好意を砕くそんな行為



「私は君のそういうところを…好ましい、と、思う」

「おたくがそんな冗談言うなんて珍しいなぁ」


ありがとう。俺もおたくが好きだよ。


いつも通りの笑顔で、いつも通りの声音でそう告げられる。何でもないことのように、その言の葉に特別な意味などありはしないかのように。ウルトラマグナスは自身の中で何かが壊れるような音を聞いた気がした。今まで彼という存在を構築していた一つ一つの要素の中でも、特にウルトラマグナスが大切に奥に押しこめ圧縮していたものが、この瞬間、ばらばらに砕け散りオイルにのって機体を駆け巡っていくような感覚さえした。


「…ウルトラマグナス?」


ロディマスの不思議そうな声で混乱していた意識が少しばかり鮮明になる。今の自分は、おかしい、一度ブレインの稼働を休ませ落ち着くべきだ、と散乱した思考を掻き集めこの場を去る旨を伝えようと青い大型機が口を開くより、先。

顔色を変えたロディマスがその腕を強く引いた。不意打ちのそれに僅かに傾いた上半身にぬっと顔を近づけてきたロディマスはウルトラマグナスの訝しげな視線を無視しそのオプティックへと指を突きつけた。鼻先が触れ合うのではないかと思うほど近距離で顔を寄せられ指を向けられる。そのあまりの唐突さにあんたは何がしたいんだと問いかけたウルトラマグナスの声を遮ったのはまたもロディマスだった。


「マグナス」

「…何だ」

「、…マグナス?」

「いい加減にしろ。だから何だと「泣いてる」…は?」


だから、泣いてる。誰が。おたくが。

簡潔な会話の後、自らの言葉を証明するように目元を拭ってきた赤い機体の指に思わずオプティックが明滅する。

やめろ触るな近づくな私のことなんて放っておいてくれどうせ好きでもないくせに私の望む類の好意なんて最初から持ち合わせていなかったくせにただの仲間だと、補佐役だと、それがさも当然であるかのように受け止めていつだって私の話なんかまともに聞きもしない破天荒さを発揮して一方的に私を振り回して傷つけてなのにそれを知りもしないで、私がどんなにそんなお前を好きか知らないくせに気づかないくせに好きだすきだすきだすきだすきだすきだすきだすきだすきだすきなんだすきなのに届かないんだ届かせたいとも思っていなかったのに何故こんなに悲しいのか分からないんだ所詮は自分一人で抱えきれるような一時の気の迷いかもしれないと自分に好都合な逃げ道を用意していたはずなのにいざその道に逃げ込めると分かった途端に生まれたこの痛みは何だろう苦しさは何だろう涙は何だろう、なぁ、教えてくれロディマス。教えて欲しい。ロディマス、ろでぃます、なぁ、どうして私は今こんな無様な姿を晒しているというのにあんたの前から走り去ることもできないんだろうか。


(口下手まぐなすが精一杯の言葉で愛を伝えたらさらりと流された話)




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