![]() ★ やはり薬品保管庫の前にいたのはゾンビだったようだ。 半ば予想はしていたから、早めに対処出来てよかった。 背後から襲われたり、狭い薬品保管庫の中で襲われたら堪ったものでは無かっただろう。 脊髄もろとも頚椎を踏み砕いたから、これでもう動かない筈だ。 危険は取り敢えず排除出来たから早く薬品保管庫に行かなくては。 ゲーム通りになっているなら、怪植物が邪魔をして先に進めなくなっている筈だからVP-017を探さないといけない。 のんびりしている暇はない。 こうしている内にデビットが負傷しているかもしれないのだから。 薬品保管庫に入ると棚の陰からゾンビが襲いかかってきたが、頭を蹴り砕いて対処出来た。 ここにいるのはこの一体だけの様だから、一先ずの安全は確保出来たらしい。 早速薬品を探さなくては。 そう思ってVP-017を探すも、今出されているカートは空だった。 ゲームと同じくパスコードを端末に打ち込まなくては、薬品が置かれているカートは出てこないみたいだ。 ゲーム通りなら、実験室に戻ればパスコードを知ることが出来るはずだが……。 (あれを調べに行く前に、試しておこう。) ゲーム中ではパスコードは三通りあって、その内一つがランダムに選ばれる。 パスコードが書かれた紙を見なくても、その三つを入力すればどれかは当たるのだ。 凜はその三つともしっかり覚えている。 その位、《アウトブレイク》をやりこんだのだから。 試しに4509と入力すると機械音が響き、カートが動いた。 「VP-017……あった。これだな……。」 親切にもラベルにでかでかと《VP-017》と書いてあったので直ぐに見付けられた。 ゲーム通り深い青色の液体だ、間違いないだろう。 その時、VP-017の横にあった薬品ビンのラベルが目についた。 中身の液体は無色透明で、一見周りに散らばっている薬品と大差無い様に見えるが、ラベルに記載された《virus》の単語が凜の注意を引く。 英語力の無い凜でもvirusの意味位は知っている。 アンブレラの研究所でウイルスとくれば、t-ウイルス……若しくはG-ウイルスに関する物なのだろうか………? 「……これは一体……?」 詳しい情報を得ようとラベルを隅々までチェックしても、(当たり前だが英語で書かれている為)残念ながら何と書いてあるのか凜には理解出来ないが……。 ……もしかしたら、強力な抗ウイルス薬なのかもしれない。 《決意》に出てきたデイライト程ではなくても、《突破》に出てきたt-ウイルスをほぼ完全に抑制できる抗ウイルス薬の一種かもしれない。 もしそうならば、これを使えばヨーコ達をウイルスから守れる様になるかもしれない。 基本的に冷静である事を心掛けている凜も、思わず期待に(無い)胸を膨らませてしまう。 「ヨーコ…これは一体何だろうか……?」 凜はヨーコにその薬品ビンを渡した。 「えっと……ウイルスに感染しているかを確かめる薬品みたいよ……。 それが何のウイルスについてなのかは書いてないけど……。」 恐らくはt-ウイルスについての薬品で間違いが無いだろう。 残念ながら抗ウイルス薬ではなかった様だが、それでも役には立つ。 ……これを使えば感染の有無を確かめられるのだ。 「そうか……。何かの役に立つかもしれない。持っていく事にしよう。」 今は時間が無いが、後で自分が感染しているか確かめる為にも、持っていくべきだろう。 凜はヨーコから薬品ビンを受け取り、VP-017と一緒にリュックの中にしまった。 さて、薬品保管庫にはもう用は無い。 さっさとUMB No.3を探しに薬品廃棄室に行こう。 ![]() |