【大切な物ならばいつだって守らないと駄目だよ。1】


放課後。
学校のチャイムが響く中、夢子は帰宅する準備をしていた。
机の中から筆記用具やノート、教科書をカバンに移す。
するとそこに沙羅がやってきた。

沙羅「夢子、ごめんね、今日これからバイトあって…」
夢子「あーそういえばそう言ってたね。」
沙羅「…一人で帰るの、大丈夫?」
夢子「…?」
沙羅「ほら、最近誰かが後ろから着けてる気がするっていってたじゃない?」
夢子「うーんそうだけど…私の勘違いかもだし。」
沙羅「アンタ、色んな悪い奴に目つけられるから心配なんだよね。大丈夫?」
夢子「家にさえ変えればルフレ達いるから…」
沙羅「道中気をつけなさいよ?じゃあね!」
夢子「うん…なるべく人が居る場所歩くよ。」


夢子は駆け足で教室を出ていく沙羅を見送ると再びカバンに道具を入れた。
そしてある事に気づく。


夢子「あれ…無い…!?」

そう、

夢子が大切にスクールバックに着けていたキーホルダーが無くなっていた。

それは休日にルフレとゲームセンターで遊んでいた時にルフレに取ってもらった小さい猫のぬいぐるみのようなキーホルダー。
1時間前にカバンを見たときには確かにいつもの定位置にあった。


夢子「…おかしいなぁ、何処かに落としたのかな?大切な物なのに…」

夢子は教室中を探した。
クラスメイト達は全員居なくなり日が暮れていく。
どんなに探しても見つからなかった。
夢子はため息を付く。

夢子「どうしよう…無くしたって知ったらルフレきっと怒るよね…」

すると、突然背中を叩かれる。
驚いて振り向くとそこには笑顔のアルフレがいた。


夢子「…何?」

夢子は潮対応をする。
コイツに関わるとろくなことがないのは痛いほどわかる。
夢子は再び机の下を探す。

アルフレ「…冷たいなぁ。僕君に何かしたかい?」
夢子「…いつも嫌な事ばかりしてくるの自覚ないの?」
アルフレ「何を言うんだい?僕は君に深い愛情を注いでるだけだよ?」
夢子「はあ、また始まった‥‥」
アルフレ「あれ?何か探し物?」
夢子「貴方には関係な…ハッ!!もしかして…」


夢子は立ち上がりアルフレを睨む。

夢子「どうせ、また貴方が犯人なんでしょ?いい加減にして。」
アルフレ「…何の事?」
夢子「しらばっくれて、私騙されないわよ?
        そうやってまた私に嫌がらせする気でしょ?!」
アルフレ「…君、何か勘違いしてない?」
夢子「早く返して。」
アルフレ「返す?何を?ああ、君に返すモノ…ねぇ。」


怖い顔で睨んでくる夢子の腕をアルフレは強引に掴んだ。
そして自身に引き寄せようとする、が


パチン!!!



夢子は咄嗟にアルフレの手を振りほどいた。

アルフレ「…痛いなぁ。」

夢子「何すんのよ!!??」

アルフレはいつも通りニヤニヤ笑う。

アルフレ「君が返してって言ったでしょ?だから、うーん‥‥」
夢子「意味の分からないことしないで!?貴方ほんと頭おかしいわよ!」
アルフレ「たまにはマゾヒストの気持ちを体感するのもいいね…フフフ。
     でもやっぱり僕は叩かれるより叩く方が好きさ。
     でもこれで、君に仕返しをする口実が出来た。」
夢子「もういい、私帰る。」
アルフレ「家まで送ろうか?」
夢子「結構です!」
アルフレ「フフ、君ってホント可愛いよね。ルフレの奴の目の前で甚振ってやりたいよ。」
夢子「さようなら。」



夢子は道具を詰め終わったカバンを持つと足早に教室から出て行った。
アルフレは薄笑いをしながらその背中を見送っていた。









夢子は校門から出た。
今は冬なので日没時間も早い。
もう夕日が沈みかかり辺りは薄暗くなっていた。

夢子「はぁー…寒いなぁ。マフラーしとこ…。」

夢子は真っすぐ家に向かう事にした。
早く帰って温かいご飯を食べてコタツでだらだらと過ごしたい。
この時期皆考える事は一緒だ。

夢子は駆け足で道を歩く。
少し身体を動かすと代謝が良くなりポカポカしてきた。

夢子「今日の夕飯何かな。確か今日はリンクが担当だったかな?楽しみだなぁ…」

すると夢子はふとビルの路地裏に目がいく。
その時だった、


突然ふたつの黄色い何かが光った。

夢子「な、なに!?」

夢子はびっくりする。
心霊系は得意ではない夢子?震える。

でも、数秒経って落ち着いてみたら正体がわかった。
それは一匹のクロネコだった。

夢子「なんだ…猫かぁ…ふう、びっくりしちゃった。おいで?」

クロネコはこちらを警戒している。
そしてクロネコを見つめていると夢子はある事に気づいた。

このクロネコ、何かを咥えている・・・・。



夢子はそっと、ゆっくりクロネコに近づく。
クロネコは後退りする。
夢子は気づいてしまった。





無くしたはずの夢子のカバンのキーホルダーをクロネコが咥えていることに…




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