山の中に入る夢子。
こんな日が来る気がして彼女は山の幸の図鑑を買っていたのだ。

早速本を広げながら山道へと足を踏み入れる。


夢子「今の時期はやっぱり山菜とキノコかな。あると良いけど…
        いいや、絶対見つける!!
        そして私の見つけた食材が一番美味しいって皆に自慢するんだー!」

にんまりと笑う夢子。
普通に可愛い。




【美味しく作るならまずは食材集めから力を入れなければならない。2】








山の中に入って15分が経過した。
人の手が加えられている山道には何もない。
この季節は皆同じ思考で山に入る為、人目の付きやすい場所に食材など生えてはいない。



夢子「うーん、やっぱり人があまり立ち寄ら無さそうな所がいいのかな。
        ちょっとだけ山道外れてみる‥‥?なんか危ない気もするけど…
        でも…」

夢子はまたにんまりする。

夢子「この奥に絶対何かある気がする!!」

こんな時でもポジティブ思考。
今の彼女に怖いものは‥‥


夢子「あ、でも蛇とか熊とか…出たりしないよね…?熊鈴なんて持ってきてないんだけど。
        まあ大丈夫だよね、いざというときは木に登れば!!」

本当に大丈夫か夢子、蛇はそれで逃げ切れたとしても熊は中々執念深い生き物だぞ…
誰もがそんな事を思うであろう状況の中、夢子は人工的な山道から離れて獣道に入って行った。

10分が経った。


するとすぐに夢子はキノコを見つけた。
軸が長く笠が大きく開き真っ赤なキノコ。
これはどうみても…

夢子「凄い、ほんとに生えてる!!…えっと、図鑑っと…えーっこのキノコは‥‥ベニテングタケか…。
        …うぇ!?ど、毒キノコなの!?危ない危ない…赤くて綺麗だからつい採っちゃう所だった…」


者の数分で毒キノコ界隈で有名な毒キノコを引き当てた夢子。
これはある意味才能があるかもしれない。



夢子「うー折角大きくて美味しそうなのに…まあ、他探そ。こんな広い山の中だもの。種類は沢山あるだろうし!」


それから更に30分が経った。
あのベニテングタケ以来何も見つからない。

夢子「ゼエ・・・ゼエ・・・。」

息が切れる夢子。
その辺で拾った木の棒を杖代わりにして歩く。

夢子「こんなに見つからないものなの…?毒キノコでもいいから視野に入れたい気分だわ…」

夢子は何となく上を見上げた。
すると、そこには山菜があった。
それは天ぷらにしたらとても美味しいやつだった。

夢子「…あれって、タラの芽じゃない!?」

そう、夢子は頭上高くに芽を出してるタラの芽を見つけた。

夢子「凄いラッキー!!あれ超美味しいんだよね!?…でも、鍋の具材に合うのかな…?
        ええい、迷ってる暇なんてない!もう夕方まで時間無いんだから!!
        …でも、大分高い場所にあるなぁ…」

すると夢子、ここで凄い行動に出た。
タラの芽の枝の伸びている近くにある大き目の木に登り始めたのだ。
この木は足場もしっかりしてるので上りやすいと夢子は判断したのだ。
それにしてもこんなにもか弱そうな現役JKが木登りをするだなんて誰も想像しないだろう。

夢子は木を意外とスポーティーに登っていく。

夢子「よいしょっと…」

そしてタラの芽が手に届く位置まで登り切った。
手を伸ばす夢子。


プチッ・・・・



彼女は見事タラの芽を収穫できた。

夢子「やったー!!この調子でこの周辺のは全部とっちゃお!」

夢子は夢中になって収穫をする。
10分もしない内に持ってきた袋がパンパンになるほどタラの芽を収穫することが出来た。



夢子「やったー!!これで1種類は決まったね!!‥‥できればあともう1種類くらい見つけたいんだけど…」


すると、その時だった。


夢子の登ってる木が大きく揺れた。

ドンッ‥‥!!


夢子「へ?何?地震!?」

地震ではない。
夢子は嫌な予感がして登ってる木の根元を見た。


そこには


体長3mほどの大きな熊がいた。


熊「グオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


夢子「ヒイッ!?く、熊…!?まさか…本当に出るだなんて…聞いてないよ!?」


夢子は木にしがみ付く。
熊は明らかにこちらに向かって威嚇していた。
攻撃がしたいのか、獲物と見ているのか。


兎に角危険な状態であることには変わりなかった。
夢子は身動きできず木の上で固まる。

夢子「ど…どうしよう…このままじゃ降りられないし…降りられたとしても…」


熊「グオオオオオオオオオオオオオオ!!!」


夢子「こ…怖い…っ!!」



熊は木を揺らしまくってきた。
まるで力士の張りてのように木に攻撃をしている。


夢子「いや‥‥!!誰か助けて!!!」


その時だった。
聞き慣れた声がした。





「大・天・空!!!!」


ザンッ・・・・・!!!

熊がその技を受けた。

熊「グウウウオオオオ!?!?グオグオグオ…!!」

熊は技の当たった額を抑えて変な走り方で去って行ってしまった。



夢子はその様子を息を飲んで見ていた。
完全に放心状態だった。
そして木の根元に立つ人物を見る。

アイク「…夢子、大丈夫か?」

夢子「アイク…!?」



そう、助けてくれたのはアイクだったのだ。

片手には愛剣ラグネル…ではなく…
その辺の太い樹の棒を持ったアイクだった。
それでも流石、剣士の風貌はある。
実際あんなにも大きく狂暴な熊を一撃で退けたのだから。
夢子はまた参戦者に救われた。

夢子は涙を浮かべる。





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