3
アルフレの夢子の間に気まずい時間が流れ始める。
アルフレは巻かれた布の端をくるくるしている。
夢子は買った本をぎゅっと抱きしめていた。
一体私は何をしているのだろうか。
今までこの人に何度も命を狙われたのに
何度も嫌がらせをされてきたのに
そんな相手を助けている。
同情?そんなものあるの?
偽善?認めたくない。
夢子(私は何をしているんだろう…。)
【痛いの痛いの飛んで逝け。3】
夢子「アルフレ…傷、痛い?」
重たい空気の中、夢子が沈黙を破った。
アルフレは言う。
アルフレ「どうかな。今まで何度も痛い事したし僕には分からない。」
夢子「どういう意味…?」
いつもニヤニヤと薄気味悪い笑みを浮かべてたアルフレが今日は真顔で隣に座っていた。
何を考えているか分からない。
夢子「もしかして、FEの世界で…?」
アルフレ「ふふ、ゲームの中の世界は神秘的だけど、実は血生臭いもんだよ。
FEの世界は戦争を繰り広げる人間たちの醜い争いの場でもあるからね。」
夢子「でも貴方は戦場には出てないんでしょう?ルフレは神軍師だったみたいだけど。」
アルフレ「僕はー…覚醒するまでずっと幽閉されてたから。」
夢子「幽閉って…」
アルフレ「暗い部屋にね、ずっとひとりでいるんだ。物はあるよ?退屈しないようにね。
でもそれが長年続いてごらん?…ゾクゾクするだろ?」
夢子「・・・。(何だかこの人やっぱり闇が深そう…。)
アルフレ「だから、僕今の生活気に入ってるんだ。
眩しくない空の下歩けて、新鮮な空気吸って、好きな事して、好きな人も出来て。」
夢子「・・・。」
アルフレ「でも世の中思うようにはいかないね。これも僕への罰かな。フフフ。」
夢子「アルフレって元は誠実な人間だったの?」
アルフレ「元はって何?今もでしょ?」
夢子「はぁ…。あ、でも…」
アルフレ「?」
夢子「幽閉されてたのなら何故大怪我を?外部からの攻撃はないでしょ?」
アルフレ「んー、実験と体力回復の為、かな。」
夢子「…どういうこと?」
アルフレ「僕は魔力で戦うタイプのユニットだからね、そっちのステータス高めないと戦えないだろ?
何れは相見えるルフレを覚醒させるためにも魔力あげなきゃいけなから。」
夢子「…急にメタい話になったわね…。」
アルフレ「まあ、でもゲームの世界じゃ悪役はどうせ負けるんだ。
でも今、この世界でなら僕はルフレを超えることが出来る。…そう思わない?」
夢子「…頑張ればいけるんじゃない?」
アルフレ「本当かい!?君のお墨付き貰ったならいけそうだね。」
夢子「はぁ…。」
夢子はスマホを開く。
ベレトから返信が来ていた。
夢子「あ、先生今来るって。」
アルフレはつまらなさそうな顔をする。
アルフレ「君との二人だけの時間が終わっちゃうなぁ?」
夢子「貴方こんな大怪我してるのに眉一つ動かさないのね。」
アルフレ「君が手厚い看護してくれたから。」
血で滲む布を巻いた痛々しい脚を見て夢子は言う。
夢子「‥‥ごめん。」
アルフレは不思議そうな顔をしている。
アルフレ「何でそんな悲しそうな顔するの?憎い僕が痛い目見て爽快じゃないのかい?」
夢子「普通の人間はそうは思わない。状況が状況だから。」
アルフレ「僕なら嫌いな相手が怪我して弱ってたら徹底的に嫌がらせするけどなぁ?
あ、もしかして、君ほんとは僕の事嫌いじゃないんじゃない?」
夢子「嫌いよ。ダイキライ。」
アルフレ「ふーん。少しは脈ありかと思ったんだけど。」
夢子「…でも、本当に死ぬのかなってさっき脚が全く動かなかった。」
アルフレ「そういうもんなんじゃない?恐怖で足が竦む。貧弱な君ならあり得ることでしょ。」
夢子「貧弱貧弱って…貴方どのくらい私を馬鹿にしたら気が済むの!?」
アルフレ「だから、守りたくなるんでしょ。キザだよね、もうひとりの僕も。」
夢子は再びスマホを見る。
ベレトから追伸が来ていた。
夢子「あとちょっとだけど渋滞に巻き込まれてるって。」
アルフレ「ラッキー☆」
夢子「はぁ!?」
アルフレ「僕はもう少し君とこうしていたいから。」
夢子「・・・。」
アルフレ「ねえ、夢子。」
夢子「何?」
アルフレ「もう少し顔、近くで見せて?」
夢子「!!!///」
アルフレ「あー、僕足痛いかも。折角庇ったのに、痛いのは嫌だよねぇ。」
夢子「なっ…!!!///」
アルフレ「君がもっと傍に来てくれたら、痛みも軽減すると思うんだけどなぁ?ね、夢子。」
夢子(こ…コイツ…!!今の立場利用し始めた…!!)アルフレはまた普段通りニヤニヤ笑っていた。
そして夢子を手招く。
夢子(…怪我人だし今日は私に変な事出来ないわよね?)
夢子は少しずつアルフレと距離を縮める。
アルフレ「んー?もっと近くに来なよ?」
夢子「身の危険を感じる…。」
アルフレ「僕こんなんだし、大丈夫だよ?」
夢子「信用できない。」
アルフレ「大丈夫だって、ほら」
そういうとアルフレは手の届く範囲にまで近づいた夢子の腕を掴むと
思い切り自分の懐に引き寄せた。
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