夢子は泣きながら走っていく。
人はこういう時焦り過ぎているのか何故かとエレベーターを使わない。
夢子はタワマン50階から長い長い階段を降りていた。







【完璧な人間なんてこの世に存在しないのだから。…僕だってそう、完璧じゃないんだ。2】








夢子「うう…ルフレの馬鹿!!あんな凄い技…私が出来るわけないじゃない!!」

泣きながら夢子は呟く。
しかしこんなにも長い階段を降りると息も上がる。
20階付近まで降りたところで彼女は脚を止めた。


夢子「‥‥タマゴの事でルフレと喧嘩するなんて‥‥私ほんと大人げないよ…」

夢子は自分自身の行動を咎めた。
確かにそうだが…彼女の悔しい気持ちも理解できなくはない。


夢子「私、教えてもらってたのにあんな態度して…
      きっとルフレは私の事キライになったよね…」



ルフレ「そんなこと無いよ!!!」


夢子「!!!」


声のする方へ振り向く夢子。
そこには夢子の後を追いかけてきたルフレが立っていた。
息をあげ上から彼女を見下ろしている。

夢子「…ルフレ!?」

ルフレ「ハァ…ハァ…君ってばこういう時に限って足早くて…」

夢子はルフレの顔を見て再び泣く。

夢子「…もういいよ…放って置いて‥‥」
ルフレ「放っておくわけないだろ!?君に話したいことがあるんだ。」
夢子「え…?」

ルフレ「…丁度良かった、ここの階段中々使う住人いないし。座って話そう?」
夢子「…うん。」


階段に隣同士で腰を下ろす二人。
そして・・・
ルフレは話し始めた。



ルフレ「いつの日か、僕が君に話した話覚えてるかな?
    クロムが僕の始めて作ったご飯食べたときの感想。」
夢子「あー…何だっけ?」
ルフレ「僕の料理、始めの頃は鉄の錆びた味がするって言われてたんだよ。」
夢子「…ああ、思い出したかも!!あれってほんとなの?」
ルフレ「僕の黒歴史だよ。全部本当の話。
    僕としては頑張って作って軍の士気をあげようとしてたんだけど
    皆からは尽く試食すら拒まれてさ。」
夢子「…そんな風にみえないよ!?」
ルフレ「今現在は、だけどね。それでさ、その時クロムだけが僕のゲロマズ飯食べてくれたんだ。毎回、ね。」
夢子「クロムは相当ルフレの事信用してるんだね?」
ルフレ「あはは‥‥まあいつもその後トイレに籠ってたらしいんだけどね。
    時には特効薬使う日もあったみたい。」
夢子「…何か色々凄い。っていうか特効薬そんな使い方していいの!?」
ルフレ「そんな事情もあったからね…クロムにも申し訳ないから
    絶対にメシウマ男子になるって心に決めたんだ。
    それからずっとレシピ本眺めたり料理の上手い仲間に手ほどきしてもらったり。
    そうしてー…今の僕があるんだ。」
夢子「…ルフレ、努力したんだね…」
ルフレ「だから…こんな僕でもここまで来れたんだ。君に出来ないはずがない。」
夢子「そうかな‥‥?」
ルフレ「うん!!僕がいつも一緒に手伝ってあげるから一緒に料理上手くなろう?
    何度失敗したっていいんだよ?失敗は成功の基って僕という存在が示してるし!」
夢子「…私…ルフレとなら頑張れるかも…」
ルフレ「まあ、万が一があったとしても大丈夫!
    君と結婚して家庭もったら僕が食事担当するからさ!!」
夢子「何か話飛び過ぎてない!?///」
ルフレ「ママは存在があるだけでもいいんだよ。ベイビィ達だってそう思うよきっと!」
夢子「だから話飛びすぎ!!何で赤ちゃんの話…!?」
ルフレ「僕はそのつもりだから。」
夢子「ーー!!!///ルフレの馬鹿!!やっぱり馬鹿だよ!!ばかばかばかー!!」
ルフレ「あははw顔赤い夢子超カワイイ!!やっぱり今日の朝ごはんは夢子が食べたいなぁ?!」
夢子「ほんとやめて!?人が来なくてもここ外だからね!?変な発言しないで!!」
ルフレ「さあ、冗談(半分本気)は置いといて、家に戻ろう?」


ルフレは夢子に手を差し出す。

夢子もさっきの涙が嘘の様な笑顔で手を取る。

二人は家に戻る為階段を上がっていった。





ー家の中ー



さて、50階の夢子達の家の中だが
キッチンの前で固まっている人物がいた。
…リンクだ。

キッチンは潰れた生卵が散乱して汚れている。

リンク「これは…一体何が…」

流石のリンクもこれには真っ青だ。








ルフレ「ただいまー!」

暫くしてルフレと夢子が家に帰ってきた。
すると、家の中から良い匂いがする。


ルフレ「…これはタマゴ系の料理の匂い?」
夢子「あ、ほんとだ!良い匂いする…」


二人は玄関から家の中へ入る。
すると大きなダイニングテーブルに剣士男子達が並んで食事をしていた。

ピット「あ、夢子とルフレ!!」
マルス「君たち朝から何所行ってたの!?」
アイク「飯、もう出来てるぞ。」

ルフレ「ご飯作ったの!?」

シュルク「まあいつも通りリンクが、ですけどね。」


夢子「もしかして‥‥」

すると、キッチンからリンクが顔を出した。
手には二皿分のオムレツ。

とても良い匂いがして美味しそうだ。


夢子「リンク…もしかして私が沢山潰したタマゴを‥‥」

リンクは笑う。

リンク「ああ…やっぱり夢子さんでしたか。」
夢子「やっぱりって!?」
リンク「怒らないでくださいよ?現状はかなり悲惨でしたが食べ物ですからね。
    粗末にしない様にちゃんと俺が加工しておきました。」
夢子「そうなんだ…あんなに潰れて殻まで入ってたのに!?」
リンク「まあオムレツですから潰れてても結局溶き卵にしますし
    殻は茶こしで濾せば何ともないです。」
夢子「そっか…勿体ないなって思ってたんだよね…ありがとうリンク!!」
リンク「気にしないでください。貴女の失敗は俺がいつでも穴埋めしますから。」



ルフレ「君…良い所取りしてない?何か全部持ってかれた気がするんだけど。」
リンク「何の話です?」


ピット「ほら、二人も早く食べよう!!今日のオムレツすっごくふわふわで美味しいよ!!」



ピットに急かされルフレと夢子は席に付いた。



夢子「…ほんと、美味しそう!」
ルフレ「何か色々悔しいけど‥‥とりあえず食べようか。」
夢子「うん!!」



ルフレ・夢子「「いただきます!!!!」」




夢子はオムレツを口に運ぶ。
ふんわりとしたタマゴの味に細かい具材が素朴な味を引き出し
赤いケチャップが食欲をそそる。


夢子「美味しい!」
ルフレ「…悔しいけど美味しい。」

リンク(にっこり)


夢子「ねぇ、ルフレ。」
ルフレ「なんだい?」


夢子「ずっと…私の事サポートしてね?」




全員「「「ガタッ!!!」」」



夢子の発言を聞いてルフレ以外の全員が椅子から立ち上がった。
さっきまで調子の良かったリンクも顔を歪めている。

ルフレ「勿論だよ!!僕は君を離すつもりないから!!」


ルフレは当然の様に言い放つ。
そしてすぐに周りからの殺意を向けられる。

マルス「ちょっと軍師!!君…夢子に何したの!?」
ピット「そうだよ!!夢子変な事されてない!?怪しい薬飲まされたとか!!」
アイク「抜け駆けは許さん。」
シュルク「ああ‥いまから5秒後この食卓が戦乱と化すビジョンが見えます…」
リンク「ルフレ…貴方はオムレツ食べなくていいですよ。っていうか餓死してくれても構いません。」


ルフレ「君たち妬いてるの?ふふふー残念だね、夢子は僕のモノだから★」




そしてシュルクの言った通り食卓で大乱闘が始まった。

夢子は争う男共を他所にオムレツをもぐもぐと食べていた。



夢子「私もオムレツづくりやってみようかな…?またタマゴ割るの練習しなきゃ…」


彼女もまた、元気を取り戻していた。
今日もまた騒がしい朝が始まる。








【完璧な人間なんてこの世に存在しないのだから。…僕だってそう、完璧じゃないんだ。】【完】



【いいね!!】



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