夢子は慌てる。
つい大声を出してしまった



夢子「私のキーホルダー!!」





【大切な物ならばいつだって守らないと駄目だよ。2】


夢子の声が路地裏に響く。
クロネコは驚いて奥へと逃げて行ってしまった。


夢子「ま、待って!!!」

夢子も負けじと追いかける。
ビルの路地裏は入り組んでいて障害物も多い。
夢子はそれでも身軽に逃げるクロネコを追いかける。
暫く追いかけてクロネコは屋根の上に登ってしまった。
夢子も登ろうと柵を上がる。

クロネコは夢子を見つめていた。
この人間はしつこいなぁとでも思っているのだろうか。
夢子は屋根に上がった。
そしてゆっくり、そっとクロネコを驚かさない様に近づく。

クロネコまであと3m…


と、その時だった。


ミシミシミシ…



不穏な音が夢子の足元から響く。

夢子「…え?」


次の瞬間、


バキバキバキバキッ!!



屋根に穴が開き夢子は転落してしまった。

夢子「キャアアアアア!?!?」

夢子は悲鳴をあげる。


そして落ちた場所は‥‥夢子にとってはとても悪い場所だった。
そう、そこは・・・


ヤクザ1「おい…一体何なんだぁ!?」
ヤクザ2「コイツ上から降ってきやがった!」
ヤクザ3「反組織のスパイかぁ?!」


そこは、ヤクザの事務所だった。
夢子はそんな最悪な場所に一人転落してしまったのだ。

夢子「うう…何でこんな目に…」

ヤクザ1「親分、この女どうします?」
親分「まあまあ落ち着け。こんな非力そうな女どうとでもなる。
   それより…中々の美人じゃねーか。」

グヘヘ的な顔をするヤクザたちを見てすぐ危機感を感じる夢子。

夢子「…すいません、間違って来ただけなので帰らさせていただきます、さようなら。」
親分「此処がどういう場所で自分の立場が今どうなのか、わかっているか?」
夢子「解りません。さようなら。」
ヤクザ1「この女、難しそうですよ?」
親分「ククク、そういう女ほど壊しがいがあるってもんだ。」
ヤクザ2「流石親分!!」
親分「お前ら!この女を隣のビルの個室に隔離しておけ!…手荒な真似はするなよ?まだ、な。」
ヤクザ1「ヘイッ!」


夢子「ちょっと!?何すんのよ!離して!!私はキーホルダー取り返さないと行けないの!!」


ヤクザたちは騒ぐ夢子の腕を掴んで無理やり引っ張って個室に連れて行った。



ヤクザの親分はゲスな顔をする。







夢子は個室に閉じ込められてしまった。
様々な大きさのダンボールが積まれており埃っぽい。
出口の扉を叩いてドアノブをガチャガチャと動かすが
外か鍵を掛けられてしまったようでビクともしない。
それに見張りも付いているようだった。
夢子は憂鬱になって泣きそうになる。

夢子「何で…こんな…」

すると、聞き耳を立てているわけでもないが見張り役のヤクザ2人の話し声が聞こえてきた。

ヤクザ1「そういえば、親分の車のボンネットの中に猫が子供産んでたってな?」
ヤクザ2「ああ、あれか…冬だし温かくて安全だと思ったんだろなあ。ほんと馬鹿な猫だぜ。」
ヤクザ1「あれ、その後どうなったんだ?」
ヤクザ2「あーあの子猫…親分が全部海に沈めてきたって言ってたぜ?」
ヤクザ1「人にもやるが猫にも容赦ねーなうちのボスは。」
ヤクザ2「そしたらその猫の母猫だろうな、ずっとこの辺うろついてるらしい。」
ヤクザ1「そうなのか?まあ、子供全部殺されちゃたまったもんじゃ無いわな。」




ヤクザ2「あのクロネコも大変だな。」






その話を聞いてしまった夢子は息を止める。

夢子「…さっきのあのクロネコはもしかして…」

ヤクザ1「おいオンナ!!!親分がお呼びだ!出てこい!」


夢子は個室から連れ出された。
手は後ろに結束バンドで縛られる。

そして、夢子は親分の居るという部屋へと連れていかれた。
今までいた場所とは違うビルに入りエレベーターに乗せられる。
50階でエレベーターは止まる。最上階らしい。
そして一番奥の部屋に連れていかれる。
大きな頑丈な扉が開かれる。

紫のライト、ピンクのカーテン、シルク生地シーツで包まれたキングサイズのベッド・・・


そこは、明らかにー・・・


夢子はヤクザの子分たちに部屋の中に突き飛ばされた。
入ってきた扉は勢いよく閉まる。

夢子は直ぐ扉へ駆け寄ったがどうすることもできない。

振り返るとベッドの上で先ほどの親分らしき人物が半裸の状態でいた。
こちらを見てニヤニヤしている。

夢子「あの…帰りたいんですけど。」
親分「帰りたいだと?この状況を理解していないのか?」
夢子「違うんです、私スパイとかなんでも無くて…」
親分「じゃあどうして屋根から降ってきた?こちらの機密情報を探していたんだろう?」
夢子「違うんです…お願いします…返してください…」
親分「折角こんなに良い女が手に入ってやすやす返す訳ないだろう?」
夢子「…私に手を出せは…大変なことになりますよ?」
親分「おうおう?強気だねぇ、やっぱりバッグに組織がいるんだろう?」
夢子「だから、私はー…!!」


ヤクザの親分は夢子を掴んでベッドへと放り投げた。

夢子「キャアアッ!?!?」

夢子は思わず悲鳴をあげる。


親分「ククク、その傲慢な態度は何処まで持つかなぁ?さあ、夜は長いよ?」

親分は夢子の制服のボタンを外し始めた。

夢子は身体をうねらせ抵抗する。
この状態はヤバイ。間違いなく。

親分「手を縛られちゃ何もできないよなぁ?!それにしてもデカイ胸だ…ハアハア。」

親分の臭い息が荒く夢子の顔に掛かる。

夢子「やめて‥‥」

親分「此処まで来て止める馬鹿はないなだろ?さあ、大きなおっぱいを俺様に捧げるんだ!!」


夢子「イヤアアアアアアア!!」

夢子が悲鳴をあげたその時だった。


ジリリリリリリリリッ!!!


突然ビル中の火災探知機が作動した。

親分「何!?何が起こった!?」

夢子を掴む手が放れる。
震える夢子。

親分は子分を呼びに部屋から出て行った。

火災探知機はまだなり続けている。
一人怪しげな部屋のベッドの上で涙を流す夢子。

バリンッ!!!

そんな部屋の窓が割れた。
夢子は恐怖で動けない。

夢子の絶望で潤んだ瞳に入ってきた姿は
黒い髪の赤い瞳をした
自分の大好きな人と同じ姿の別人。


アルフレだった。


アルフレ「アハハ、君…また楽しそうな事してるね?」

いつも通り笑うアルフレ。
何故此処に彼が居るのか気になるだろうが
夢子は恐怖で何も言えなかった。
ただ、一言、この男にすがるしかなかった。



夢子「‥‥助けて…」



夢子は声なき声で呟いた。






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