クレーン車が工事中のビルにあげていた鉄筋の数々が
夢子の上空から降ってきた。
こちらへ目掛けて降ってくる。


夢子の顔から笑顔が一瞬で消える。


【痛いの痛いの飛んで逝け。2】


夢子(どうしよう…あれ…?足が動かない…何で…)


逃げ遅れる夢子。
鉄筋が容赦なく彼女に降り注ぐ。



ガシャガシャッ!!!ガシャンガシャン!!ゴンゴンゴン!!


土煙が上がる。
鉄筋が地面を貫通して突き刺さっている。
どれほどの威力か想像出来る。
夢子はというとー・・・

無事だった。

彼女は鉄筋の落下地点から20mほど先に居た。

夢子(…あれ…!?私なんで…!?動いてないのに…)


夢子ははっ息を飲んだ。




目の前にあの男がいたから。



夢子「貴方…何で此処に…!?」

そう、アルフレだ。
夢子の目の前に立っていた。

夢子「偶然…な訳ないわよね…貴方だもの。また何か企んで…」
アルフレ「酷いなぁ?今日は君を助けたのに。」
夢子「…!?貴方が…私を??!!」
アルフレ「じゃあもう行くね。僕は君たちと違って忙し…

     …ウッ。」


夢子は去ろうとするアルフレを見てて気が付いた。
彼は脚を引きずっていた。


夢子「貴方…怪我してるじゃない…!?」


そう、アルフレは脚から血を流していた。
真っ赤な血思いの他量が多く地面へとボタボタ流れ落ちる。
重症だった。


夢子は声なき悲鳴をあげる。

夢子「…もしかして私を庇った時に…!?」

アルフレ「…さあ、どうだろね?ッ…」
夢子「動かないで…!!今救急車を…」

するとアルフレは首を振る。

夢子「え…なんで…!?」

アルフレは意外な答えを言う。

アルフレ「僕、保険書とかマイナンバーカード未所持なんだ。」
夢子「…メタいって言うか…意外な理由ね…。」
アルフレ「だから病院には行けない。」
夢子「そんな…でもこのままじゃ…。
        ちょっと待って!何か血を抑える物…
  
        ルフレには悪いけど…そうだ、コレ使おう…!」

夢子は先ほど買ったプレゼントの本を包んだ綺麗な布を解いた。
そしてアルフレの脚をその布で包む。

アルフレ「別にこんな事しなくていいのに。綺麗な布、汚れるよ?」
夢子「良いから黙ってて。集中力欠けちゃう。」
アルフレ「君…僕の事キライなんだろ?」
夢子「そうよ?ダイキライ。」
アルフレ「だったら何故?僕の事なんか放っておけばいいじゃないか。」
夢子「怪我人を放置するなんて、そんなことできないから。」
アルフレ「君はお人よしだね。その優しさがいつか身を滅ぼすよ?」
夢子「大怪我してる人が何言ってんだか…よし、とりあえず傷口は抑えたから出血も時期止まるはず。」
アルフレ「・・・。」


アルフレは夢子の顔をじっと見た。

夢子「な、何よ…私の親切が嫌?」
アルフレ「人間って面白いね。結局誰が何考えてるかその人しかわからない。」
夢子「貴方だって人間でしょう?一応。」
アルフレ「僕とルフレは人間モドキだけどねー。」
夢子「はあ、もう日本に来たからには皆一緒よ。例え向こうの世界がどうだろうが。」
アルフレ「フフフ・・・・。」
夢子「何…また気持ちの悪い笑み浮かべて。」
アルフレ「ルフレの気持ちが分かったよ。」
夢子「は?」
アルフレ「君のこういう所に惚れたんだろね。貧弱な癖に意思は強くて行動的で魅力的で…危なっかしいから放ってはおけない。」
夢子「それ…私を馬鹿にしてるの?」
アルフレ「どうかな。」


夢子はアルフレの肩を組んで近くの日陰へと移動した。
兎に角応急処置は終えたので安静にしなければいけない。

夢子「先生に連絡入れるね。」
アルフレ「すぐに来てくれないと思うけどね。」
夢子「何で?同居人でもあるでしょ?」
アルフレ「あの人一応公務員だからね。大人は忙しいんだよ。」
夢子「‥‥とりあえずライン送っておいたから…あとは待つだけね…。」


夢子とアルフレのふたりは距離を取って座った。
気まずい時間が流れ始める。



【いいね!!】


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