★ 『うひゃぁっ!なんだいここっ!!』 『すごく……寒いわ………。』 イーストエリアに入ると、猛烈な冷気が凜達を襲った。 さっきのメインシャフトよりも、更に寒い。 メインシャフトの寒さを肺まで凍り付きそうなものだとすると、イーストエリアの寒さは立ち止まった瞬間に身体全体が凍り付きそうな位だ。 本当にシャレにならないレベルの寒さだ。 まさにこの世に現れた紅蓮地獄とでも言いたくなる。 寒さの原因である《低温実験室》から直接冷気が漏れてきている場所なのだから、仕方は無いのではあろうが。 一刻も早く低温実験装置を切らなくては。 ウイルスとか以前の問題で、凍死しかねない。 その為にも、《培養実験室》でハンドバーナーを手に入れなくてはならない。 「ヨーコ…この寒さの原因はあそこだ。 あの扉から冷気が漏れている。」 凜が指差したのは、《低温実験室》だ。 《低温実験室》の扉の隙間から冷気が目に見えて漏れだしている。 あの扉の先にこの寒さの原因があるのは、誰が見ても明らかであった。 「まさか………低温実験装置の故障が原因なの?」 さすがは元はここの研究員であったヨーコだ。 すぐにその可能性に思い至ったらしい。 正確には故障ではなく、故意に引き起こされた実験装置の暴走が原因なのだが。 大きく間違っている訳でも無い。 だから凜は『そうだ』と頷いた。 「………恐らくは。 装置を止めたら、冷気は収まる筈だ。 ………そうすれば、ターンテーブルの氷結も融ける。」 脱出の希望が見えてきた事にヨーコの表情が明るくなる。 その事が嬉しくて、凜は自然とその頬を緩めた。 低温実験室の中は、予測は出来ていたが更に寒い。 冗談じゃなく、バナナでも釘が打てそうだ。 そして部屋の奥にはゲーム通りに、低温実験装置のレバーを掴んだままの状態で研究員らしき白衣を纏った人物が事切れていた。 大きく切り裂かれた脇腹の傷が致命傷だったのだろう。 その死に顔は苦悶に歪んでいた。 彼が最期の力を振り絞ってハンター達の活動を止めていてくれていたのだと思うと、彼の魂の冥福を祈らずには居られない。 だが、ここから脱出するには、この低温実験装置を止めなくてはならないのだ。 完全に凍り付いているため、その手を動かす事は出来ない。 やはり、ゲーム通りにこの手の氷結を融かなくてはならない様だ。 |