★ 『…チッ。…完全に凍り付いてやがる。………この手を開かせるのは不可能だな。』 『この装置を止めようにもこの手を何とかしねぇといけないって事か……。 ったく……後から後からやらなきゃなんねぇ事が増えていくな。』 いっそ指を切り落とすか、とデビットはナイフを抜いた。 しかし凍り付いた指はとても硬く、ナイフの刃が滑ってしまい中々切り落とせそうには無さそうだ。 …………何か他に手は無いのだろうか? ヨーコもケビン達と共に実験室内を探し回るが、特にこれと言った物は見付からない。 精々壊れて使い物にならなくなったショットガンが転がっているだけだった。 これでは………この低温実験装置を止められない。 行き詰まりかけた時、凍り付いている男に手を合わせていたリンがヨーコを振り返った。 「ヨーコ……すまないがついてきて欲しい。 少し探したい物があるんだ。」 探したい物………?何だろう。 良くは分からないが、リンの頼みを断る理由なんてないからヨーコは了承した。 「ありがとう、ヨーコ。」 リンはほっとしたように微笑み、ヨーコの手を取る。 リンがヨーコを連れてきたのは、培養実験室の扉の前だった。 「この先に行きたいのだが………、電子ロックが掛かっていてな。」 確かにリンの言う様にこの扉には電子ロックが掛けられている。 この先の培養実験室には、この研究施設の中でも最重要とされている物が保管されていた。 《G-ウイルス》。その実験サンプルが、この先にあった………筈だ。 確証は持てないのだけれど。 そんな訳で、許可された者しかこの先に入れないのだ。 しかし、ヨーコはこの先に行ける。 指紋登録されているのだ。 何故かそれだけは覚えていた。 何故自分の指紋が登録されているのか、その理由は分からないのだけれど。 (………それにしても、どうしてリンはこの先に行きたいの? ……こんな所に用事なんて無いのだと思うけど……。) まさか、リンも《G》を探して………? いや、それは無いだろう。 リンがモニカの様に《G》に用事があるとは思えない。 そもそも………リンは《G》なんて知らないだろう。 極一部の人しか知らない筈なのだから。 何はともあれ、リンの為にも電子ロックを解除してあげよう。 『登録者番号53029認証しました。』 ピーッ!!と甲高い電子音が鳴り響いて培養実験室の扉の電子ロックが解除された。 |