ところが、事態は凜の予想に反した方へと進んでいた。 ターンテーブルに置き去りにされた訳ではない。 現にターンテーブルはまだ目の前に残っている。 だが、本来ならば辺りに嫌になる程鳴り響いている筈のターンテーブル上昇までの猶予を知らせるアラートが一切聴こえない。 『何でだよっ!!どうしてこれで動かないんだっ!?』 バンッとジムが制御盤に拳を叩きつけている音だけが響く。 周りのヨーコ達には焦燥と絶望が浮かんでいた。 「どうしたっ!?何があったんだっ!?」 凜がヨーコに駆け寄ると、ヨーコは薄く涙をその瞳に浮かべて首を横に振った。 「リンっ!……分からないのっ! 鍵を差したのに、ターンテーブルが起動しなくてっ……!」 まさか………ターンテーブルが故障したのかっ!?と、凜はジムが叩いていた制御盤を覗き込んだ。 制御盤のモニターには、何やら英語が表示されている。 こんな切羽詰まった状況だというのに、英語が理解出来ない自分に凜は歯噛みした。 「何だ……!?何て表示されているんだ……?」 「『セキュリティロックを解除しろ』って。 でも………セキュリティロックなんてどうすれば………!」 (セキュリティロック……!? まさか……あれかっ!?) 凜にはたった一つだけだが、そのセキュリティロックとやらに心当たりがあった。 「っ!ヨーコ……!!私がそのセキュリティロックを解除してくるっ!! ヨーコ達はここを守っていてくれっ!!」 「リン…?何か心当たりがあったの……!?」 「ああ。……恐らくはな。 ………一つだけなら、それに該当しそうな物はある。」 「待って!私も一緒に」 「駄目だっ!!危険過ぎるっ!!」 あのハンター達の群れを突破しなければならないのだ。 足が速く身の熟しも軽い凜一人が駆け抜けるのが一番成功率が高い。 それに。 「それに、ヨーコ達にはここを守ってもらいたいっ!!」 ターンテーブルのロックを解除した所で、ターンテーブルがハンター達に占拠されていては何の意味も無いのだ。 「これを使ってくれっ!」 凜はリュックからショットガンの弾薬を掴めるだけ掴み出し、ヨーコとデビットに託した。 「リン……!こんなに沢山の弾薬を……! あなたの分は……?」 「私はどうにもショットガンの扱いは上手くなくてな、無くても構わない。 今は私よりもヨーコ達の方にこそ必要な筈だ。」 今は一刻もの時間すら惜しい。 凜は来た道を引き返すべく走り出す。 「っ………!…………必ず、無事に帰って来て………! 必ず……、必ずよっ!!」 「その努力は、するっ!!」 足を止める事も振り返る事も我慢して、凜はターンテーブルを飛び出した。 |