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日曜日の早朝、珍しく夢子はキッチンに立っていた。
目的は手に持った白い玉…
そう、彼女は最近やっと得意になった目玉焼きを作ろうとタマゴを手にしていた。
夢子「よーし、今日も作るぞー!!」
目指すはこの家に住む全員分の目玉焼き。
果たして彼女は無事ミッションを熟す事ができるだろうかー・・・
【完璧な人間なんてこの世に存在しないのだから。…僕だってそう、完璧じゃないんだ。1】
1時間後ー・・・
日曜の朝と言う事もあって皆爆睡していたが
ルフレがキッチンの物音を聞きつけて起きてきた。
そこには緑のエプロンをつけてキッチンに立つ夢子の後姿。
彼女はこちらには気づいていないようだった。
ルフレはそっと、彼女に近づく。
そしてー・・・
ルフレ「おはよー夢子v」
彼女をぎゅーっと抱きしめる。
夢子「!!!」
当然驚く夢子。
ルフレは彼女を更にぎゅっと抱きしめる。
こちらは若干寝ぼけているのもあるが。
でも、ルフレは気づいた。
夢子の様子が何だか変だったから。
身体が震えていた。
そう・・・
夢子は泣いていた。彼女は目と頬と鼻先を赤くして泣いていた。
驚くルフレ。
直ぐに彼女から手を離して謝る。
ルフレ「ゴメン夢子!!そんなに朝のイチのハグ嫌だったかい?!ほんとごめん!!」
夢子「いや…」
ルフレ「…そうだよね、朝からこんなことするなんて紳士的じゃないよね…次からはちゃんとした時間(?)に…」
夢子「違うの…ルフレ…」
ルフレ「他に僕に至らない部分があったら遠慮なく言ってね?僕頑張って直すから…」
夢子「違うの!!」夢子は大きな声で言った。
その小さな体から出た声量に思わずたじろぐルフレ。
ルフレ「え?」
夢子「あのね…ルフレ…
なんか…
卵割ったら必ず殻が入るの…!!」ルフレ「…え。」
あっけない表情になるルフレ。
夢子は涙目で訴える。
ルフレ「…もしかして…それが理由で泣いてたの?」
夢子「だってー!!私が割ると全部に入るの!!
もう1パック全部…!!何で!?私何か悪いことした!?」
ルフレ「1パックってことは…10個全部ってことかい?」
夢子「うん…それに追い打ち欠けるように黄身まで潰れて…ぐっちゃぐちゃに…」
ルフレ「‥‥プププ。」
夢子「…ルフレ?」
ルフレ「あははははwww」
ルフレはお腹を抱えて笑い出した。
さっきまでの緊張感はゼロだ。
そんなルフレを見て夢子は真剣に怒る。
夢子「ちょっと!!笑わないでよ!!私真剣なんだよ!?」
ルフレ「あー…ごめんごめんw君が可愛すぎてw」
夢子「ほんとに可愛いと思ってるの!?私は自分の不器用さに絶望してるのよ!?酷いよー!!」
ルフレ「そんな怒らないでよ。ほら、誰だって最初はそんなもんだよ。」
夢子「じゃあルフレが手本見せて?」
ルフレ「いいよ?」
冷蔵庫から2パック目のタマゴを取り出すルフレ。
そして片手に卵を持つとボウルの角にタマゴを軽快にぶつけてパカッと割ってみせた。
ルフレ「ほら、こんな感じで力を入れ過ぎずに適度な角度で…」
夢子「両手でも割れないのに片手で割れるわけないじゃない!!初っ端からハードル高い技見せないでよ!!」
ルフレ「そうかな?意外と片手でやったほうが出来るって人も居るよ。ほら、夢子もやってみて!」
夢子「…成功するビジョンが見えない…」
ルフレ「何シュルクみたいなこと言ってるのさ?大丈夫だよ、ほらやってみて!」
夢子「うう…」
夢子は片手にタマゴを持つ。
そしてルフレの様にボウルの角にタマゴを打ち付けた。
バリッ・・・変な音が鳴る。
夢子「ウッ。」
ルフレ「大丈夫!まだヒビが入っただけさ!あとは中身を出せばいいんだよ!頑張って!」
夢子は集中する。
集中するあまりタマゴを持つ手が意志とは関係なくプルプルと震えだす。
そして力加減を誤り…
グシャッ・・・・再び不穏な音がキッチンで響いた。
夢子は片手で持ったタマゴを殻と中身ごと手で潰してしまった。
夢子「‥‥あ…。」
ルフレ「…あぁ…潰しちゃったか…」
夢子「ううううーーーー!!」
夢子の顔が再び赤くなり瞳から涙が溢れる。
すぐさまルフレがフォローに入るがー…
ルフレ「夢子、大丈夫!これは経験だよ!日頃の積み重ねが大事だから…!」
夢子「ヤダ!私もう料理何かしない!!」
夢子は着ていたエプロンを脱ぐと乱暴に椅子に掛けて泣きながら玄関に行ってしまった。
そして思い切り玄関のドアを開けて外へ飛び出してしまった。
ルフレ「夢子!!??」
慌ててルフレは夢子の後を追う。
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