musing



(ノイメイ独白気味。音波は出てきません)



すりすりとこちらの手に擦りつけられるコンドルの頭を指の腹で撫でてやる。

サウンドウェーブの信号を辿って来てみたはいいものの、今はこの忠実な愛鳥のみを残してどこかの惑星に赴いているらしい。ノイズメイズ自身はサウンドウェーブに対し特に何か用事があったわけでもなく、しいていうならば近くを通った際に信号の名残を掴んだので気まぐれに顔を覗きにきた程度なので別に支障も不満もないのだが、まさかコンドルを残しているとは思わなかった。お前のご主人様にしちゃ珍しいなぁ、と喉元の部分を柔く掻いてやれば甲高い声で鳴いたコンドルが嬉しそうに肩に飛び乗ってくる。サウンドウェーブがコンドルを連れていかない場合といえば比較的すぐに帰還できるような簡単な偵察か、自分の身も危ういほどの危険な任務か、のどちらかだ。


「……寂しいのか」


すとん、と胸に落ちた言葉に不思議そうにコンドルが首を傾げる。この利口な鳥はノイズメイズの言葉が自分への問いかけではないと理解しているのだ。



さて、ここで一つ物思いにでも耽ってみようか。
実際には変に頑固なところのある彼が簡単に故郷への哀愁を捨て去るとも思えないのだが、仮に、もしも仮にサウンドウェーブが何かの理由で復讐を諦めたとしよう。俺はきっと死ぬなぁと心中ひとりごち、ノイズメイズは笑った。ずっと同じものを掲げあげてきた手がいつしか自分の分しかなくなってしまったとしたら、その重さに耐え切れず押し潰されてしまうだろう。運がよければ通りすがりの誰かが気まぐれに手を貸してくれるかもしれない。けれどいつか確実に離されるだろうそれに頼る気なんて微塵もありはしないから、やはりノイズメイズは一人きりで復讐という目的を背負って生きていくしかなくなるのだ。


過去に何度かサウンドウェーブと接続行為をしたことがある。
同じ故郷をもつたった二人の生き残りだから、唯一無二の友人だからなどと言えば聞こえはいいかもしれないが、つまるところ互いに自分以外の他者を信用していなかっただけかもしれない。復讐をと誓ったはずの心は本質的には他惑星のトランスフォーマーたちと何の違いもなく、数多の感情を持て余すことも多々あった。だからこそ当然のように欲は燻るもののそれを発散できるほど信用に値する相手がいなかったのだ、お互い以外には。

幸か不幸か、これまでサウンドウェーブ以外に体を許したことのないノイズメイズには件の相手が自分にとって相応にして特別な部類に入るのだろうことは分かるのだが、そこまでだ。そう思う根拠すらも曖昧なほど”復讐”という大義名分は親愛の情と恋慕の境界をぐちゃぐちゃにしてしまった。はぁ、と溜め息を吐いてコンドルを撫でる手を止める。


片方が放り出せばそこにはもう何の関係性もありはしないのに、閉鎖的友情の脆さをひた隠しにして自分はいったい何を得た気でいたのだろう。ノイズメイズもサウンドウェーブも結局一緒だ。与え与えられる仲など最初から存在すらしていなかった。そこにあるのはただ"生きている"実感が欲しいだけの、お互いを奪い合うだけの共依存のような関係だけじゃないか。

(その証拠に「一緒に死のう」だなんて今まで一度たりとも口にしたことなかっただろ? 俺も、あんたも)



そう思ってしまった時、それを知ってしまった時。初めてノイズメイズは自分がどれほど細く頼りない糸に縋りついていたかを知った。自分が、本当はどこまでも一人きりなのだと、知った。



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