エイダ's リポート


《CHAPTER1 END》

成さねばならない真の目的。
私はそれへの足がか りとして、今回の任務についた。
すべてを終える まで、誰にも真意を悟られてはいけない。
そして 、ただ隠れまわっているだけでもだめだ。
時には 彼らの前に姿を現し、道案内を施す必要がある。

まず、舞台背景について整理したい。
教祖オズム ンド・サドラー率いる教団ロス・イルミナドス、 そして彼らが封印から解き放ったという寄生生物 プラーガ。
現段階で我々「組織」が把握している 情報、サドラーの「秘術」について考察してみよ うと思う。

領主であるサラザール家が代々用いたとされる、 プラーガを操る特殊能力。
我々は、これは音響あ るいは音波による特殊意思伝達法ではないか、と の仮説を立てている。
寄生体のみが感知できる音 域で「命令」を伝え、意のままに操る。
簡単に言 えば犬笛の原理だ。

この説は、独自に入手した寄生体の肉片から、音 を感知するらしき器官が確認されたことから推察 されたものだ。
かつて教団の教祖らは皆、特別な 祭祀用の杖を携帯していた。
これに何らかの仕掛 けがあったのか、あるいは、特殊な音域を用いた 発声法があるのか。
あくまで憶測の域を出ない仮 説のため、確証はまだない。

それら検証も含め、「プラーガのサンプル入手」 は、今回の任務において何よりも優先する事項だ 。
それは「組織」に対して果たすべき私の信頼の 証でもある。
駒は動き出し、カウントダウンは始 まった。もう後には引けない。



《CHAPTER2 END》

様々な思惑が交じり合う今回の事件において、彼 …ルイス・セラの立場は比較的単純だ。
背後に何 らかの組織めいた動きは確認できず、あくまで彼 個人の意思により行動しているものとみていいと 思う。
彼を今回の任務のキーパーソンとして「組 織」に推したのは私だ。
彼の人間性…経歴からに じみ出る「熱意」に、好感を抱いたからだ。

研究施設からの彼の救援要請メールを、偶然傍受 できたのは幸運だった。
どうやら彼は警察組織を 信頼していないようで、メールは大学時代の友人 宛に送られていた。
彼自身はその友人がすでに死 亡していたことを知らなかったようだけれど、と もあれその経路から彼との接触を図ることができ た。

彼はプラーガの研究の合間に、教団の裏側につい ても独自の調査を進めていたようだ。
その一部が メールにも書かれていたが、あらゆる面で真相に 迫る鋭い考察を連ねている。
この観察眼こそサド ラーに買われた能力だろう。
しかしその力は教団 の深部に入り込み過ぎ、サドラーの疑念を抱くこ とになってしまった。

こちらの正体を告げると、彼は身柄の保護を願い 出てきた。
「自分は教団やプラーガになんら未練 はない、ただ安全圏へ逃げ、平穏な生活に戻りた い」…と。
我々は見返りに、証拠物のひとつである 「支配種プラーガのサンプル」を持ち出して寄こ すように命じた。

どうやら彼はサドラーの信頼を得ている数少ない 人物のようでもある。
接触を図って、サンプルを 得ることは比較的容易だろうと目算した。
だが、 彼の逃亡は教団とて放ってはおかないだろう。
手引きをし、ある程度こちらの意図通りに立ち回っ てもらわなくては。



《CHAPTER3 END》

ジャック・クラウザー…この男については、「組織 」も綿密な身辺調査を行ってはいた。
作戦行動を 共にするにあたり、彼の能力や性格に問題がない かをチェックした。
中途半端なスキルでは、仲間 をも危険にさらしてしまう。

結論を言えば、彼は優秀な傭兵で、それ以上でも 以下でもない。
十分な「報酬」を約束する限り、 過不足ない働きをしてくれるはず。
そして仮に不 穏な動きを見せたところで彼の行動パターンはあ る程度読める。

今回の作戦行動は、すべてウェスカーが直々に指 示を下している。
クラウザーに教団にスパイとし て潜入し「サンプル」の入手を命じたのも、私と の共闘を決めたのもウェスカーだ。
これは互いに 監視せよとの意味合いなのだろう。

おそらくクラウザーは、すでに教団で「力」の象 徴であるプラーガの魅力に触れ、陥落している。
その結果、我々「組織」にとって害をなす存在と なることも、遠からず予測できる。
でも、これは ある意味必然とも言うべき展開だ。
彼には「舞台の撹乱」という本来の役割を演じてもらうしかない。

いずれ舞台そのものも、破壊され抹消される運命 にあるのだから…。
彼にとっては不幸だけれど、目 的を達成するための隠れミノとして、しばらくは 今の立ち位置を保持してもらいたいものだ。



《CHAPTER4 END》

レオン・S・ケネディ。
彼の存在は、今回の任務を 完遂するために欠かせないパーツだ。
何よりも、 彼の持つ圧倒的なサバイバル能力がなければ、こ の物語は完成しない。
人外の化け物がうごめく地 獄で、たった一人の力のみで生存し続けるという 難題を、彼は過去に成し遂げている。
それも、訓 練もままならなぬ新米警官の時代に。

常人離れの強運と、それをとっさの判断で最大限 に生かす非凡なセンス。
まさに天賦の才能だと思 う。
政府直属のエージェントとしての経験は、そこにタフさとしたたかさも加えた。
彼には「主役 」として、物語の裏側を引っ張っていってもらう必要があるけれど、それはさほど難しいことでは ないと楽観もしている。

もちろん、サドラーやクラウザーが関わる以上、 不測の事態もある程度は考慮しておかなくてはな らない。
だけど、あくまで私は己の目的のために 彼を「サポートする役」に徹する。
彼を主役の座 から降ろさせないためのサービスも、幾度かは施 すつもりだ。

それにしても…ほんの数ヶ月前までは、この「配役 」は想像し得なかった。
私の役どころももう少し 単純なものだったはず。
大統領の娘の誘拐、その 専属捜査エージェントとしての単独派遣。
物語の 骨格は、レオン介入の事実が判明した時点で修正 され、今の形に整えられた。

でも、私は必要以上の不安は抱いていない。
レオ ンの通る道に、困難はあれど挫折はないと確信で きるからだ。
どんな理不尽な運命にも、彼は抗っ てきた。
その強運が、私を勇気付ける。
私だけが 、未来の明確なヴィジョンを見通せている。
その自信に、少しも揺らぎはない。



《CHAPTER5 END》

小さなほころびは、なんとか取り繕うことができ た。
任務は成功、と言えると思う。
サンプル入手 という当初の目的も無事に果たせた。
ウェスカー には別のプレゼントを贈った。
「組織」の命令だ からだ。
彼との偽りの共謀も、なかなかスリリングではあった。

アルバート・ウェスカー…彼はどこに向かおうとし ているのだろう。
今回の任務を通じ、ほんのわず かその一端に触れた気がした。
私にとってアンブ レラとは、かつては力の象徴、己の野望を実現させる強力な後ろ盾だった。
しかし「傘」は破れ、 幻想は砕かれた。

庇護を失った黒い企みの主たちは散り散りになり 、今また、新たな「傘」を求めてうごめいている 。
彼らは陽の光を嫌う。
自分自身の醜さを誰より 自覚しているから。
ウェスカーは、より大きく丈夫な新しい「傘」をかかげるつもりなのだ。

世界各国の公共医療機関にも薬剤を提供している巨大製薬企業「S」。
ウェスカーがアンブレラ崩壊 後に接触した形跡が確認されている。
彼の次の「 起点」は、おそらくそこだろう。
「組織」ともど も、注意深く見守る必要がある。

しかし、ウェスカーとて馬鹿じゃない。
私や「組織」の思惑を、少なからず理解しているはず。
私 も彼も、互いに泳がし、泳がされている。
それを 愉しむ余裕が、今はまだある。
真の目的への一歩 は、無事に踏み出した。
確実に言えることはひと つ…戦いはまだ終わらない。




7/7


栞を挟む
[back]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -