世界を変える願い事







ドサッと固い床に投げ出された衝撃で、凜は意識を取り戻した。


(ここは………。)


何かの巨大な繭が目の前に見え、周囲の壁には何だか高価そうなコンピューターがずらりと並んでいる。
直ぐ様この光景から自分の現在位置に気が付く。


(うっ………ここは……電算室、か……。)


モスジャイアントの姿はない。凜をここに放逐した後何処かへと去って行ったのだろう。
この場に居ないのならその方が有り難い。


(早く…ヨーコ達の所へ戻らなくては。)


立ち上がると、身体が妙に熱く視界がフラフラと揺れた。
……ひどい目眩もする。気分が悪い。


(何……だ……?……まさ…か…毒…を……?)


熱の為か定まらない思考で凜は考える。


そうだ…モスジャイアントに電算室に拐われてきた場合は、毒を受けているのだ。
熱でふらつく身体で、部屋の隅に生えているブルーハーブとグリーンハーブを採る。
ハーブの調合の仕方なんて分からないが、直接食べたって大丈夫なはずだ。効果はあるだろう。



(早…く……ヨー…コ…達の……所…へ…帰ら…な…いと。)



フラフラと電算室を出ると、天井からモスジャイアントの幼虫がドサドサと落ちてきた。
幼虫達は毒液を吹き掛けようと、鎌首をもたげる。



「邪魔……だ……。」



凜は一匹残らず踏み潰し、幼虫は気味の悪い体液を節々から流して息絶えて行く。
電算室前のシャッターは、先程セキュリティーセンターで開放済みだ。



(早…く…。)




だが、焦る凜の行く手を、巨大なシャッターが阻んだ。



(くそ……これ…は……シャッターの…向こうの……端末…で開けるやつ…か…。)



近くに開放させる為の端末は無いのか、と探すと、シャッターの脇にひっそりと隠されているかの様に端末があった。



(これ…で。)



端末を操作してシャッターがゆっくりと開放されていくのを見ながら、凜の意識は急速に薄れる。



(ヤバ……い。この……まま……じゃ……。……ヨ……ーコ…。
……部…長…、…ハ…ル……助……け……)





再び気を喪った凜は、シャッターにもたれかかる様に崩れ落ち、床に倒れ伏した。




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