涙で霞む瞳に夢子は人影を見た。
それはこちらへと歩いてくる。
長身で、青い髪で、この世界では眼鏡をかけてて滅多に笑わない。
学校で毎日見るあの人だった。


夢子「…せ…ん…!?」


そこにはなんと夢子のクラス担任のベレトが居た。
今まで見たことの無い険しい顔でこちらへとやってくる。


ベレト「…お前たち、何をしている??」


【その怒りは天地を反転させやがてその血に流れし紋章は狂気を呼び覚ます2】


男たちは夢子を襲う手を止める。

男1「ああ?!なんだオメーは。」
夢子「先生!!助けて!!沙羅が酷い目に…!!」

涙目で助けを求める夢子を見てベレトは思う。

ベレト(自分が酷い目に合ってるのに他人の事を心配するとは…)

男1「あぁ?先生だって?」
夢子「そうよ、先生。私の担任!」

一瞬ぎょっとした男たちだったが、すぐに余裕を取り戻し男1と男2はベレトに絡み始めた。

男1「せんせー(笑)が一人で何しに来たんだぁ?」
男2「自分のかわいい生徒がピンチだから助けに来たん?」

ベレト「…そうだが?」

男1「クハハハハ!泣かせるねぇ!?そんなヒョロそうな身なりで何が出来る?」

ドカッッッ!!!

男1は拳を思いっきりベレトの顔面へとブチかました。
ベレトは壁に叩きつけられる。

壁に寄り掛かったベレトをすぐさま男2が襲い掛かる。
ベレトのネクタイを掴み持ち上げると再び拳を振り下ろす。

ドカッッッ!!!

夢子は悲鳴をあげる。
そんな夢子も男3と男4に捕まれ動けない。
夢子は号泣する。

夢子「やだやだ…先生…もういいよ、先生は何も悪くないのに…!!やっぱり逃げて!!」

男3「おっとお嬢ちゃん、よーく見ておくんだな?オトナを怒らせたら怖いって事じっくり教えてやるからよ?」

男1と男2は倒れたベレトの腹部に蹴りを入れ始めた。


ドカッドカッドカッ!!



男1「クハハハハ!!折角のイケメンが台無しじゃねーか?せ、ん、せ、い!!」
男2「なあ、コイツも動画に撮ってやろうぜ?」
男1「お、いいな!イケメン教師の情けない面、全国にばら撒いてやろうぜ!」

夢子「…一体何を‥‥!?」

ベレトは男たちを睨みつける。
その目に恐怖や絶望は全くなかった。

ベレト「‥‥。」

男1「コイツ反省してないっぽいな?」
男2「こういう奴には暴力よりも…」

男1は倒れてるベレトのワイシャツを破った。
そして高らかな笑い声をあげる。

男1「大事な生徒ちゃんの前で、ボコられて脱がされて動画に撮られる気持ちはどうだー?」
男2「ん−?ヒョロいと思ったが意外と腹筋割れてんだな?くそ、イケメンでスタイル良いとかこういう奴マジ嫌いだわ。」

ベレト「‥‥。」

男2「つーか、コイツ全然怯まねえな‥。あんだけ蹴り入れたのに…。」

夢子「もういいよ…先生には何もしないで!!私が…私が何でもするから…!!」

男3「何でもっていったなお前。(ニチャア)」
男4「じゃあ後で俺等の相手してもらうから、お前はそこでじっと先生の情けない姿見ているんだな!?」
夢子「解ったからもう…これ以上暴力振るわないでよ…!!」

夢子はベレトを見る。
ベレトの表情が見えない。

男1「さあ、コイツもっと痛め見ないと駄目っぽいな?」
男2「ズボンも下ろして下半身丸出しにして動画撮ってやろうぜ!」
男1「イケメンだけどポークピッツかもだしなぁ!?ゲハハハ」


夢子「…!!!」


夢子は絶望していた。
沙羅は気絶するまで殴られて
ベレトも仲裁に入ろうとしただけでこんなにも酷く惨い事になっている。
今、彼女の目の前にナイフがあったのなら
彼女は絶望に飲まれその刃で首を斬るだろう。

夢子はそれでもずっとベレトを見ていた。
何か、奇跡は起きないのだろうか?


否、
それは突然起きた。


男がベレトのズボンを脱がそうとした時だった。
ベレトのスマホがズボンに入っていたのだ。
ブーブーとバイブが鳴る。

男は勝手に取り上げてスマホを開く。


男1「なんだぁ?うるせースマホだな。今から良い所なんだからよお…」

すると突然スマホから音声が響く。



《権限を 解除 しました。》



男1「ん?なんだ権限って…」


次の瞬間、男1の目の前に広がったのは血の海だった。


男1「…な…!?」




そこには権限のリミッターを外した蒼髪の教師がいた。
実はスマホの合図はアチラの世界のマスターからだった。

《権限》ー・・・・
それはベレトがこの世界に降臨するにあたっての条件。

彼はあまりにも力加減が出来ないのでマスターは普段《権限》を掛けて
ベレトの力の制御をしているのだ。
その力はこの世界でも尋常を超えている。


要するに・・・


ベレト「…これで、やっと、少しは本気が出せる…。」


拳の関節の音を鳴らし首回す。

そう、
この男は、怒らせてはいけないタイプだったー・・・・



そんな事とは知らない男は今までとは違うベレトの気迫に震える。




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