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夢子「あ…」
沙羅「どうしたの夢子?」
平日の学校の朝。
夢子は鞄の中を漁り、ある事に気付く。
夢子「いけない…提出する宿題の文章書いたノート家に忘れちゃったみたい…。」
沙羅「宿題サボってるわけじゃないし、言い訳したらあの先生なら許してくれるんじゃない?」
夢子「いや…今ならまだ間に合うかも。走って取りに行く!」
沙羅「…そう?じゃあ気を付けて。あ、そうそう。最近変質者まがいなのがいるらしいから、尚更気を付けないと。」
夢子「うん、ありがと沙羅!」
【僕の中では筋が通ってるからいいの。】
夢子は学校へいく道を走っていた。
手には家に忘れたノートをしっかりと抱きしめて。
夢子「‥よかった、このまま走って学校に戻れば…」
そして道の角を曲がった、その時だった。
夢子「!?」
夢子は急に電柱の裏から伸びた手に引き寄せられた。
アルフレ「やあ、夢子。おはよう。」
そこにはアルフレがいた。
夢子「アルフレ…!」
アルフレ「君がこんな時間にこの道にいるなんて、珍しいね。」
夢子「…私急いでるの。あっちに行って?」
アルフレ「そんな冷たい事言わないでよ。これから学校サボって僕と遊ぼう?」
夢子「誰が貴方なんかと…」
すると、次の瞬間。
バシャッ!
夢子「…え?」
夢子の視界は一瞬オレンジ色になった。
アルフレが片手に何かを持って笑っている。
夢子「一体何を…」
アルフレが片手に持つのはオレンジジュースの入ったペットボトル。
そう、
夢子はアルフレに頭からオレンジジュースをかけられたのだ。
夢子「…!!!何すんのよ!!」
アルフレはニヤニヤしている。
アルフレ「ああ、やっぱり君じゃないとダメだ…。」
夢子は思い出した。沙羅が言っていた不審者のことを。
沙羅『その不審者ね、女の子ばかり狙って急に後ろからオレンジジュースかけて逃げるらしいわよ。』
夢子はアルフレを睨む。
夢子「貴方が不審者の正体ね…?」アルフレ「不審者?僕は楽しい遊びをしているだけだよ?」
夢子「皆困ってるのよ?なんでこんなことするの!?」
アルフレ「新しい快感がほしいだけだよ?…でも色んな子にやったけど…やっぱり君がいい。
ねえ、今から僕とオレンジジュースに溺れない?」
夢子「はぁ!?馬鹿なのアナタ。」
アルフレ「君が限界までオレンジジュースを口に含むんだ。僕が息してって言うまでずっと息止めて。苦しくて甘くて楽しいだろ?」
夢子「貴方…やっぱ頭おかしい。…付き合ってらんない。私もう学校戻るから。」
夢子がその場から離れようとしたが、アルフレは夢子の腕を掴み離そうとしない。
夢子「…離してよ。」
アルフレ「嫌だと言ったら?」
夢子「叩くわよ…?」
アルフレ「たまには君に叩かれるのもいいかもね。」
夢子「変態なの?」
アルフレ「男は皆変態だよ?君の周りの剣士達だってそうさ。皆下心の塊みたいなもんさ。」
夢子「ルフレと貴方は違う…。」
アルフレ「アイツと比べられるのは心外だなぁ?…僕の方が魅力的でしょ?」
夢子「貴方はもっと思いやりの精神を学ぶべきよ…。」
アルフレ「‥‥思いやり?」
夢子「そうよ。相手の嫌がる事ばかりするのは間違ってる。全部自分の為なんでしょ?」
アルフレ「そうだよ?それの何が悪いの?」
夢子「はぁ…貴方には何言ってもダメなのね。以前から何も変わっちゃいない。」
アルフレ「僕の中では筋が通ってるからいいの。それじゃあダメなの?僕は僕なんだ。
…君だって変われと言われて直ぐ変われる?」
アルフレが夢子に顔を近づける。
夢子は持っていたノートでアルフレの顔を押しのけた。
一瞬怯むアルフレ。
その隙に夢子は握られていた腕を振りほどき走り出した。
夢子「貴方なんかキライ。」
夢子は全力で走った。
後ろは振り返らなかったがアルフレが追ってこないのは分かった。
学校へ着き教室へと行くと丁度朝礼が行われていた。
ベレト「夢子、どうしたんだ?全身濡れているようだが‥」
ベレトは夢子の異変に気付く。
夢子「ちょっと不審者に絡まれて…」
沙羅「ああ、やっぱり夢子もターゲットにされちゃったのね?」
アルフレ「へぇー大変そうだね。こんな酷い事するの一体誰なんだろね?」
夢子「!?!?」
聞き覚えのある声のする方へ視線を向けると
そこには置いてきたはずのアルフレがいた。
黒い笑みでニヤニヤ笑っている。
夢子「なんて…?私が先に学校に着いたはずなのに、なんで教室に…」
夢子は青ざめた。
アルフレは微笑む。
そして誰にも聞かれない音量の言葉を放つ。
アルフレ「また、柑橘の海に溺れようね?」
夢子にもその声は届かない。
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