夢子「あ…貴方…!?」

突然のアルフレの登場に思わず叫びそうになる夢子。
するとアルフレが夢子の口を塞いできた。


アルフレ「シーッ。今大声出せば、あの教師に見つかっちゃうよ?」
夢子「ぅぅ…」






【鬼ごっこしましょ。かくれんぼしましょ。睨めっこしましょ。…逃げきれたらいいね。2】






夢子は静かにアルフレに尋ねる。

夢子「貴方は此処で何をしてるの?注射嫌い?」
アルフレ「‥‥まさか。針で刺されるのは快感だよ。でも僕はどちらかと言えば刺す方が好きだから。」
夢子「じゃあ何でこんなロッカーの中に…」

警戒する夢子を見て思い出したかの様にアルフレは答える。

アルフレ「…寝てた。」
夢子「ええ…?」
アルフレ「ここ…最近の僕のお気に入りの場所。暗くて狭くて、美術の授業は基本静かだろ?
     だから此処が今は一番落ち着くの。」
夢子「…あっそ…。」
アルフレ「君もここで寝て見たら良いよ。僕の気持ちわかるとおもうから。」
夢子「遠慮します。それじゃ私はこれで…さよなら。」
アルフレ「んー?いいのかい?此処から出たら…多分君…秒で捕まるよ。
     そしたら細い針の餌食になるわけだ。きっと君の細い腕に刺さったら…嘸かし痛いだろうねぇ?フフフ。」
夢子「…っ!!(青ざめ)」
アルフレ「そんな事になるより、あと数十分、僕とここでお話しとこうよ?」
夢子「どっちも物凄く嫌なんだけど。」
アルフレ「それとも…僕が先生大声出して呼んであげようか?《夢子ならここにいるよ》って。フフフ。」
夢子「なっ…!!」
アルフレ「さあ、どうする?君に選択肢何て無いと思うけど。」
夢子「はぁ…分ったわよ。でも貴方となれ合うつもりはないから。
        今まで散々酷い事されたし。」
アルフレ「酷い事なんてした覚え無いよ。」
夢子「…そういう所が立ち悪いんだよね貴方って。」
アルフレ「僕は自分の欲望に忠実なだけさ。」
夢子「…身勝手。」
アルフレ「それは誉め言葉として捉えて良い?」
夢子「そして頭の可笑しいほどポジティブ…。」
アルフレ「その方がストレス溜まらないでしょ。」
夢子「やっぱり貴方は人として軸がブレてる。」
アルフレ「フフフ、ありがとう。」


ロッカーの中でアルフレと見つめ合う状態。
夢子は目を逸らしているが赤い目がじっとこちらを見ている。
普段から何を考えてるかさっぱり読めないその瞳が暗闇の中、更に不気味さを醸し出している。

アルフレ「ねえ、僕の顔…どう思う?」
夢子「どうって…」

まあ、単純に顔だけ見たらかなりのイケメンではある。
でも…中身がクズ過ぎて話にならない。

アルフレ「僕って、ルフレと同じ顔だろ?」
夢子「貴方とルフレは…違う。」
アルフレ「本当はね、僕も最初はルフレみたいにシルバーの髪色だったんだよ。」
夢子「‥‥そうなの?」
アルフレ「目だって、あいつと同じブラウンの瞳だった。《もうひとりのルフレ》だからね。瓜二つだったんだ。」
夢子「じゃあ…なんで?髪も真っ黒だし目だって真っ赤じゃない?」
アルフレ「んー実験?みたいなことされてるうちに、こうなっちゃったんだよねー。」
夢子「実験って…?」
アルフレ「クレイジーにね。散々だったよ。あいつ頭可笑しいから。」
夢子「貴方も十分可笑しいけどね…」
アルフレ「何か変な薬品浴びせられてるうちに髪が黒くなっちゃってさ。
     目も朝起きたらいつの間にか真っ赤になってたんだ。」
夢子「…裸眼なの‥?!悪趣味なカラコンだと思ってた…。」
アルフレ「そう?まあ日本でならそれはそれで言い訳通じるからいいんだけどさ。
     でも、僕がそのままの姿で君に出会えてたならって思う。」
夢子「どういう意味?」
アルフレ「だってまさにルフレと瓜二つだろ?世間で言う双子の一卵性双生児みたいな感じでさ。
     まあ…人間の母体から生まれた訳じゃないけどね、僕らは。」
夢子「身なりが一緒でも、性格が違うから。」
アルフレ「ふーん。女って見た目重視じゃないの?」
夢子「そういう人もいるけど、私はそうじゃない。」

アルフレ「じゃあさ、試してみる?」



アルフレは夢子の顎をクイッと持ち上げた。
びっくりして慌てる夢子。

夢子「なっ…!!何!?///」
アルフレ「さあ?何でしょう。」
アルフレが迫ってきた。狭いロッカーの中、逃げ場はない。

夢子「ちょっ…!?」
アルフレ「今日は、ルフレモードになってみる?そうだね…こんな感じかな。
     《夢子、君ってほんとかわいい!!僕だけのお姫様!!ずっと一緒に居ようね!?》
     …どう?アイツってこんな感じでしょ?うーん何か違うかな?」

アルフレが優しい表情をしてきた。
これはこれで不気味過ぎる。
夢子は逃げ場のないロッカーの中を逃げようと後ろに下がる。
すると肩に美術で使うキャンバススタンドが当たる。そして、倒れた。

ガシャンッ!!!!


夢子は思わず悲鳴をあげそうになる。
すると、アルフレが夢子に一気に迫った。


ガラガラガラガラ‥‥



美術室の扉が開く。
血眼で夢子を探すベレトが入ってきた。


ベレト「‥‥今、この教室から物音がしたんだが…夢子、いるのか?」

ベレトの足音だけが教室に響く。

ベレト「居るなら今のうちに出てきた方が身のためだぞ?そんなに先生と個人授業したいか?」

教室の端から端を歩くベレト。

ベレト「…ネズミでも出たか…?此処にいると思ったんだがな…?」


ガラガラガラ‥‥バタン。


先生は教室から出ていった。
静かになった教室。
音もでないロッカーの中は凄まじい事になっていた。

なんと・・・


アルフレが夢子の口をキスをして塞いでいた。


…通りで呼吸の音一つ聞こえないわけだ。

夢子は目がぐるぐるしていた。
頭の中のパニックに陥っている。

夢子「ー!?ー!!!?///」


先生は教室から出て行ったのに、アルフレはキスを止めない。

遂に夢子はアルフレを突き飛ばそうとした。
しかしアルフレは夢子の突き飛ばそうとした両手を掴み、壁に押し当てる。

夢子「ンンンッ…!!///」

ここで漸く口を離すアルフレ。
口と口から糸が引く。

アルフレ「‥‥やっぱり自分を偽るのって可笑しいよね?僕は僕らしくが良いと思わない??
     君だって、ほんとは僕に嬲られて嬉しいんじゃないの?」
夢子「そ、そんな事っ…!!///」
アルフレ「ねえ、今の君なら僕の事受け入れるんじゃない?
     そうだ、今からここで××××しようよ?」
夢子「はぁ!?///」
アルフレ「フフフ、君の嫌がる顔見ながら狭くて暗い空間で、しかも校内でスるなんて…スリルあって最高じゃないか。」
夢子「私はそんなことっ…!!」
アルフレ「じゃあ、受け入れられる体制どうか確認しようか?フフフ。」
夢子「や、やめっ…!!///」

アルフレが再び夢子に迫った、その時だった。
ロッカーの扉が開き、陽の光と冷たい空気が一気に入ってきた。

そこには…鬼の形相のベレトが立っていた。

夢子は顔を赤くし甘い吐息を漏らす。
アルフレは夢子の胸を揉んでいた。


・・・ベレトがキレた。
怒りで頭髪が白っぽくなったのは気のせいだろうか?



この後、アルフレと夢子は職員室に呼ばれベレトに3時間以上説教された。
予防注射も難なくベレスの高度な医療技術により無痛で終わった。
何なら蚊に刺された方が痛いレベル。
夢子は思う。

夢子(こんな事なら最初から素直に受ければよかった‥‥!!!ほんと最悪!!!)

涙目になる夢子。
今日のアルフレは大胆で色々とヤバ過ぎた。
熱でベレトの説教も殆ど頭に入らない。
夢子は泣きながら隣に立つアルフレの顔をチラっと見る。

こいつ…めちゃくちゃ涼し気な顔してる。
怒られて少しは歪んだ顔してると思ったが、この男…全くもって真顔だ。

そんなアルフレに余計神経を逆なでされたベレト。
そして説教の大半はほぼアルフレだけに集中していた。
…彼は今日夕飯抜きらしい。

説教の終わり際、ベレトが夢子に言う。

ベレト「放課後、夢子はマンツーマンの授業だからな。」
夢子「えええ…!?今日は早く帰って皆でカラオケ行こうと思ってたのに…」
ベレト「…カラオケと先生、どっちが大事だ?」
夢子「そ、それは…」
アルフレ「は?カラオケに決まってるじゃん。ね、夢子。」
ベレト「お前は明日も明後日も飯抜きにするよう姉さんに言っておこうか…?」
アルフレ「あれぇ?生徒虐待していいのかい?教育委員会に訴えるよ?この三大ハラスメント教師。
     そんなんじゃ夢子処か誰にもモテないよ?」
ベレト「…言ったな‥‥?(激怒)」
夢子「あの…私そろそろ帰っても…」

ベレト&アルフレ「「ダメ。」」

夢子(ヒイイ…先生ならまだしも何でアルフレまで…!?)


ここからまた変態真顔教師と居候サイコパスの争いが始まろうとしてる。
3時間で終わると思ってた説教タイムはまだまだかかりそうだ。
夢子はそんなふたりの間に挟まれ思う。


夢子「…帰りたい。(涙)」


モテる女は全部が都合良いわけじゃない。









【鬼ごっこしましょ。かくれんぼしましょ。睨めっこしましょ。…逃げきれたらいいね。】【完】


【いいね!!】


目次


[ 107/150 ]

[*prev] [next#]
[mokuji]
[しおりを挟む]