【努力は必ず報われるわけではないと、知っていたつもりだったけれど。】



そこは城から少し離れた丘の上。
アイクは空を見上げていた。
空には2匹の鳥が飛んでいる。
吹き抜ける風が心地よい。
目をゆっくり閉じて眠りにつく寸前。
彼は声を掛けられる。



夢子「アイク、何してるの?」

夢子だ。
その場にいる事に驚くアイク。

アイク「…夢子か。どうしたんだ?」
夢子「どうしたの?って私も貴方に聞きたいわ。
      皆剣術を磨く練習してるのに昼寝してるなんて驚いたの。」
アイク「ああ、稽古か。…ああやってずっと同じことしてるの性に合わなくてな。
    こうして空を見てる。…雲が白くて日本で食べた綿あめを思い出すな。」
夢子「アイク日本の食べ物大好きだったもんね!」
アイク「どの世界のどの食い物もうまいが、やはりスイーツ系は日本に勝てる国は無いな。」
夢子「そこまで言っちゃう!?」
アイク「断言できるな。」
夢子「フフフ、貴方って面白いわよね!なんだか皆とは少し違う感性持ってる感じがする。」
アイク「褒めてるのか?」
夢子「んーどうなのかな?」
アイク「…こういう時は嘘でも褒めてるって言って欲しいな。」
夢子「でもこの世界ってほんと不思議よね。驚きの連続。」
アイク「日本に来た俺たちファイターの気持ちだろな。」
夢子「まあそうなのかな?」


アイクは再び空を見る。
2匹の鳥はまだ飛んでいる。
仲良さそうにぐるぐると空を舞う。


アイク「あの鳥はつがいなのだろうか。」
夢子「そうね、仲良さそうだしそうなのかもね?」
アイク「…あの鳥が羨ましい。俺は人間だが…鳥に負けてる気がする。」
夢子「???」
アイク「こうしている間も俺以外のファイターは努力しているのだろう。
    でも俺は努力が必ず報われるとは思っていない。」
夢子「どういうこと?」
アイク「運命って、決まっているのか?」
夢子「私は運命は自分で勝ち取るものだと思ってるわ。
      でもきっとどんなに頑張っても勝つときは勝って負ける時は負けるのでしょうね。」
アイク「…そんなもんなのか?」
夢子「ここに吹き抜ける風に揺れる花々たちのように
      自然に身を委ねて時に流されるのもいいのかもね。」
アイク「そういう考えはなかった。」
夢子「アイクの考えも私は否定しないよ!
      考え方は人それぞれでしょうからね。」
アイク「一つ、聞いていいか?」
夢子「何?」
アイク「俺とルフレはどう違う?あいつに足りてて俺に足りない物はなんだ?」
夢子「え、どうしたの?急にそんな質問…。」
アイク「今後の為にも、自分自身の為にも聞いておきたい。」
夢子「二人とも違う良い所、沢山あるよ?数えきれないくらい。」
アイク「お前は優しいな。俺たちが傷つくような言葉を出さない。」
夢子「寧ろその辺の一般人に比べたら月とスッポンよ?
     私はそんな凄い人達に囲まれて暮らせてる幸福感で潰れそうなくらい。」
アイク「俺も以前は毎日が退屈だった。戦って、傷ついたら休んで、また戦って、傷ついて。
    存在理由が段々わからなくなって。
    でもお前を知って色んな物が見えた。知れた。
    だからこの運命は俺にとっては掛け替えのないものだ。」
夢子「アイクがそう思えるのなら、きっと言い経験になったね!」
アイク「ありがとう。」
夢子「ど、どうしたの急に改まって。」
アイク「さて、俺も少しは身体動かすか。
    あいつらに夢子と二人きりでいるの見られたらうるさくて構わんしな。」
夢子「やる気でたのね!あ、そうだ、おまじないしてあげる!手のら貸して?」
アイク「?」

夢子はアイクの手平に幸という字を10回書いた。
そして笑顔でアイクを見る夢子。

夢子「これで貴方には幸せがやってくる。頑張れるわよ!」
アイク「夢子…。」
夢子「何?…あ、気に入らなかった?ごめん…」



アイクは夢子を抱き寄せた。
そして強く抱きしめる。

アイク「夢子、やはり俺は諦めがつなかいらしい。
    こんなの子供のワガママより酷いよな?」
夢子「そんなことないよ。そんなこと言ったら私だって酷いワガママばかり言ってるわ。」






アイク「俺は諦めない。例えどんな強敵が現れても…
     夢子とあの鳥のようになりたい。
    不可能を可能にして証明する。何時になるかはわからんがな。」







鳥が羽ばたく。空はどこまでも蒼く透き通って。




【いいね!!】



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