世界を変える願い事







メインシャフトまで戻ると、ケビンとジムが待っていた。

ジムは何処か罰が悪そうに、凜から目を少し逸らした後。


『リン!無事だったんだね……!…あのさ、助けてくれたのに、助けに行けなくてゴメン!!』

と、凜に頭を下げてきた。


「なっ……ジム……?……どうしたんだ……?」


ジムが何に関して謝っているのか何となくは分かるのだが、その理由が分からない。


自分を助けに行かなかった位で頭まで下げるものなのだろうか?

ジムが臆病者なのは元々知っているのだから、彼が助けに来てくれる等とは端から期待すらしていなかったのだ。
大体、ジムを庇ったのは自分が勝手にやっただけの事なのだから。
その結果死にかけた気がするが、それは自己責任の範囲だろう。

アメリカ人は余程の事がない限り絶対に謝らない、と(間違った)認識をしている凜にとって、ジムの謝罪は予想外以外の何物でもない。



更には自分で言うのも何だが、凜はジムには好かれてはない自覚はあるのだ。

それ故尚更、ジムの謝罪は不可解であった。


「ジム……そんなに謝らなくても……。
べつに、私は気にして無いからな…?」


非常に居心地が悪い。
寧ろ止めて欲しい。


凜が困惑しながら身振り手振りでジムに伝えると、察してくれたのかジムの表情が明るくなった。


『マジで許してくれるんだねっ!?よかったー!』


ジムは嬉しそうに凜の手を握り、ぶんぶんと振り回した。

そして。


『ほらっ、リンって女の子に見えない位怪力じゃん!
怒って殴られたりしたらオレ死んじゃうなぁーって心配してたんだよ!』


と、続ける。



瞬間、周りの空気が凍り付いたかの様に凜は感じた。



ケビンが呆れた様に額に手を当て、デビットは無言でジムを睨む。
ヨーコはと言うと、唖然としてジムを見ていた。


(………?………ジムが……何か要らない事でも言ったのか……?)


凜には、ジムが何と言ったのか分からないが………。
ヨーコ達の反応を見ている限りでは、そうなのであろうか?

『リン』の部分だけは聞き取れたので、自分に関して何かを言ったのだろうとは思うのだが……。

ジムが何の悪気も無さそうに笑っている所を見ると、何かの悪意を持って言ったのでは無さそうだ。

何て言われたのか分かって無いのだから、あまり気にしなくともいいだろう。



今はここから脱出するのが最優先である。

それにはまず、ターンテーブルの氷結を溶かす為にも空調を何とかしなくては。




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