夢子は熊の去った木から降りた。
木の下にいたアイクが彼女が降りるのをサポートする。


夢子「アイク!?何で此処に!?」

夢子は聞いた。
直ぐに答えは返ってくる。





【美味しく作るならまずは食材集めから力を入れなければならない。3】






アイク「お前がタクシーで変な方向に行くのが見えたから…すまないが尾行させてもらった。」
夢子「そうなの!?」
アイク「皆スーパーやコンビニに行くのにお前だけ町から離れた方角に行くから…まさかと思ってな。」
夢子「あはは…。」
アイク「でも、追いかけてきて良かった。お前に傷なんかついたら…俺は…」
夢子「アイク、ありがとうね?私もアイクが助けてくれなったらあの熊に食べられてたかもしれない…」
アイク「…今回の騒動は元はと言えば俺のせいだしな。」
夢子「あれ?反省してたんだ?リンクの前では全然そんな感じしなかった…」
アイク「あいつ等は男だしどうでもいいが、お前に何かあったらそれこそ失態だ。」
夢子「あ、そうそう、私ね山菜見つけたんだ!ほら見て!」

夢子はアイクに袋いっぱいのタラの芽を見せた。
アイクは首をかしげる。

アイク「…何だこの草は。」
夢子「これはね、山菜って言って日本では昔から食べられてる野草みたいなものなの!美味しんだよー?」
アイク「鍋に合うのか?」
夢子「それがちょっと問題…私も鍋にタラの芽なんて居れたこと無いし。」
アイク「お前が旨いというならきっと旨いだろう。」
夢子「だといいけど…。」


アイクは夢子に手を伸ばす。

アイク「さあ、帰ろう。時期日も暮れる。」
夢子「うん!!!」

素直にその手を取る夢子。
二人は手を繋いだ状態で歩く。
何とも微笑ましい姿だ。
ルフレ辺りが見たらきっと憤怒するだろうが。
アイクは今の状況を密かに堪能していた。
今は邪魔者は居ない。
夢子とふたりで山中デートだ。



アイク「‥‥幸せ過ぎる。」

夢子「…?何か言った?」
アイク「いや、何でもない。」


暫く北方向を歩いてた夢子とアイク。
すると夢子はあるものを見つけた。
それは倒れた大木に沢山ついていた。

夢子「ねえ、アイク!これキノコだよね!?」

夢子の指をさす方向を見るアイク。

アイク「…多分そうだろうが…俺はキノコの事は…」
夢子「まって、図鑑あるから…えっと…このキノコの名前は…
        【ウスヒラタケ】だって!!え、しかも食用だよ!!」
アイク「何‥‥!?食えるのか!?」
夢子「うんっ!!しかもとっても美味しいみたいだよ!!やったねアイク!!」

夢子はアイクの手を取り絵に描いたようにジャンプして喜ぶ。
喜ぶ夢子を見てアイクは微笑んだ。

夢子「アイクも嬉しい?!」
アイク「…お前が喜んでる事が何よりも嬉しい。」
夢子「よーし!これで皆に自慢できるね!!」
アイク「俺は今の状態を自慢したいくらいだ。」

夢子「?」




そして何だかんだあったが無事夢子とアイクは住んでるタワマンに戻ってきた。
家の中に入るともう皆スタンバイしてテーブルにはカセットコンロが設置されていた。


ピット「ふたりとも遅いよー!?何所に行ってたの!?」
夢子「あはは…ごめんね、食材探してたら時間かかっちゃった。」
リンク「まあ皆無事揃ったし具材入れましょう。鍋つゆは事前に準備したので後は具材入れて煮込むだけです。」



そして勢ぞろいしたテーブルで一人ずつ食材を入れていく。

ピット「僕はねー、これ!」
リンク「茄子ですか…。」
マルス「僕はこれ!」
リンク「…板蒟蒻…?」
シュルク「僕はこれです。」
リンク「お麩…!?」
ルフレ「皆馬鹿じゃないの?鍋って行ったらこれでしょ。」
リンク「…豆腐ですか。まあ王道ですかね。
    夢子さんとアイクは?」
夢子「私はこれ!タラの芽!!」
リンク「えええ!?そんな高級山菜どこで入手したんです!?」
夢子「ふふふ。」
リンク「…まあ鍋に合うかちょっと疑問ですけど。アイクは?」
アイク「すまない…俺は何もー…」



夢子「アイクは《ウスヒラタケ》だよ!!」


夢子の言葉を聞いて一同は驚く。
何よりも一番驚いてたのはアイク自身だった。

周りのガヤが騒ぐ。

ルフレ「ウスヒラタケって…めちゃくちゃ美味しいキノコだよね!?」
リンク「それってスーパーで売られてる代物でしたっけ?少なくともこの辺で売られてはいない気が…」
ピット「凄いアイク!!」
マルス「っく…僕よりカッコイイ食材選ぶなんて…なかなかやるね?」
シュルク「まあ、板蒟蒻とは張り合うわけないですからね。」
マルス「君だってお吸い物に少しだけ浮いてるあれじゃないか!!差ほど変わらないでしょ!!」

夢子「だから、今回の鍋の具材集めの優勝は、アイクだね!!」

アイク「夢子…」

夢子はこっそり舌を出してアイクにウインクした。
アイクは夢子を抱きしめたい衝動に駆られたが、我慢した。


そして闇鍋パーティーが始まった。
皆無言で食べる。

リンク「…正直もっとヤバくなるのを想像してたんですけど。」
ルフレ「うーん意外とイケるね。」
夢子「ふふふ、やっぱりみんなでテーブル囲むのって良いね!!」
ルフレ「でも君たち何処で食材手に入れたんだい?見た感じ一緒に帰ってきたっぽいけど。」
夢子「そ、それは…。」


アイクは夢子の肩を掴んで自身に寄せてこういった。


アイク「俺と夢子のふたりだけの秘密、だ。な?夢子。」


夢子「…ま、まあね!!///」

そんな秘密を抱えたふたりをみて一瞬で剣士男子達の目線がアイクに向かう。
人によっては殺意が感じられる。

マルス「君…後で僕と勝負してよね…?」
アイク「ああ、ゲームのスマブラでな。」
ピット「あ、僕も僕も!!そーだ!久々にサドンデスしよー?!一撃勝負!」
シュルク「じゃあ僕も久々にしようかな?」
ルフレ「…このウスヒラタケがイイ出汁をだしてる…」
リンク「ほんと、流石に悔しい…」


討論になる剣士男子達の間で夢子は黙々と鍋を食べていた。
具材をモグモグとリスの様に噛みしめて。




夢子「もぐもぐ、タラの芽…鍋に意外と合うかも。」





【美味しく作るならまずは食材集めから力を入れなければならない。】【完】




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