マルス「だからさ!!今日は僕とデートしよう!?」
夢子「うーん、どうしようかな…?」


朝から夢子に口説きに掛かる王子が居る。
夢子はベランダにピットが植えたファイアフラワーに水を与えている。
ファイアフラワーはジュウジュウと湯気を出しながら風に揺れる。






【運命に絶望すると知りたくも無ければ肯定もしたくないのだから。1】




マルスは奮闘する。
どうしても今日は彼女を口説きたい。
家の中にはお邪魔虫な剣士男子達がゴロゴロといる。
ベランダで一人になった夢子を捕まえるのは今しかタイミングが無かった。
猶予が少なすぎる。
夢子は水をかけ終わって背伸びをする。


マルス「…で、今日は僕とデートしてくれないかな!って。良いでしょ!?学校休みだし!!」
夢子「うーん…」
マルス「君が嫌がるなら無理には言わないけどさ‥‥でも、僕今日良いスポット見つけて…
    猫カフェ、近所に出来たんだ!!そこに君と一緒に行きたいんだ!!」

今までイマイチな反応だった夢子。
《猫カフェ》と言う言葉を聞いて目を輝かせる。


夢子「猫カフェ!!??うそ、そんなの出来てるの!?私、行きたい!!」

マルスは微笑む。

マルス(なんか…僕<猫な感じするけど…まあこれもプラスって事でいいよね?)

そしてマルスは家の中に居る剣士男子達を横目で見る。
それから夢子に忠告する。

マルス「あ…言っておくけど他の男子には内緒だよ?僕君とふたりきりでデートしたいんだから!」
夢子「…わかった、ルフレ達には言わないでおく!!」
マルス「ふふ♪今日はとても良い日になりそうだ♪さあ、早速準備して!!僕もお洒落していくから!!」






数時間後。
剣士男子達の魔の手(?)から無事逃れてマルスは夢子を連れて無事猫カフェに辿り着いた。
ビルの2階に常設された猫カフェ。
そこには様々な種類の猫たちが居た。

夢子は興奮している。

夢子「ぁぁあああっ!!カワイイ!!モフモフ!!///」

手当たり次第ににゃんこ達に触れる夢子。
マルスは手に猫のオヤツを持ちながら驚く。

マルス「凄いね…!?餌で誘引してないのに君の周り猫だらけじゃないか!!
    何なら店中の猫が夢子の周りに集まってきて…」
夢子「なんか私物心ついた時から動物に好かれるんだよねー…なんでだろ。」
マルス「心が清い証拠だよ!!動物は人間の性格見抜くっていうじゃん?それだよきっと!!」
夢子「えへへ…///」

マルスは喜ぶ夢子を見ながら鼻の下を伸ばす。

マルス(あー幸せ。この時間が永遠に続いてほしい…///)

猫たちは夢子の周りをぐるぐるする。
何匹かは彼女の手の舐める。

夢子「あはは、ザラザワする!!」

マルス(…でも、ちょっと、猫に嫉妬してしまうかもしれない。)

それは流石に大人げないぞ
誰もがそう思うだろう…。
でもやっぱり目の前で夢子に可愛がられる猫たちに嫉妬してしまう。

マルス(あわよくば僕もモフられたい…)
夢子「ん?どうしたのマルス、険しい顔して。」
マルス「いや…僕もにゃんにゃんゴロゴロして甘えたいなって。」
夢子「?」
マルス「なんでもないっ!!」
夢子「変なマルス!!あ、その黒い子マルスの事見てるよ?餌欲しいんじゃない?」
マルス「あ、ほんとだ。」

マルスの足元に一匹の黒い猫がいた。
瞳が青く毛は黒く艶やかでとても品がある。

マルス「よしよし、これが食べたいんだね?…あはは、お腹空いてたのかな?」
夢子「その子なんだかマルスに懐いてるね!前にもここに来た事あるの?」
マルス「いや、出かける前にも言ったけどこの猫カフェは最近出来たばかりだよ?」
夢子「でもその子マルスの事大好きみたいだね!」
マルス「んー餌持ってるからじゃない?」
夢子「それだけじゃないと思うけどな?マルスの清い心もこの子たちが見抜いたんじゃない?!」
マルス「そうだといいけど…。」
夢子「ねぇマルス。」
マルス「何だい?」

夢子「今日は連れてきてくれてありがとう…!!」


夢子は満足げな笑みを浮かべて笑う。
マルスもそんな夢子を見て幸せだった。


と、その時。

マルスがとある異変に気付く。


マルス「…何か変なニオイしない?」

そう、
猫カフェの店内が異様なニオイを漂わせている。

夢子「ほんとだ…何か、焦げ臭いね?何か作ってるのかな?」
マルス「…いや、ここで提供されるのはドリンクだけだった気がするけど。」
夢子「じゃあこれって何のニオイ?…何だか段々濃くなってきてる…」

マルスはハッと思い出す。
嘗て自身が駆け回った戦場。
戦で放たれたそれ。
物も人も呑み込むそのトラウマ。


炎のニオイだ。



マルス「まさか…!?」

マルスは窓の外を見た。
此処は二階。
外では人々が集まってこのビルを囲んでいた。
赤い消防車も見える。


ー・・・間違いない、火事だ。


このビルの1階が燃えている。
確か1階には飲食店が入っていた。
今はまだ2階には火の手は回っていないようだが
煙が大分立ち込めてきた。

マルス「夢子…!大変だ、下の階が火事になってる!!」
夢子「…!?そ、そんな…」
マルス「早く逃げないともっと煙が来るよ…」
夢子「でも…この猫たちは…」
マルス「スタッフたち…自分だけ避難するなんて…何てゲスな人達なんだ…?!」

店内に煙が入ってきた。
段々息が苦しくなる。

マルスは猫たちを外へと逃がした。
野良猫になってしまうかもしれないが…
ここで死ぬよりは全然マシだろう。
あの黒猫は最後までマルスから離れようとしなかった。
しょうがないのでマルスは猫を抱く。
入る煙がきつい。

マルス「さあ、僕たちも避難しよう!」
夢子「ゲホゲホ…」
マルス「低く屈んでハンカチで口を塞ぐんだ!」
夢子「は…ハンカチ…うう、忘れてきちゃったみたい…ゲホゲホ。」
マルス「室温も上がってきた感じがする…これは…流石にヤバそう…?」



マルスは夢子を手を引いて姿勢を低くし
壁沿いに猫カフェから出た。

これで助かる。

そう思ってた矢先だった。

このビルは内階段。
つまり、1階と繋がっている階段を降りなければいけない。


その言葉が意味するものとはー・・・









【いいね!!】










[ 148/150 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]