ショースステージ動物舎の扉は中から鍵がかかっているのか、外からは開けられそうに無い。

別の道は無いのか辺りを見回すと、水路へと空いた動物舎の排水孔を見付けた。

排気孔も兼ねているのか、かなり大きい孔だ。

これならばヨーコは勿論、デビットも通る事が出来るだろう。

水路に散らばった木箱を重ねて足場にすれば、手が届く筈だ。


デビットが水路に飛び降りるのに続いてヨーコも梯子を使って降りてくる。

「あっ……。」

ヨーコが水中に何かを見付け、それを取ろうと手を伸ばし、足を滑らせた。


「チッ!」


デビットは一瞬の判断でヨーコの腕を掴み、ヨーコが転ぶのを阻止する。



「……足元位は注意しておけ。」



こんな所で転んではずぶ濡れになってしまう…。
服を乾かす時間も、代わりの服も無い状況では風邪をひく原因になる。


「デビット……ありがとう……。」


そうヨーコは礼を言ったが、その表情は何処か浮かない……。
ヨーコは拾ったマスコットメダルを握り締めて、俯いてしまう。




排水孔からステージ動物舎に入ると、檻の上にメスライオンが居るのを見付けた。

此方に背を向けているからか、まだ気が付いていない様だが……。



デビットはヨーコを手で制し、彼女を背に庇ってショットガンを構えた。
そして慎重に歩を進め、少しずつメスライオンに近寄る。

2メートル程近寄った時、メスライオンの尾がゆらりと揺れた。


「!!」


咄嗟に撃った散弾は、デビットに飛び掛かろうとしたメスライオンを捕らえ、その肉を引き裂く。

肩や顔を抉られてなお、メスライオンはデビットに牙を剥き、跳躍の姿勢を取った。

デビットは間髪入れずにショットガンを撃ってメスライオンを吹き飛ばし、更に止めを刺そうと引き金を引くが。



カチッ、と固い音を響かせただけだった。


「クソッ!弾切れかっ…!」


リロードをしている暇は無い。


メスライオンは体勢を立て直し、再びデビットに飛び掛かろうとしていた。
デビットは、避けられない。


だが。


「デビットっ!」


メスライオンが飛び掛かった瞬間、後ろにいた筈のヨーコが飛び出し、メスライオンを横から突き飛ばした。


空中にいた為メスライオンは大きく突き飛ばされた、が、飛び掛かってきたメスライオンを突き飛ばしたヨーコは、痛めたのか肩を押さえる。

それでも気丈にヨーコは叫ぶ。


「デビットっ!今よ……!」


ヨーコが体を張ってまで作ってくれたチャンスを見逃す訳にはいかない。


デビットは最高速でリロードをすませ、起き上がろうとしたメスライオンの額に銃口を突き付けた。


「…くたばれ。」


頭部を完全に破壊されメスライオンは倒れ伏し、二度と動かなくなる。


この動物舎にはもう他には何も居ない様だ。
しかしこんな場所には長居は出来ない。


デビットは扉を開けて、ショーステージに出た。
ショーステージは不気味な程静かだ。
取り敢えず敵は居ない。


ステージ前には子供用のベンチがあり、デビットはそこにヨーコを座らせた。



「肩を痛めたのか……?」

デビットが静かに訊ねると、ヨーコは微かに顔を曇らせて頷いた。

診たところ脱臼等をした訳では無さそうだが……、……ヨーコに無理をさせる訳にはいかない。

「お前はここで休んでおけ。正門前広場は俺が調べておく。」

「待って……デビット……。一人は…危険よ。」

ヨーコはデビットを引き留めようと、ツナギを弱い力だがしっかりと掴んだ。
そして、何処か必死に潤んだ瞳でヨーコはデビットを見上げる。



その仕草に、その表情に、デビットは強烈な庇護欲を覚えた。


「ヨーコ…無理はするな。…俺は一人でも大丈夫だ。」


ヨーコを危険に晒したくない一心での一言だ。


だが、その一言はヨーコの目に薄く涙を浮かばせてしまった。


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