世界を変える願い事







皆が料理を食べ終わるのを待ってから春竜は手に入れたチェーンカッターを取り出した。


『多分これであの鎖を切る事が出来ると思うのですが。』


『あぁ………これなら大丈夫だわ。』


アリッサがチェーンカッターを調べて確認してくれる。


『武器か何かは見付かったのかい?』


ジョージが訊ねてきたので春竜は頷いて、此処で手に入れたショットガンとその弾薬を差し出した。
ついでに元々持っていた分のショットガンも差し出す。


『随分色々と見付かったのね。
私もそっちを探した方が良かったのかも知れないわ。』


はぁ、とアリッサが溜め息を吐く。


『レストランの中には……何か無かったんですか?』


寧ろこのレストランの中の方が色々と見付かりそうな物なのだが。


『まともな物はこのリヴォルバーだけだったわ。
後は………精々デッキブラシとか包丁とか位かしらね。』


『あっ、だがレジの方には救急スプレーなら一つ落ちていたよ。』


ジョージがそう言って小さなスプレー缶を出した。


救急スプレー………体力を全快させる回復アイテム……だった筈だ。
ゲーム通りの効果とはいかないかも知れないが、ありがたいアイテムである。


『部長は?
何か見付けましたか?』


何かと物を見付けるのが上手い部長の事であるので、キーアイテムや武器になりそうな物の一つや二つは直ぐに見付けていそうである。


『うーん……何かって程の物かは分からないけど、ちょっと気になる物ならあったわよ。』


ほら、これね。と部長がポケットから取り出したのは円形の板状に成型された銀色の金属片だった。
500円玉よりは大きいが、部長の片手にスッポリと納まるサイズである。

片面一杯にあの動物園のマスコットであるらしい『ラクーン君』が刻印されている。
何かの記念品のメダル、だろうか。
それとも……。


『あっ!それって……マスコットメダルじゃない!!
何処にあったの!?』


シンディがちょっと興奮しながら部長の手の内にあるメダルを指差した。


『何処って……そこの厨房の床に落ちてたのよ。
何か珍しい物だったの?』


『あの動物園のイベントで使っていた物よ。
でも、不思議ね……。
どうしてそんな場所に落ちていたのかしら?』


『大方誰かの落とし物なんじゃない?』


…………それは、どうなのだろう?
テーブルの下とかに落ちていたのなら兎も角、何故厨房に落ちていたのだ?
若干不自然な場所にあっただけに、何故か気になる。

そう。
…………このメダルが先に進むために必要なキーアイテムな気がするのだ。


『ねぇ、ユイ。もし、このメダルがユイに必要でないのなら私にくれないかしら?』


シンディの申し出に部長が快諾すると、シンディはガッツポーズまでして喜んだ。
そして、部長から手渡されたマスコットメダルを無くさない様に胸ポケットに大切にしまう。


どうやらシンディは…………本当にあのマスコットメダルが欲しかったらしい。


マスコットメダルを受け取った時のシンディの目は、まるでコレクターが新しく増えた自身のコレクションを眺めているかの様であった。




…………万が一あのマスコットメダルがキーアイテムであるのなら、手放さなくてはならなくなるかもしれないのだが………。

まぁ、今は動物園に入る方が先である。


『じゃ、さっさと行きましょうか。
何時までもモタモタしてられないわ。』







パキンッと音をたてて鎖は断ち切られ、ゲートを開けるのを阻む物は消えた。



チェーンカッターはゲートの近くに置いていこうかと思っていたのだが、部長が『何かに使えるかも』と言うので部長に預ける事にした。

ゲート中には、その向こうを窺う事が出来ない程の深い闇が充ちている。

後ろから吹いてきた生暖かな風がその闇に吸い込まれていき、その向こうから微かに唸り声が聴こえてきた。


『それじゃ、気を引き締めて行きましょう。』


そう言って一足早くゲートをくぐった部長に春竜達も続いた。




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