見る。
そして、そっと手を握った。
マルス「ごめん、夢子。…僕は軍師程の策を考えることが出来なかった…
あはは…やっぱり負けてるね。自分が情けないよ…。」
夢子「マルス…?そんな弱気なこと言わないで…?きっと助けが来るよ、消防士さんもすぐそこだし…。」
確かにこの場に入ろうとしている消防士たちの賢明な声や音が聞こえる。
でも入り口を塞いだ重い看板は大分退かすのに苦労してるようだった。
マルス「それに…今日僕が君をデートに…誘わなければこんなことには…」
マルスも息が苦しそうだ。
夢子は両手でマルスが握って来た手を握る。
夢子「そんなこと無いよ?…私、凄く楽しかった!!可愛い猫ちゃんに囲まれて、美味しい飲み物飲んで、
マルスとふたりきりで来れて…本当に、よかった…!」
こんな状態なのに彼女は笑っていた。
でも、夢子の手は震えていた。
マルスは思わず彼女を抱き寄せた。
煙の勢いは衰えない。
マルスの腕の中で黒猫が動かなくなる。
夢子「私…まだ生きて居たかったかも…」
マルス「僕も…まだまだ君に話したい事沢山あるのに…」
夢子「私達が居なくなった後…どうなるのかな…」
マルス「未来が…閉ざされるかもしれないね…」
夢子「私、皆に迷惑かけてばかりで…最低…」
マルス「君は僕らの隣で笑ってくれればそれでいいんだよ。」
夢子「こんな時まで…優しいね、マルス。」
マルス「僕、君に出会えて本当に良かった。…本当に…。」
壁にもたれるふたり。
マルスは黒猫の亡骸をそっと床に下ろし、
彼女に火の粉が振りかからないように
彼女を守る様に抱きしめていた。
最後まで夢子の騎士でいるため。
段々、身体の力が抜けていく。
脳に酸素が届かない。
暑くて苦しい。
夢子「あれ…?マルスどこ…?視界が…変だよ…?見え…ない…」
彼女は極度に煙を吸い込んだせいで視覚障害を起こしていた。
それはマルスも同様で。
手の温度だけがふたりのメンタルを支えてた。
マルス「僕は此処にいるよ、ずっと君の側に居る…。」
夢子「マルス…最後にひとついいかな…?」
マルス「何?」
夢子「マルス、ありがとう!…大好き!!これからも…ずっ…と」
ここで夢子の意識が途絶えた。
マルスも最後の力を振り絞り彼女に話しかけた。
マルス「僕もだよ、ずっと…ずっと君の事、大好きだから‥!!‥あっちの世界でもまた会おう…ね?」
返事はもうない。
マルスの頬を涙が伝う。
そしてー・・・
彼も力なく意識を失った。
天井が焼け落ちてふたりと1匹の亡骸に降り注ぐ。
運命とは何故こんなにも無情なのだろうか。
それでもふたりの手は固く握られている。
離れない様に、迷わない様にー・・・・
・
・
・
・
その数時間後、家にいた剣士男子達はマルスと夢子の訃報を知る。
絶望し叫ぶ者、壁を殴る者、号泣する者、言葉を失う者…
世界のバランスが崩れた瞬間だった。
ふたりはあの世で再び出会えるのだろうかー・・・
【運命に絶望すると知りたくも無ければ肯定もしたくないのだから。】【完】
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