【ファイル集】(ガンサバ2)


『看守長の日記』

人間ヤメるまであと数時間。
これが最期の日記。
こぼれたミルクは戻らない。
そして絶対ミルクを こぼす奴がいる。

案の定この結末、お決まりのバイオハザード。
48時間後には完全にウイルスに染まり、この島の 生けとし生けるものは死に絶えるだろう。
俺だってあと少しでウイルスに操作されるだけの 肉人形に成り果てる。

残された希望は彼女だけ。
無敵の分身、俺のネテ ィシア。
彼女と出会ったのはからっぽの独房。
餌など何もない牢獄に健気に巣を張っていたのが お前だった。
何でお前を気に入ったんだ?
世界の片隅で生き抜 いてる姿が重なったから?

俺はせっせと蛾やゴキブリを捕まえては巣にかけ てやった。
お前が獲物を糸でぐるぐる包み込み、体液を吸い 取っていくさまを見るのが心安らぐ時だった。
どんどん大きくなる姿を見て、俺はネティシアを もっと大きく、強くしたくなった。
そこで廃棄処分された実験体の肉を盗み出して与 えたんだ。

ウイルスの効果はテキメン。
すぐにお前は人ほど の大きさになった。
与えるエサがなくなったら、独房に囚人をほうり 込んだ。
どうせアルフレッドの拷問で殺される運命なのだ 。
多少減ったところでどうという事はなかった。

とうとうお前は独房で暮らせる大きさではなくな り俺は刑務所の天井にお前を解き放った。
天井はネティシアの巣となり、アットランダムに 囚人や看守を貪り食うようになった。
俺の分身を打ち負かせるものなどどこにもいない 。
憎たらしい低能アルフレッドさえお前の牙は引き 裂くだろう。

だがもう終わりだ。
体をウイルスが蝕んでいる。
天井を八本の脚でせわしく動き回るネティシア、 お前の脚音が聞こえる。
あらかた食えるものは食い尽くしてしまったのだ ろう。
渇きがお前を苛立てている。

ネッティ、すべてを殺し、破壊し、貪り尽くせ。
俺が消えるこの世界に何の意味もない。
覗きこむ ように現れる8つの目。
迷うことはない。
渇きの本能に従って、俺を噛み 砕いてくれ。




『アンブレラ査察機関からロックフォート島指揮官 に当てられた書簡』

手短に報告する。
三ヶ月に渡って工作員による内偵を行なっている が、未だH.C.F.のスパイを特定できずにいる。

が、ジュネーブで回収したD書類からすれば、 ロックフォート島公邸内を自由に歩き回れる裏切 り者が潜んでいるのはほぼ確実だ。
発見しだい速やかに処分することを貴兄に約束し よう。

敵側が何を目論んでいるか定かではないが、 H.C.F.側に不穏な空気が漂っているのは確かなよう だ。

盗み出した実験体の複製にも成功したらしい。
当 然その成功にはある男がかかわっている。
貴兄も知っている男だ。

念のため私からプレゼントを送っておく。
合衆国 製のB.O.W.ネメシスT型、 ラクーンシティでの大活躍の最新型だが、予算も 管理も機密費扱いだから足もつかない。
潜水艦で搬入機材に潜ませて送る。
そのため、この化物が島に渡ったことは私と貴兄 以外に知るものはいない。

P.S. ネメシスT型は非常事態を感知した時に自動で 起動するようになっている。
それ以外目覚めさす方法はない。
お守りぐらいに 思ってくれたまえ。




『訓練所の壁に書き込まれた名もなき囚人の最期の言葉』

親愛なる息子よ。 もうじきここはT-ウイルスのせいで壊滅する。
××(掠れて判別不能)××にいた父さんはウイルス の怖さを知っている。

バイオハザードによって一定量のウイルスが拡散 してしまえば、 それを防ぐ手段はない。
体内進入した××××(掠れ て判別不能)××××体を支配し、 さらなるウイルス拡散のため徘××××××××度的に拡 散速度を上げていく。

いまさら許してくれなどいうつもりはない。
おまえが言っているとおりかあさんの死は父さん が招いたこと、それはまぎれもない事実だ。
××××××××××××××××××××××××だってずっとその行いを 悔やんでいる。
何でこうなってしまったのか?何が間違っていた のか?

おまえにとってどうしようもない父親だったが、 父さんは家族を愛して××××××(掠れて判別不能)× ××××××今更嘘などつけない。
過去の過ちをやり直すこともできない。
ただおま えが生き延びてくれることを祈るしかない。

賢いおまえのことだ。
ここに戻ることはないだろ う。
万が一これを読んでいるのなら一刻も速くここか ら立ち去ることだ。
ここはすぐに邪悪な×××××××××××××

もうここに父さんはいない。
愛しているよ、××××× ×




『差出人不明のメール』

エシュロン(ECHELON・フランス語で梯形)が解 読、 発見した差出人不明のメール文章は高度に暗号化 されていた。

国家安全保障局(NSA)が「アレクシア」で検索 させた結果発見されたもの。
ロックフォート島事件の最中に送信されており、 災害と関連性は高いと思われる。

From: 紅い瞳 [SMTP:xxxx@xxxx.ne.xx ]
Sent: Thursday, december 28, 1998 0:59 AM
To: 金色羊
Subject: T-Veronicaと遭遇

報告:
ロックフォート島の作戦行動中、T-Veronica感染者 と遭遇。
死の傘はT-Veronicaを島内に隠蔽していたもよう 。

工作活動による第三レベルバイオハザードにより 島内施設、組織の90パーセントを掌握。
組織的抵抗はすでにない。
感染者はashford家の娘 alexiaに酷似している。

前日22:40地下研究所内で接触、エージェント1小 隊、ハンター改2小隊による 近接戦闘を行なうが3分ほどの戦闘で壊滅。

所見であるが外的攻撃要因に対して極度の適応変 形能力を持ち、 銃弾に対して即座に外骨格化変態を行なうなどそ のポテンシャルは想像を絶する。

さらに環境変化や生命的脅威を与えることよって 、 次なる進化適応をおこなうであろうことは容易に 想像できる。

感染者の血液は大気に触れると発火する性質を持 つよう、 それを利用した血液散布攻撃は、火炎放射機の能 力をはるかに超え、 瞬時に火炎地獄のフィールドを形成する。

我が隊帰還の可能性はゼロに近い。
何故なら感染 者の追撃は、 知的な人間的思考に超絶な攻撃能力を加えた恐る べきものだからだ。
繰り返す。
我が隊帰還の可能性は限りなくゼロに 近い。




『クレアの手記』

いつのまにか眠っていたようだ。
VTOLのターボジ ェット音が私を目覚めさせた。
夢を見ていた。
恐い恐い夢。
体中汗をかいて、未 だ心臓が荒くバクついている。

夢がいつもそうであるように、急にその記憶は消 え去っていく。
残されているのは恐怖と…深い悲しみ。
驚いたこ とに私は泣いていたらしい。

コクピットではスティーブが操縦棹を握っている 。
悪夢はすでにはるか後方。
何を恐れ、悲しむ必要 があろうか。
私たちは絶望と死の島から生還したのだ。

コクピットには柔らかな光が差込み、覆っていた 闇を消し去っている。
広がる海面ではイルカたちが楽しそうに跳ねてい る。
なのに悪夢の残滓が頭から離れない。
少しずつ夢 の情景が蘇ってくる。
それは…あの島の夢だった。

私は現実と同じように戦っていた。
スティーブと 一緒に。
夢は現実と違う方向に進みだしていた。
身の毛がよだつ、私とスティーブの悲しい別れ…。
それはありえたもう一つの未来。

何かが狂えばそのようになったかもしれない。
だけど私たちは運命に勝利した。
握り締めた銃一 つであの地獄から脱出したのだ。
私は悪夢を脳裏から追い払った。

スティーブに声をかける。
空は限りない光に満た されている。
急に空の白さが増して行く。
何故彼は振り向かな いのだろう。
靄のような白。
夢は本当に夢なのだろうか。
私には分からない…

一面、白い世界に包まれていく。
何故彼は振り向 かないのだろう。
現実は本当に現実なのだろうか?
VTOL機の周期的なエンジン音が振り回される巨大 な斧のような風切音に変わりしだいに、 しだいに大きく現実感を持って響きだした。





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