「っ!どけぇぇっ!!」


ケビンはハンドガンを抜いて、死体にたかるカラス達に向けて乱射した。

カラス達はケビンの正確無比な射撃に、次々と頭を撃ち抜かれて地に落ちてゆく。



だがカラス達が完全に頭を破壊され動かなくなっても、ケビンは壊れた様にハンドガンを乱射し続ける。

空になった薬莢が転がり、もう動かなくなったカラス達の体が着弾の衝撃で跳ねた。





「ケビンっ!もう完全に死んでいるわっ!
これ以上は無意味よっ!」



ヨーコは夢中で叫び、ケビンの腕を押さえた。


止めさせなくては、ヨーコの頭にあったのはただそれだけにだった。

ケビンの異常な行動は、とうとう彼の心に限界が訪れた証拠なのではないか、とヨーコの心に過る。

止めなくては、このままではケビンの心が完全に壊れてしまう……っ!



「あっ………。」


ヨーコに腕を押さえられたケビンは、漸くカラス達が完全に死んでいる事を認識出来たのか、ハンドガンの引き金から指を離した。



緩く吹き付ける風に犠牲者の血に濡れた羽が微かに吹き動かされているが、カラスの体はぴくりとも動かない。

頭部どころか胴体のあちこちに銃痕を刻まれたカラスの体をケビンは、暗い目で見下ろした。



そしてカラス達に啄まれていた死体に近寄る。



「………フレッド………。」


呟くケビンの声には、感情を殆ど感じられなかった。



フレッドという名前のケビンの同僚は、見るも無惨な姿になっている。

眼球は抉られて、開いた口腔内もぐちゃぐちゃの状態だ。
腕も所々骨まで露出してしまっている。



彼と殆ど接点の無いヨーコですら思わず目を逸らしたくなる惨状だ。
知り合いの………それも、親しい間柄であったのなら、見るに耐えないのだろう。


ケビンの感情が消えてしまったかのような瞳は、ケビンの受けた心の衝撃を表しているかの様だった。



ケビンはフレッドから目を逸らし、黙々と辺りに散らばったバーストハンドガン、ショットガン、マグナムハンドガン、マグナムハンドガンの弾薬、ハンドガンの弾薬を回収する。
ヨーコは何も言わずにそれを手伝う。



「ヨーコ………これを持っとけ。」


ケビンが渡してきたのは、バーストハンドガンだった。
使い込まれたそれは、間違いなく生前にフレッドが使っていた物だ。


「ケビン……いいの?
これって…その………フレッドさんの物…だったんじゃ……。」

「………いいさ…。
……ヨーコが生き残る為に…使ってやった方が、フレッドも…喜ぶ…。」



またカラス達が集まろうとしていた。
フレッドの遺体をこれ以上傷付けさせない為に、ケビンは淡々とフレッドへ屋上に落ちていたビニールシートを被せた。




「………行くぞ、ヨーコ、マーク。………次は犬舎だ。」


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