世界を変える願い事







「あっ…リン、待って……!」

ヨーコが声を掛けてもリンは立ち止まらない。
その顔は何かに酷く焦っているようだった。
何をそんなに焦っているのだろう……?

『…また勝手に走り出しやがって……!
ヨーコ、ジム!見失わない内に後を追うぞ!』


ケビンの言葉にヨーコは勿論と頷き、ジムは渋りながらも頷いた。

リンの後に続いてヨーコ達も長い階段を駆け上がり、通気孔へと潜る。

暗い通気孔の中をリンを見失わない様に這っていくと、無機質な廊下の只中に出てきた。
どうもL字型の通路に居るようだ。

目の前に見える扉の前には、人が倒れている。
見た感じでは死んでいる様だ。


「………ここは…薬品保管庫の前…か……。」


ヨーコの横で、独り言の様に小さな声でリンが呟いているのが聴こえる。
リンの言葉を聞いて、ヨーコもこの先に何があるのかを思い出した。
それと同時に、この辺り一帯の地図が鮮明に頭に浮かぶ。
その事実から……まだ殆ど思い出せないが、……自分は此処と何らかの関係がある………恐らくは働いていたのだろう、とヨーコは思う。
それにしても、どうしてリンはこの先に何があるのかを知っているのだろう。

理由を知りたい反面、何故だかそれをリンに訊いてはいけない気がして、ヨーコは結局黙っておく。



「……。」


リンは扉の前の動かない死体を見詰め少し何かを考えた後、ケビンやヨーコが止める間もなく唐突にその死体を勢いよく踏みつけその脚の骨をへし折った。
すると確かに死んでいたはずの死体が呻きながら蠢き、脚を折られた為這いずりながらリンを掴もうと手を伸ばしてくる。

ケビンが素早くハンドガンを抜くが、彼が構えて引き金に指をかけるよりも早くに。



「…ゾンビ化済み、か。」


何処か淡々とリンは呟き、躊躇無くゾンビの首を踏み砕いた。




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