ゾンビ達に追い追われる内に、凜達は何処かの地下施設へと迷いこんだ。 (……ここは確か……。) この光景には見覚えがある。………間違いない。 アウトブレイクのシナリオ《零下》の舞台となる地下研究所の入り口だ。 今は隔壁が閉じられていて、先には進めないが………。 何はともあれ、ゾンビ達がいないこの場所なら少しは落ち着ける。 多少は落ち着いた事でゾンビ達から逃げる事以外も考える余裕ができた。 そうなると一番最初に思ったのはシンディ達の事だ。 (………別れてしまったシンディ達は無事なのだろうか……。) 心配だが、後を追う術もない今は共にいるヨーコ達の安全を考える他はない。 生きているならばきっとまた会える筈だと凜は自分を納得させた。 『くそっ!行き止まりかっ!!』 『………引き返すしか無さそうだな……。』 ケビンが舌打ちをし、デビットが一人言のように呟き、 『引き返すだって!?外はゾンビ達で一杯だよ!正気とは思えないね!!』 それを聞いたジムが喚いている。 残念ながら凜には彼等が何と言っているのか分からないのだが。 それでもなんとなくだが先に進めない事について何か言っているのだろうとは推測できた。 この先に進もうにも、この隔壁はこちら側から操作する様にはなっていない為、向こう側から操作されるのを待つしかない。 ゲーム中ではモニカが動かしていたが、今開けるとは限らない。 そうそうタイミングよくは、物事は動かないのだから。 尤も凜としては隔壁が閉じたままでも一向に構わない。 地下研究所は危険だ。 ハンター達から全員を無傷で守り抜くのは、どう考えても難しい。 はっきり言ってかなり不可能に近い。 何時まで街をさ迷わなくてはならないのか分からない現状では、ウイルスに感染するのは絶対に避けなくてはならないだろう。 特に、ウイルスに弱いジムやケビンは。 何せここには材料さえ揃えたら《抗ウイルス剤》を作ってくれるジョージはいないのだ。 ……凜自身に感染疑惑があるが、凜は症状が出始める迄はヨーコ達を助ける積もりだ。 もしどうのしようも無くなれば、自分で命を断つ積もりでもある。 勿論。凜は凜なりにやり残した事とかが沢山あるので、そうそう死ぬ気はない。 絶対にこんな所では死にたくはない。 だが、……自我を喪い飢餓に支配されたゾンビとしてヨーコ達を襲うのだけは嫌だった。 もしもであっても、それを考えるだけで背筋が凍り付きそうな程の恐怖を感じる。 (さて、引き返して別のルートを行こう。) 凜がそう思っていると、けたたましいアラートが鳴り響く。 隔壁を振り返ると、重い音を発てながら隔壁が開き始めていた。 (おいおい……。何でそんなにタイミングが良すぎるんだ。) 最早モニカがわざと招き入れようとしている様にしか思えないタイミングだ。 開いた隔壁の先にある闇が、まるで誰かの悪意の様に見えた。 |