『7月8日』











今日の日にち。







俺の……誕生日。





ゆっくりと時間をかけて読まれている読経だけが会場に響いていた







所々すすり泣きも聞こえてくるが隊士のほとんどは我慢していたようだった








俺は……涙さえ流れなかった









ただ、ただ、目の前で起こることを見ているだけ。








わかってた








俺達に永遠なんてないことは











わかってた






いつ死んでしまうかわからないと









だからこそ、今この瞬間を大事にするのだと










全部全部……














わかってた



























『死んでくだせェ、土方さん』









違う






死んでほしくなんかない





俺の方へ視線を向けたかった







そのキレイな瞳に、俺だけを映して欲しかった









それでも、













好き














この二文字だけは言えなかった









この関係が終わってしまうんじゃないかって思ったから








ふざけあって、お互い本気じゃないにしろ口喧嘩をして









殴り合って、斬り合って












そんなライバル同士のような関係


















好きだった












今でも












狂おしいほど















愛してる
















無愛想な顔が好きだった







怒ってる顔が好きだった







たまに見せる照れた顔が好きだった







笑顔が好きだった









土方さんのする全ての表情が好きだった










いつか、伝えようと思っていた言葉は











もう届かない












後悔














ただそれだけが俺を支配していた













考えれば考えるほど、ぐちゃぐちゃになっていく脳内











涙が流れないことは逆に俺を苦しめた











悲しむことも、怒ることも、叫ぶことさえ出来なかった












こんなにも死が苦しいものなんて、思いもしなかった












こんな時、傍に居てくれた人がいない














いつも、俺の隣に居た人がいない













それだけで、脆く崩れてしまう


















「土方さん」


















声に、出してみる

















「土方さん」

















いつの間にか振り出した雨に打たれながら


























好き。


























呟いた。
































愛別離苦
[愛する者と死別、生き別れする苦しみ]












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