★ 培養実験室は、メチャクチャに荒らされていた。 あちこちに物が散乱し、何かが暴れ回っていたかの様だ。 SFにでも出てきそうな巨大な培養カプセルが無惨にも破壊されている。 中に入っていたのであろう液体が床に撒き散らされて、凍り付いていた。 「………これは酷いな……。」 部屋の奥には銃痕を残した研究員の死体が転がっていた。 恐らくはモニカに撃たれたのだ。 ここに保管されていたのであろう《G-ウイルス》のサンプルを奪取されそうになった時に抵抗したのかもしれない。 ………哀れな最期だ。 彼の人となりなんて凜は知らないが、だからと言ってこんな風に殺されなくてはならない訳など無い。 さて………この部屋にハンドバーナーがある筈なのだが。 「……………あった。」 何と…………。 研究員の死体の下敷きにされていた。 引っ張り出そうにも完全に下敷きになっているから中々難しいだろう。 ………少々罰当たりだが、死体の方に退いて貰うしかない。 凜は死体に手を伸ばしかけて、咄嗟に思い止まる。 (いや待て………確かこの研究員はゾンビになっていた筈……。) 凜がそう思い出した時、研究員の死体がムクッと起き上がりかけた。 「!!」 咄嗟に首を踏み潰して倒せたが、後一瞬でも反応が遅れていたら、無傷では済まなかったかもしれない。 (……今のはちょっと危なかったな……。 ……こんな分かりやすい場所のゾンビを一瞬とはいえ忘れていたなんて……、………油断していたのか?) 一瞬の油断が命取りになるというのに………。 ゾンビの下からハンドバーナーを引き抜きながら、凜は静かに反省する。 「………リン?それって………。」 「ハンドバーナーだ。 ………これならあのレバーを動かせるかもしれない。 早くケビン達の所に戻ろう。」 ハンドバーナーの燃料にはまだ余裕がありそうだ。 凍り付いた死体の手を融かす位なら何とかなるだろう。 これで後はターンテーブルで脱出するだけとなった。 だが、ヨーコは何かを言いたそうに一瞬目を伏せた。 「……リンはこれを探していたのね………。 …………あの、………一つ訊いてもいいかしら……。」 ヨーコは迷いながらも意を決した様に凜を見上げてくる。 何か嫌な予感がするものの、凜は頷いた。 ヨーコは恐る恐ると、凜に答を求める。 「………どうして、リンはそれがここにあるのを知ってたの………?」 |