世界を変える願い事







行く宛も無く、自分が今いる場所すら定かで無いまま、春竜はゾンビを避けながら走り続けた。


何処かに生存者が居るならば、と思っての行動だ。


春竜が気付かぬ内に背負っていた小さなリュックの中には、かなりの数の銃火器が入っていた。

どう考えてもリュック自体の容量とあってないが、そこを気にしても仕方が無い気がする。


武器があるのは有り難いが、春竜は使った事も無い銃をわざわざ使うよりも弓を使った方が良い気がした。



何にせよ誰かに渡したって何の問題も無い程多くの武器を有しているのだ。
それならば自分一人で戦うよりも、他の生存者と協力する方が良いに決まっている。

出会った生存者が武器を持っていないなら、剰っているモノを渡せば良いのだから。




そんな事を考えながら公園の前を通り過ぎ様とした時、誰かがゾンビに襲われ掛けているのを見付けた。



(えっ……部長!?)


まさかと思うが、春竜が部長を…星野結衣を見間違える筈が無い。
とにかく、部長ともう一人の男性を助けなくては。


その一心で春竜は矢を放った。







部長と共にいた男性はジョージというらしい。
ジョージ以外にも、マークという男性とアリッサ、シンディという女性が二人いた。


四人ともこの街の人間………、ということは……ゲームの中の人物なのだろうか……。


そう言えば、四人全員の顔と名前に何処か見覚えがある……。
だが、何処で彼らを見たのだろうか。


春竜が所持している《バイオハザード》シリーズには彼らは出てきていないのだが…。

……春竜が持っているのは、wiiに移植された作品以降のゲームだから、それ以前に発売されたゲームの中にいるのかもしれない。



いや、ジョージ達について考えるより部長の方が先だ。

何故部長がここにいるのだろう。



部長に訊いてみても、理由は分からず、起きたら街中で、突然ゾンビに襲われて何とか逃げてきた、らしい。


部長が背負っている、春竜のものとほぼ同じリュックの中には武器は入っていなかった様だ。


徒手空拳でゾンビの大群から無傷で生還している部長はやはりただ者ではない。


何はともあれ、春竜は剰っている武器を全て部長に渡した。

部長のリュックも摩訶不思議な四次元リュックらしいので、いざという時の為にもこうしておいた方が良いだろう。







そして春竜は《バイオハザード》というゲームについて、部長に話した。

おそらく此所がゲームの舞台そのものであるという事も。



「はぁ、ゲームの中ね…。……壮大な夢落ちだったらいいのだけど……。
私とハルが偶然全く同じ夢を見てるってのは考え難いわ……。
って事はやっぱり現実……という事なのかしら…。」

「さぁ、分かりませんが……。何はともあれ、この状況を何とかする必要はあると思います。」

「そうね。喩え此所がゲームの中だろうとどうだろうと、ゾンビに食べられて死ぬのは遠慮したいわ。」


部長がそう言うやいなや、またゾンビ達が集まり始めたので、春竜達は足早に公園から立ち去った。




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